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荀子 巻第三仲尼篇第七 3

今回の話も処世術に関する話のようです。早速見ていきます。

善く大重[の位]にりて大事に任じ寵を万乗の国にほしいままにして必ず後患なきの術を求めんには、これを[人と]ともにすることを好むにくはし。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

万乗の国→強大な力を持った大国。
しくはなし→及ぶものはない。 匹敵するものはない。
拙訳です。
『大国の重要な職位にあって君主からの寵愛を一心に受けた後の災いを無くす方法は、業務を人ともに行う事を好むことに及ぶものはない。』
一人ではなく、チームで業務にあたれというのは、現在の社会にも通じますね。

賢をきて施しを博くし、怨みを除きて人を妨害すること無く、能のこれ任ずるに耐うれば則ち慎しみて此の道を行う[べき]なり。能の[若]し任ずるに耐えず且つ寵を失わんことを恐るれば則ちこれを[人と]ともにすることを早くするにくは莫し。賢を推し能に譲りて安んじて其の後に随う[べき]なり。

(同)

拙訳です。
『賢人を援助し広く施しを行い人の邪魔をせず怨みを除いた状況を作り、自分の能力で業務遂行できるのであれば慎んで遂行する。能力が届かず君主の寵愛を失うリスクがあれば早く人を巻き込んで対応しなさい。賢者を推薦し能力者に業務を譲って安心して彼らに従うのがよい。』
後半部分はリーダー論ですね。リーダー自身がスーパーマンである必要はなく、リーダーはスーパーマンを集め、適材適所に当てはめて、チームとして最高の結果を導き出すようにする、しかも保身にまで目配りしています。荀子は相変わらずすごいです。

少し端折って読み進めます。

故に知者の事をおこなうや、満つるときには則ち嗛(不足)を慮り、平らかなるときには則ち険を慮り、安らかなるときには則ち危を慮り、つぶさ(具)に其のあらかじめのことを重んじて猶お其の■1(禍)に及ばんことをことを恐る。ゆえに百挙(行)するとも陥らざるなり。

(同)

■1→漢字の説明ができません。
平→③おだやか。やすらか。
安→①やすらかである。落ち着いている。心配がない。
陥→②欠ける。不足する。あやまち。
拙訳です。
『なので知者は業務にあたり、満ち足りた状況であれば不足を考慮し、おだやかな状況であれば険しいときを考慮し、安らかなときは危険を考慮し、細かく現状把握したその上でなお禍に遭うことを恐れる。だから百回業務を行っても過ちがないのだ。』
一言でまとめると、『常にリスク管理をしなさい。』ということで、これまた現代に通じます。

孔子曰く、巧にして而ものりを好めば必ず節あり、勇にして而もともにすることを好めば必ず(任)え、知にして而も謙を好めば必ず賢なり、とは此れを謂うなり。

(同)

巧→ものごとをじょうずにする。
度→②のり。きまり。さだめ。
節→③みさお。こころざしを固く守ること。
拙訳です。
『孔子が言う「物事を上手にしてしかも決まりごとを好む人には必ず節操があり、勇敢でありしかも共闘を好む人は必ず勝ち、知恵がありしかも謙譲を好む人は必ず賢者である。」とはこの事をいうのである。』

この後、反例として愚者について書かれていますがバッサリ割愛します。
今日は、「ともにすること」の大切さを勉強しました。


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