vol.2『菓子メーカー救援プロジェクト』で乗り切ったフードロスの危機。 〜京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。
こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。
今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社が、がいかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。
同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。
前回のまでの流れはこちらです▼
『菓子メーカー 救援プロジェクト』のはじまり
緊急事態宣言が発表された2020年4月。百貨店や観光地のお土産店が次々に休業となり、多くの商品が行き場をなくすことになりました。複数の菓子メーカーの共同配送を事業とするトライズネットの倉庫には、破棄されるのを待つだけで売り場のない自社・他社のお菓子が山積みになっています。
トライズネットの仕組みや設立への経緯については、自己紹介記事の後半に記しています。
そんな倉庫を眺めながら私が考えていたのは「同業仲間が大変な時だからこそ、我が社がこのフードロスを何とかしないといけないのではないか?」というものでした。
従来から通信販売をしていたこともあり、自社商品だけであれば通信販売で売り切ることは可能である、と踏んでいましたが、このままでは多くの菓子メーカーが倒産危機に陥ってしまう……
考えに考えた結果、『菓子メーカー 救援プロジェクト』の実施を決めました。
この時の私の思考やロジックについては、別途詳細にご説明したいのですが、プロジェクトの概要は以下のようなものです。
同業他社の在庫を、しかも賞味期限が迫った商品を弊社で買取る。
それらを 6000円以上のセットとして詰め合わせ、2400円(税別)で販売する。
食品には販売店で決められた『3分の1ルール』や『2分の1ルール』といったルールがあります。例えば『3分の1ルール』の場合、賞味期限90日の商品は、まだ賞味期限が30日あっても返品となります。
ですが、この『救援プロジェクト』では、賞味期限が近づき廃棄を待つ他社の商品を買い取って、弊社で販売することにしたのです。メーカーから廃棄予定商品を30%で買取り、40%で販売するというスキームです。
一見10%の利益があるようですが、販売のためのWebページ制作や販売、段ボールや緩衝材の代金、受注・集荷・出荷作業の人件費、6000円を超えたお菓子代などを弊社で持ったり、お客様が買いやすいようにとの思いから送料の一部も弊社負担としたため、売れば売れるほど赤字となります。
それでも、志をともにするお菓子メーカーと一緒にこの危機を乗り越えるため「絶対に成功させる!」と覚悟を決めてスタートしました。
2020年4月18日 『第1回 製造メーカー救援プロジェクト』完売!
菓子メーカーのフードロス商品を救援するこのプロジェクトは賞味期限との戦いでした。一刻も早くスタートしなければ、賞味期限が切れ、倉庫に山積みされた商品は破棄以外の選択肢がなくなってしまいます。
当時、弊社のWeb会員数は1,300人。第1回分として用意した1,000セットを売り切るには到底及びません。
どうしたものかと考えあぐねている中、困っている製造者を救援したいという主旨で活動されているという『コロナ支援・訳あり情報グループ』の存在を知り、運営の方に繋いでいただくアクションを起こしました。
緊急事態宣言の発令からわずか11日後の4月18日、さまざまな出会いと協力のおかげで、他社商品などを6,000円分詰め合わせた『製造メーカー救援セット』1,000個(販売価格:600万円分)を、販売開始から2時間で完売することができました。
とは言え、まだまだメーカーには商品在庫が残っています。それらを救うため、4月30日に『第2回 製造メーカー救援プロジェクト』2,000セット(販売価格:1,200万円)の販売をスタート。第2回は販売数も多く苦戦しましたが、SNSなどで多くの方々に拡散いただくための施策を講じ、丸2日間かけて完売に成功しました。
2回の『菓子メーカー 救援プロジェクト』を経て、失ったもの・得たもの
この救援プロジェクトは弊社にとって約1,000万円ほどの赤字となりましたが、気が付くとそれまで1,300名しかなかったオンラインストアの会員数が16,000人にまで増えていたのです。そしてこの事実が、後にいくつか手を打つⅤ字回復を攻略する大きな要因となりました。
例えば、当時立ち上げた健康食品事業。救援プロジェクトの感謝バトンリレーとして16,000人の会員様にご案内メールを送信した結果、楽天ダイエット部門、楽天女性部門、そして楽天総合部門で1位を獲得することができました。広告なしにこの結果を得られたのは、救援プロジェクトによって宗禅を知ってくださった会員の皆様のおかげです。
振り返れば、他社の商品6,000円分を詰め合わせて送ることは、本当に大変でした。同じようなタイプのお菓子に偏らないように、なるべく製造メーカーのエリアが偏らないように……など、お買い上げくださった方々に楽しんでいただけるよう配慮しながら組み合わせていく。
赤字が確定しているというのに、6,000円を超えるように電卓を叩きながら社長(私)が毎日箱詰めしている姿は、当時の社員たちの目にどのように映っていたのでしょう。情けないなと思いつつも、当時はとにかく必死でした。
その姿を見かねたグループ3社の働き手(スタッフ)や他社製造メーカーの社員さん、取引先の社長がボランティアで手伝いに来てくれるようになりました。この出来事は、会社の垣根を越えた助け合いを生んだだけでなく、今まであったグループ会社内の心の壁を崩すきっかけへと繋がりました。
『損して、徳とれ』という祖母の言葉
誰かのために協力し助け合い、ひとつのことを達成した経験は、社内メンバーをひとつにまとめる大きな原動力となります。
家訓として祖母から聞かされていた言葉『損して、徳とれ』を、私が本当の意味で理解できるようになったのもこの頃からです。
『得』ではなく『徳』。
商売の世界では『損して、得とれ』という言葉で「一時的には損をするかもしれないが、将来の大きな利益になることをしよう」などといった意味合いで使われることもありますが、祖母が本当に伝えたかったのは「先に損をしてでも、お客様や仲間との信頼関係を大切にしなさい」という意味だったのでしょう。
この言葉は、この時期の過酷な体験からも私の心にしっかりと刻まれており、この後もさまざまな局面で私を救ってくれるキーワードとなります。
次回、山本家 緊急家族ミーティング
2回の『菓子メーカー救援プロジェクト』が完売し、ひと安心するも束の間。実際のところは赤字が解消されたわけでもなく、予想外のタイミングで発生した在庫を販売したに過ぎません。
緊急事態宣言以降、取引先のほとんどは売場を閉店している状況が続いています。弊社も売上はほとんどなく、昨年3社で1億あった売上が90万まで落ち込み、前代未聞の昨年対比99%ダウンという状況です。
ここからまた、歯を食いしばってV字回復のための背策を講じていくわけですが、その前に私にはしておくべきことがありました。それは、現状を家族でしっかりと共有する山本家 緊急家族ミーティングです。
次回のnoteでは、家族ミーティングからはじまり、社内の体質改善ともなる幹部進捗ミーティングの開始などを記していきます。
本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。
ゆっくり更新にはなりますが、またお付き合いいただけますと幸いです。
今年の冬は暖かだなと思いきや冷える日も増えてきましたね。みなさま、どうかご自愛ください。
ではまた。
山本宗禅
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