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「怒り、怒る。そして目指すは百寿!~『九十歳。何がめでたい』~」

『九十歳。何がめでたい』 佐藤 愛子 著 (小学館)
 
冒頭から最後まで、作者の今のこの世を嘆いたり憤ったり、とにかく怒る、怒る。怒りの連発。
長く生きれば生きるほど、とかくこの世は住みにくいようだ。
何につけても、昔と違って生きにくい世の中になったもんだ、とぼやき続ける。
 
その中でも新聞の人生相談コーナーが著者はよほどお好きなようで、けっこう頻繁に話題があがる。
結局、自分は相談員にはとうていなれないだろうというほど、相談に対しての回答にも意義を唱えているのだ。
たぶん自分が相談員なら、相談者に対してあまり寛容にはなれないとおっしゃる。
きっとかなり手厳しいお答えが相談者を待ち受けるであろうことがわかる。
 
どの話題も、おっしゃることが私にはよくわかる。
案外というか、年齢的に作者側に近い感覚なのかもしれない。
以前、自分がちょうど35歳の頃「今の世の35歳は中間世代であって、35歳より以上の人間の気持ちもわかるし、35歳より以下の人たちの気持ちもよくわかる」
という、曖昧と言えば曖昧な世代だと言われていたことがあった。
でも確かにな…と納得したものだ。
 
年上の人々のいくぶん保守的な思いも共感できるし、年下の人たちの進歩的な考え方も理解できるなあと思った。
そして今、九十歳を超えた著者の気持ちに寄り添うことができる。
(いえいえ、私の年齢は親子分以上にずいぶんと離れていますよ、念のため)
至極まっとうなご意見ばかりだ、と思える。
 
とにかく小気味良いくらいの、笑える(と言っては失礼だろうか?)エッセイで、まだまだ現役で頑張っていただきたいものだ。
 


…と感想を残したのが2017年のことである。
現在著者はすでに98歳になられて、昨年も『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(小学館)を刊行。
すばらしいとしか言いようがない!
こちらは未読なので、ぜひとも読んでみたい。
 
元気を維持するのは、理不尽なことに対して“怒ること”なのかもしれない。
 


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