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「千年前の和風シンデレラストーリー~『落窪物語: いじめられた姫君とかがやく貴公子の恋 (ストーリーで楽しむ日本の古典)』~」【YA㊾】

『落窪物語: いじめられた姫君とかがやく貴公子の恋 (ストーリーで楽しむ日本の古典)』  越水利江子 著 沙月ゆう 絵 (岩崎書店)
                                                                                                                                             2013.01.24読了
 
私の名は“あこぎ”。
源中納言さまのおやしきで、お姫様の侍女としておつとめしているの。
私がお世話をして差し上げているのは、源中納言さまの亡くなられた奥様の娘である“すみれ姫”。
 
でも、お|邸のみんなはこの美しい姫君様のことを、なんと“おちくぼ姫”などと呼ばれる。
 
というのも、源中納言さまの後妻として入られた継母である北の方さまが、継子の姫様をいじめ、お邸の一番日当たりの悪い北側の、落ちくぼんだ場所にあるお部屋に姫様を閉じ込められたからなの!
 
そればかりか、北の方さまの実の子である三節姫みおりひめや四つ葉姫の晴れ着や小物の縫い物をすべてさせられる。
それに、三節姫のご婚約者である“蔵人の少将”の晴れ着までも縫わせる始末なのですよ!
 
それでも姫さまは、縫い物がとてもお上手であるがゆえに任されるのではあるけれど、なにひとつ恨み言をおっしゃるでもない。
おまけに、北の方さまは実の子には美しい晴れ着やおいしいものをお与えになるのに、すみれ姫さまには食事も粗末なもの、そしてお着物も古く擦り切れて色褪せたものしかお与えにならない。
 
なのにそんなみすぼらしいお着物を着ていても、姫様はそれは誰にも引けを取らないほど美しく、姫様がお召しになるすみれ色のかさねがとてもお似合いなので、笑顔のかわいらしい姫様のことを私だけは“すみれ姫”と呼んでいるの。
 
こんな姫様のことをとても心配している私には、“蔵人の少将”の帯刀たちわきである惟成これなりという恋人がいるのだけれどね。ここだけの話、彼から、こんなに心根もやさしくて素晴らしい美しい姫様をなんと、救い出してくださる方がおそばにいらっしゃるという情報を聞き出したわ!(私の彼、グッジョブ!)
 
そう、そのお方は惟成の乳兄弟で“右近の少将”である藤原道頼さまという、それはそれは宮中でもトップを争うほどのお美しいご立派な方らしいのよね。
 
 
そのうちに北の方さまの姫様に対するひどい仕打ちはますますエスカレートしていくので、いよいよ私と惟成、そして道頼さまによる姫様救出作戦を決行するにいたるの。
 
おまけに実は、なにやら道頼さまは源中納言さまや北の方さまに対する復讐も考えられているらしいのよ!
でも姫様にとっては大切なご家族ですから、姫様のお立場が悪くならないようにその後のこともきちんと整えていらっしゃるみたいですけど、ここはもうお任せするしかないわね…。
 
 
まあとにかく千年以上も前の日本にも、このようなシンデレラストーリーがあったなんて、すごくおもしろいと思いませんこと?
 
それにしても北の方さまの仕打ちと、道頼さまの復讐は、韓国ドラマにも匹敵するわね~。
こんなお話を誰が書かれたかは、いまだはっきりとはわかっていないらしいけれど(こんなにおもしろいのにね~)、どうやらそれなりの身分の男性ではなかろうかと言われているらしいの。
昔の方々も、想像豊かで今とさほど変わらない感覚でいらしたのね。
 
このお話の中で一番いいなと思ったのは、一夫多妻制が当たり前だった当時に、道頼さまはすみれ姫さまひとすじでいらしたこと。
ここ、重要ね!
 


表紙が、今の子どもたちが手に取りやすい漫画風の絵柄になってはいますが、中身はしっかり文章です。
でも現代語訳、かつ若い人たち向けにわかりやすい表現で書かれています。
他にも古典ものが同じような形式でシリーズとして出版されています。
私もこのような物語が存在することを知りませんでしたので(日本史や古典が苦手なこともあり(^^ゞ)、ましてや中高生はまったく知りえないと思います。
 
こんなおもしろい物語を、もっと子どもたちに知ってほしいです。
学校図書室にもし入っていても、そもそも図書室にあまり立ち入らない生徒たちには、読書率を上げるためにもまず情報を与えてあげることから始めないとですね。


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