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vol.9 2回目の幹部合宿で実感した、宗禅グループの成長と変化。〜京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。

こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。

今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社が、いかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。

同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。

前回のまでの流れはこちらです▼



2021年8月初旬 毎週の進捗管理ミーティングで幹部候補の意識が大きく変化

2020年5月からはじめた外部からの社長に参加いただく毎週の進捗管理ミーティングと月に2回の幹部育成勉強会を継続してきたことで、幹部候補8人の意識が大きく変化してきます。

全員が社長と同じように考え、また危機感を持つことができるよう、幹部育成会ではすべてをオープンにしました。

幹部には決算だけでなく、毎月の試算表、借入金などすべてシェアすることで、経営が他人事から自分たちで何としても自分の会社を守らなければという自責の心が生まれたのです。

そして、次に進めたのが経営理念やグループとして目指すVision(実現したい社会)、Mission(使命)、Value(行動指針)の作成です。

これまでもお飾り的なものは存在していましたが、それらは私が勉強会に参加し触発された言葉や、他社からの見え方を意識した表面的なものでした。
ワンマン経営から幹部経営をすると決めた私にとって、会社の指針となるVMVは、幹部みんなで作り直すことに意味がありました。

そして、一言一言を大切にし、句読点などの位置にもこだわって、すべての幹部の想いを乗せたVMVが完成しました。

VMVの変更点は、幹部の要望で経営理念を『家族や働き手の物心両面での幸福を追求する』から『人様に喜んでいただく』へ戻したこと。

『人様に喜んでいただく』は京西陣菓匠 宗禅の設立当時に設定した経営理念で、初心に戻るような清々しさを感じるとともに、幹部のみんなが創業時の理念を選んでくれたことに喜びを感じたのも事実です。

また、これから私たちは新しい時代に向かって挑戦するという意思表明を兼ねて、Vision、MissionをPurpose(目的)、Ambition(志)に変更しました。

【ここでの学び】
会社の指針となるPurpose、Ambition、Valueを幹部全員で作成することで、自分の会社だという意識が強くなり、その浸透も早く、深くなります。団結力もアップしますので、会社の立て直しやチームビルディングに最適です。

2021年9月1日~3日 幹部合宿

私たちは新型コロナウイルス感染の防止対策万全のもと、2回目の幹部合宿を京都で開催しました。今回の合宿のテーマは『2021年度、全ての人が必達売上を達成できる指針を作る』としました。

京都であれば、会場まで自宅から通うこともできるのですが、1回目同様に3日間を経営と来期の目標策定に集中し、同じ釜の飯を食べることでチームワークを高める目的もあり、京都市内のホテルを予約しました。

1日目:2021年度の戦略的フォーカス策定と熱い会食

まずは前期にグループとしてうまくいったこと、できなかったことを洗い出し、共有しました。

そして、2021年度の戦略的フォーカスの策定に入ります。
前期はグループ3社の営業赤字が1億5千万円を超え、さらに3社すべてが累積の赤字に転落しました。
このままでは銀行からの融資も受けることが難しくなる。

幸いにもこの時には宗禅で事業再構築補助金を獲得しており、長寿堂恵佳でも2度目の挑戦中でした。

私は、この事業再構築補助金の活用がV字回復のキモであると考えていました。ひとつは機械化への投資。もうひとつは、補助金を雑収入として計上することです。

2021年度、宗禅は営業黒字に立て直すことができるかもしれない」

しかし、長寿堂恵佳の黒字転換はまだまだ難しい状況。そのため、営業利益での黒字化は諦め、経常利益で黒字にする。つまり、この補助金を活用することで宗禅、そして長寿堂恵佳の累積赤字を消し、正常な経営状態に戻すということです。

通常、助成金を獲得するためには社労士さんやその道のプロに依頼することがほとんどでしょう。ですが、弊社では私自身で事業計画を書き、自社メンバーで資料を作成して提出しました。

今まで活用させていただいた補助金や助成金などの資料は、すべて自社で作成してきました。

他社に委託しないのは、成功報酬を支払う資金が無かったことも理由のひとつですが、それ以上に冷静に事業計画を見たり、練り直す機会にもなるというメリットが大きいのです。

時間と手間は要しますが、学が無い私でも自分で書いています。やる気になれば必ずできます。

【ここでの学び】
助成金や補助金などの提出書類を自分(社内)で作成することで、事業計画が明確化します。
事業計画の明確化は、経営計画発表会の資料や銀行借り入れの時にも活用できるので、内製化がおすすめ。

そして、この時にできた2021年度の戦略的フォーカスがこちら。
コードネーム【All for 2021】
『私たちは常に事実に向き合い、
改善と挑戦を繰り返すことで個人目標を達成し、
経常利益1億円を3社で実現します。』

午後からは、未来の試算表計画に基づいてグループ3社の必達売上目標をつくり、個人の必達売上目標への落とし込みを行いました。さらに、必達売上達成に向けた幹部それぞれの役割を明確化、共有を行いました。

夜の会食は、友人が営む和食店の2階を貸し切って行いました。
前年の幹部合宿とは違い、プロジェクターを持ち込んでグループ復活に向けたアイデアや議論がなされる熱い会食で1日目が終了しました。

2日目:幹部の必達売上目標と行動KPIを共有、事業再構築補助金不採択の涙

1日目で決めた「2021年戦略的フォーカス」「必達目標」を再度共有してから2日目をスタート。

合宿の目的を『全ての人が必達売上を達成できる指針をつくる』と決めていたので、幹部それぞれの必達売上目標と達成するための行動KPI(重要業績評価指標)を発表し合い、意見を出し合い、互いに握り合っていきます。

1回目の幹部合宿の頃とは異なり、「誰かのせいだ」とか「自分は関係ない」という幹部は誰一人いなくなっていました。

『明るく楽しい職場を作る。助け合う。』を目標に掲げていた昨年とは大きく違い、明確な目標数値を掲げる様になれたことが嬉しく、この1年のみんなの成長に心を打たれ、一人感極まって涙が出るのを隠すのが大変でした。

この合宿で出来上がった『2021年戦略的フォーカス』と『経営理念』Our PurposeとOur Ambition、Our  Valuesはクレドを作成し、グループ全ての働き手に配り、朝礼や夕礼、各会議の前に読むこととしました。

【ここでの学び】
すべてのスタッフにクレドを共有することで、目指すゴールがひとつに。
会社の指針が浸透し、社内文化の育成に役立つ。

合宿2日目の夜は、小学校の跡地に建てられ、話題のショップなどが集まる京都で人気のホテルレストランの一角を貸し切りました。

夜景が美しくて料理も美味しく、今期のKGI(重要目標達成指標)であるグループ3社で経常利益1億円達成に向けた会話にも花が咲きます。

ちょうどこの日は、第2回 事業再構築補助金の採択発表がある日で、結果を知るため、みんなでパソコンを前に長寿堂恵佳の名前を探します。

長寿堂恵佳では2回目の挑戦で、自信もありました。しかし、何度見返しても名前が見当たりません。第2回も不採択となりました。この後の食事の場は一気に暗いムードとなり、会話もなく、凍りつくような空気が漂っていました。

せっかくの合宿の日。今からやるぞ!と盛り上がっていく時にどうして落ちたんだ」

本当に悔しくて、涙がこぼれそうです。だけど、私が落ち込むと、この合宿自体で上がった士気が無駄になってしまう……今期の経営にもマイナスの側面が影響するでしょう。

今にもこぼれ落ちそうになる涙をこらえながら、「必ず第3回で長寿堂恵佳の事業再構築補助金を採択させる。これを今期の私個人のKPIとし、必ず達成する。だから私を信じて気持ちを切り替えてほしい」「今期はこの最悪な空気からのスタートになるが、期末には全員のKPIを達成し、みんなで祝杯をあげよう!」と伝えてこの日は終わりました。

この日の深夜、徹夜で不採択になった事業再構築の事業計画書を見直し、新しく事業プランを考えブラッシュアップしました。

3日目:社長の覚悟と幹部の覚悟

朝一番に昨夜新しく作り直した事業プランを発表し、必ずKPIは達成するという私の覚悟とやる気を見せ、皆にもKPIを達成するという覚悟を再度感じてもらいました。

【ここでの学び】
トップが目標や指針を語り、自らの行動によって覚悟と本気度を見せることで、チームは一気にまとまり同じ目標に向けて走り出す。

そして、もう一度今期のKGIと個人の必達売上と行動KPIを確認。
組織図の見直しを行い、最後にそれぞれの今期KPIとその覚悟を動画に残し、波乱に満ちた合宿は終わりました。

この動画はこの日のうちにロッキーのテーマに乗せたひとつの動画に編集され、幹部みんなに共有されました。

【ここでの学び】
幹部たちの目標や達成に向けた決意の動画を残すことで、ONE FOR ALLの気持ちが高まるとともに、団結力が高まります。またこの動画が、決意のアンカリングとなるのでおすすめです。

合宿後:社内体制を大きく変革

2回目の幹部合宿が終わり、現場でも具体的な動きが展開されていきます。

まずは、営業部が蘇生され、パンデミック以前はほぼ一人で長寿堂恵佳の営業を頑張ってきた幹部候補が営業統括部長となります。そして、その下に常務であった私の弟がつくという降格人事を行います。

泣いて馬謖を切る……というわけではありませんが、山本家が経営を行うという時代は終わったことを働き手のみんなに示したかったのです。

もちろん父や母からは大クレームがあり、家族問題にまで発展しましたが、その時の私は「山本家だけを守ることと、全働き手とその家族を守ることなら、私はたとえ血が流れても後者を選択する」という信念があり、それを伝え納得させました。

【ここでの学び】
幹部経営を行うと言い続けても、これまでの古い権勢は強く、またそう簡単に意識は変わらない。時には涙をのんで家族に厳しくする行動も必要。

これにより、宗禅をはじめグループ3社は、古い体質であった家内工業から一気に脱却することができました。

余談ではありますが、この人事により弟は山本家の人間だという甘えが消え、今はCRO(Chief Revenue Officer/最高収益責任者)として、3つある全ての工場を統括するまでになっています。

さらに大きな変化がありました。それまで直営店の販売を統括するSV(Super Visor)であった幹部が、卸販売の売上を上げるために営業支援部として活動したいと申し出てくれたのです。

その仕事は、新規のお取引先様へのディスプレーや商品の設置、商品の提案書の作成や商品サンプル作り、手配など多岐に及ぶ営業を支援します。この営業支援部が宗禅の卸販売を引き上げる原動力となります。

現在では、カスタマー サクセス チーム(CST)名称を変更し、さらにお客様満足度の向上と売上アップに貢献してくれています。

営業担当者だけに提案書作成や店舗作りまですべて背負わせるのではなく、分業制にして営業は得意先回りと商談、その他はCSTに任せる。適材適所の重要さもこの時に改めて痛感することになりました。

【ここでの学び】
それぞれの得意分野に時間と仕事を集中させることで、成果が一気に上がる。

次回は、再びの事業再構築補助金の採択と製造加工場への投資、社長のグランプリ受賞などについて記します。


本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。

次回もお付き合いいただけますと幸いです。


ではまた。
山本宗禅


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