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荀子 巻第十八賦篇第二十六 4 #2

前回は、なぞなぞの問いの部分で答えを『五帝にお伺いしたい。』というところまで読みました。今回は、なぞなぞに対する回答になります。

帝これを占いて曰わく、これの身は女好(柔婉)にして頭は馬首なる者か。屢々しばしば化するも寿ならざる者か。壮に善くせらるるも、老に拙(屈)せらるる者か。父母あるも牝牡なき者か。冬は伏して夏にそだ(長)ち、桑を食いて絲を吐き、前には乱れて後に治まる。夏に生まれながらあつさをにくみ、しつを喜ぶも雨をにくむ。よう以ておやと為し、以ておやと為し、三俯三起にして事乃ち大已おわ(止)る。れ是れを蚕の[条]理と謂う。蚕。

(金谷治訳注「荀子」岩波書店、1962年)

占→⑦はかる。心でつもる。推計する。心で判断する。
女好→女らしくやさしい。
馬首→①馬のくび。馬頭。
寿→ひさしい。いのちながし。長生きである。寿命が長い。
壮→若くて元気な男性。特に三十代前後の男性。
拙→①つたなす。(ウ)運が悪い。不遇である。(エ)役にたたない。用を
なさない。
牝牡→動物のめすとおす。雌雄。
伏→ふす。ふせる。かくれる。身を隠す。待ちぶせする。
滋→しげる。育つ。育てる。成長する。
前には乱れて後に治まる→(注より)繭を作る前の糸をはき出すときと、繭を作ってからのことをいう。
溼→じめじめしている。水気を帯びている。
蛹→さなぎ。昆虫が幼虫から成虫になるまでの段階の一つ。
三→②みたび。たびたび。
俯→かくれる。閉じこもる。
起→盛んにする。活発にする。おこす。
大→おおよそ。おおむね。だいたい。
已→やむ。やめる。中止する。
拙訳です。
『帝はこれを心で判断したのち言われた。それの体は女のように柔らかく頭は馬の頭のようなものか。それはしばしば変化するものの寿命は長くはないものか。若くて元気な時は良くしてもらえるが、老いると役に立たないとされるものか。父母はいるがオスとメスの関係にはならないものか。冬の間は身を隠して夏に成長し、桑の葉を食べて糸を吐き、それは初めの頃は乱れて後になって治まり、夏に生まれていながら暑さを嫌い、じめじめしていることを好みながら雨を嫌う。さなぎを母として蛾を父として、三度閉じこもり三度活発になって万事が概ね終わる。このようなことを蚕のことわりと言う。-蚕-』

なぞなぞの答は蚕でした。
今回の賦を読んで、荀子の生きた紀元前3世紀頃にはもう養蚕が行われていたということに驚きました。ネットで『蚕 歴史』で検索すると、

カイコは 5,000 年以上も昔の中国で、絹糸をとるために野生のクワコを品種改良し、飼いならして作り上げた昆虫なのです。

(https://www.itakon.com/wp/wp-content/uploads/2020/03/itakon_news_33.pdf)

というサイト記事を見つけました。五千年も前から養蚕業を営んでいたとは、改めて中国はすごいですね。

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