vol.3 業務の見直しと働き手へのお詫び、社長としての覚悟。/京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。
こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。
今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を宗禅がいかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。
前回のまでの流れはこちらをご覧ください▼
2020年5月1日 緊急家族会議
緊急事態宣言後、取引先のほとんどの売場が閉店している状況が続いていました。
これは他人事などではなく、弊社も売上はほとんどなく、2019年は4月、5月で1億円を達成した売上が90万まで落ち込んでいました。実に前代未聞の 昨年対比99%ダウンです。
工場や店舗の家賃だけでも毎月数百万、さらにグループで90人ほどいる働き手への給与支払いは数千万円必要となります。
複数の銀行にお願いし、コロナ緊急融資を最大限お借りするも、運転資金はどんどん減っていきます。
2回に及ぶ『菓子メーカー救援プロジェクト』が完売しましたが、実際のところは赤字が解消されたわけでもなく、予想外のタイミングで発生した在庫を販売したに過ぎません。
ここからまた、歯を食いしばってV字回復のための施作を講じていくわけですが、その前に私にはしておくべきことがありました。それは……
5月1日の夕方、私は自宅に妻、長女、長男、両親、そして弟夫婦と当時中学生と小学生であった弟の子どもを含め、山本家の10人を集めました。
そして、「このままでは今年中に必ず倒産する。子ども達は学校を辞め、転校する覚悟をしておいて欲しい」と伝えました。
突然の話に子ども達は驚き、不安で泣いていました。その横で私自身も涙を隠しながら、悔しくて泣きました。
本当は、子ども達にまで聞かせる話ではなかったのかもしれない。だけど、
それほどまでに苦しい状況に追い込まれていたのは現実で、これまでと同じ生活ができなくなる可能性があることを、きちんと伝えておきたいと考えたのです。
そして『これから山本家みんなで力を合わせて、この危機を乗り越えよう』という想いを込めて、私の家の壁に家族みんなで手形をつけました。
その後、帰宅するたびこの手形を眺めては「会社を、家族を何としても守り抜く!」と自分を奮い立たせることが私の習慣となっていました。
この習慣は家族を思う時間のようでいて、自分を励まし勇気づける儀式のような時間だったな、と今になって思います。儀式となっていたかどうかはさて置き、この後も訪れる幾多の危機に対して、私が粘り強く向かい合えた原動力のひとつとなったことは事実です。
ここで私が学んだことは、以下2つ。
2020年5月4日 幹部進捗ミーティングをスタート
この日から幹部を加えた毎週の進捗管理ミーティングを開始することにしました。というのも、私を心配したとある社長(私のメンターでもある)が連絡をくださり、ミーティングに参加してくださるというのです。
恥ずかしながら、それまで弊社では販売会議以外のミーティングはほぼ行っていませんでした。「ミーティングなど時間の無駄だ」と考える者もおり、私自身もそこまで重要性を感じていなかったような気がします。
ミーティングをする中で最初に感じられたよかった点は、倒産が迫る危機感を共有できたことです。逆に言えば、部署によっては幹部であっても数字に直面しない者もいたということ。
これは、ミーティングによって参加者全員が否応なしに悲惨な売上と数字に直面することになったため判明したことです。ここでもまた、共有の大切さを実感しました。
ミーティングの恩恵により、当時 本社加工場の工場長であった幹部が自発的に営業へと職務を変えたいと手を挙げてくれました。コロナ禍で売り場もなく、商品を製造できない中、少しでも会社の役に立ちたいとの想いからでした。
毎週の進捗管理ミーティングを行うことで、様々なメリットを感じれられました。大きくは3つ。
業務の見直しと働き手へのお詫び、社長としての覚悟
この頃から私は、菓匠宗禅、長寿堂、トライズネットという3社*の会社という枠を越え、製造・販売・物流・事務とすべての部署に入り、業務の見直しを始めました。
同時に、パートの方々との勉強会も実施し、育成と理念の共有に取り組むようになります。
*3社それぞれについては、自己紹介の記事でもご紹介しています
そして、私は愕然としました。
細かに観察していくと、部署それぞれの効率が悪く、全く指示していたように実行されていなかったことに気づいたからです。
これは、実行できていないスタッフに問題があるのではありません。『部下に任せている』つもりで、雑な指示を出しては放りっぱなしにしていた自分自身の落ち度に気づき、愕然としたのでした。
「そりゃこの状態だったら、会社の業績は悪くなるはずだ。コロナ前から続いていた業績不振の原因は、実はここにあったんだ」と思い知らされたのです。
そして、これまでの経営方法の反省、放任のお詫び、今後はすべての部署、工場に私が入り、一からすべてを見直すことを伝えました。フルコミットするという覚悟の宣言です。
次回、高校球児応援プロジェクト
パンデミックによる経営難を乗り越えるための見直しでしたが、慢性化したネガティブな側面を発見し、改善していく流れのベースとなりました。
こうして振り返ると、2020年の春は緊急家族会議、幹部進捗ミーティングのスタート、業務の見直しと調整、そして覚悟のための期間だったような気がします。
次回のnoteでは、中止となってしまった春のセンバツ甲子園に出場予定であった高校球児に、センバツ甲子園の時期しか買えないお菓子を届ける『高校球児 応援プロジェクト』について記します。
本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。
ゆっくり更新にはなりますが、またお付き合いいただけますと幸いです。
最後に少しだけお知らせ! 京西陣菓匠 宗禅の公式Webサイトをリニューアルオープンしました
先月、京西陣菓匠 宗禅の公式Webサイトを大幅リニューアルしました。お時間ある際にでも、ご覧くださいませ。
次の記事が出る頃には、西陣本店より新たなニュースもお届けできそうです。春はもうすぐ!
それではまた。
山本宗禅
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