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「少しだけおにいちゃん♪」

次男が五歳の頃、右のあごが痛いと訴えだした。
そこを押さえると痛がるし食べ物を噛んでもやはり痛がるのだ。真正面から顔を見ると、確かにやや右側のほっぺたからあごにかけて腫れぼったい。

虫歯かな?と奥歯を見てみるのだが、以前軽い虫歯治療した後のシーラント(奥歯の溝に虫歯にならないようにうめておく薬)がしっかりついているし、黒ずんだ所も表面上見当たらないのだけど、何かべつの病気が隠れているといけないので歯科へ連れて行った。

次男はとにかく歯科が嫌で…って、好きっていう子もほぼいないけど…歯科に予約の電話をする時「ええ~!?」と不服そうな声を出すし、連れて行く時も「病院でごほうびのおもちゃ、くれる?」と聞いてくる。(治療を続けた子どもに、受付の女性が最終日ご褒美としておもちゃをくれていたのだ)

「ん~…確か、もうそれはなくなったんじゃないかな?こないだ、長男くんも、何ももらわなかったからね」と、変な期待を持たせても後がうるさいので正直に答えた。

するとまた「ええ~!?」と嫌そうな声を出す。
でもまあ、素直に病院まで嫌がらずについてきてくれていたから、ましかなと思っていた。
その前に連れて行った時は、一苦労だったから。なだめすかして、くたくたで…。

それで結局は前治療した歯、シーラントの下で生きていた神経が炎症を起こし始めたらしいということだった。見てもわからないはずだ。終わって診察室から出てきたときは「おお、何事もなかったか!」と思ったのだが、顔をよく見ると目じりに涙の後がくっきり。

それでも「よく頑張られましたよ。ねっ!」と歯科衛生士の女性がやさしく言ってくれた。
ただ炎症止めに飲み薬が出るとの事で、これまた親子ともどもブルーになってしまった。
なにせ大の薬嫌いの次男は、どんな方法を使っても敏感に薬を感じ取り飲ませるのに一苦労なので。

「イチゴ味だから幾分飲みやすいと思いますよ。痛みをとるためにも飲んだ方がいいので」
といわれ、「頑張ります…」と、しぶしぶ家路へと向かったのだった。
途中ハブラシやその他の買い物をしにお店へ寄ると「お菓子買って!」と、おねだり。
「んん…、じゃあちゃんとお薬飲むって約束するなら、ご褒美に買ってもいいよ」と条件を出したら、次男もしぶしぶOKした。

昼食の後、約束した手前、嫌とは言わずに薬を割りとスムーズに飲ませてくれた次男に、ちょっとビックリ。
これまでの次男だったら、約束だろうがなんだろうが、やっぱり嫌なものは嫌!と頑固に飲まなかったのに。
「すごいね!ちゃんと飲めたね。偉いじゃない。さすが五歳は違うなあ…。ね?おいしいでしょ?このイチゴ味のお薬」と、褒めちぎり薬を飲ませる私。

こんなおちびでも少しずつ成長しているのかなあと、ちょっぴりうれしくなった一件だった。

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