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vol.5 見よう見まねでも戦略を練る。幹部合宿でグループ3社をワンチームに。/京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。

こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。

今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を宗禅がいかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。

前回のまでの流れはこちらです▼


8月22日 勉強会へのエントリーを宣言

『高校球児応援プロジェクト』を終えた私は、働き手に向けてひとつの宣言しました。それは、幹部育成会、販売会議で勉強をしている『ワクワク系実践会(1500社を超える起業家の会)』でグランプリを取る!という大きな挑戦です。

文字にすると稚拙な印象になるかと思うのですが、「やる」と決めること、目標のために努力する姿を、ともに働くみんなに見てもらうことが大切だと考えたからです。

もちろん、宣言するだけでなく、当時(2020年8月)までの弊社での取り組みや対策をレポートにまとめる作業も開始しました。

私は、必ずやる!と宣言することにパワーを感じています。
それは自分自身を追い込むためであり、自分の中の奥深くにまで「必ず達成する」と落とし込むためです。

私自身、子どもの頃から嫌なこと、面倒から逃げようとする性分があるという自覚があります。そのためか、口だけの人間にはなりたくないという想いも人一倍強く、やろうと決めたことは必ず公言して、自分を追い込むスタイルで実行の力を強めています。

自分がやると決めたことは必ず公言する。有言実行!

ただし、この方法はプレッシャーが刺激になる私のようなタイプの人には効果が感じられると思いますが、重圧に感じてしまう人や1人で粛々と実行したい人にはお勧めできませんのであしからず(笑)。

この挑戦は、少し先の未来『2022年度 社長のアカデミー賞』グランプリ獲得という結果につながります。これは、外部からの評価によって、宗禅がスタッフ一丸となって努力してきた取り組みは素晴らしいものであるという事実が、働き手のみんなに分かりやすいかたちで共有できた嬉しい出来事となりました。

2020年9月2日~9月4日 幹部合宿を実施

売上は昨年対比20%とまだまだ回復は見込めなかった2020年9月初旬、厳しい状況を打破するため、私たちは神戸で幹部合宿を行いました。宗禅は8月決算のため、この9月が2020年度の期初となります。

コロナ禍のこの時期に合宿の開催をするとはいかがなものか?との意見も出ましたが、倒産危機を乗り越えるための戦略を幹部みんなで考えて、それぞれが決めた目標や予算の達成、手段をお互いに共有する目的がありました。

また、幹部の結束を強めたいという想いもあり、万全のコロナウイルス感染予防対策にて決行しました。

ここからは、ビジネス用語も使い慣れないメンバーが、見よう見まねで行った合宿の内容と、そこから得た学びを記します。
議論を進める中で判明したネガティブな事実も、恥ずかしながら赤裸々に書いていきますね。

1日目: 今後の役割の分担と明確化

これまでは能力のある働き手ばかりに仕事が集まってしまう組織となっていましたため、多くの幹部が「他の働き手とは関わりたくない。仕事を増やしたくない。責任を負いたくない」というマインドに陥っていました。

これを受けて、誰がどの仕事を担い責任を持つのか?また、権限移譲についてもしっかりと話し合いながら決定しました。

【学んだこと】
仕事内容と役割分担、そして責任の明確化をそれぞれの幹部が共に合意して決定するプロセスは組織を大きく改革するためにとても重要。

午後からは、参加者みんなで意見を出し合いながら、戦略の指針となる戦略的フォーカスを初めて作成します。

【2020年戦略的フォーカス】
『私たちは常に事実に向き合って、自分たちで決めたことをやりぬき、全社を黒字化する』

今見返せば、目標数値も達成時期も明確になっていないものでした。この時の私たちの力ではまだこの程度しか考えられなかったというのが正しい表現なのでしょう。

それでも戦略的フォーカスを決定・共有したことが、この先大きく変化する幹部の心の指針ともなったのは確かな手応えです。

【学んだこと】
初めから完璧を求めるのではなく、まずは見よう見まねでもいいからスタートしてみる。
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スタートをきると次の問題や課題が必ず見えてきますから、それを改善していけばよいと思います。いろいろと出来ない理由を考える前にまずはやってみよう。
言い換えれば、スタートをしない限りは、次の問題も課題も見えません。先が見えない時こそ、走りながら進める、進めながら考えるというフレキシブルさが必要。

そしてこの日の最後には、グループ会社3社が目指す営業利益から逆算して2020年度 未来の試算表を作成し、目標売上を決めて個人予算まで落とし込み、全員で達成を握り合いました。

ディナーは神戸の中華街南京町。しかし店は貸切状態。貸切にしてたわけでもなく、南京町はほとんどの店が閉まっているため暗く、人もあまり歩いていないという状況でした。

私たちは南京町の静けさに、今起こっているコロナ危機の脅威を改めて思い知らされることとなり、パンデミック由来の経営難からのV字回復の難しさを再確認し、少し震えました。

2日目:重要目標達成指標や行動指針の作成

2日目は、KPI(Key Performance Indicator 重要目標達成指標)や行動指針を作成していきます。
これは、昨日各自が決めた役割に応じて、販売先や営業先、直営店の必達目標や訪問回数、年間の開催イベントや商品スケジュールなど、細かな部分まで具体性を持って落とし込んでいきました。

午後からは、それぞれのKPIの達成のために障害となること、組織内で起こっている問題や幹部ひとり一人が抱える問題をひとつずつ洗い出しながら事実と向き合っていきました。

そこでみんなから飛び出した問題に私は驚愕します。
それは……
・職場の雰囲気が暗い
・困っていても誰も助けてくれない
・みんなが責任逃れをする
・決めたことが実行されない
・面倒な仕事を人に振ってしまう
など、戦略とは程遠いことばかりでした。
非常にネガティブな内容ではありますが、この組織環境が売上不振の根幹であろうことが理解できたという意味では収穫だったのかもしれません。

これを踏まえて1日目に【戦略的フォーカス】として設定した『自分たちで決めたこと』を、みんなで意見を出し合いながらつくっていきました。

  • 『自分たちで決めたこと』

  • ・明るく楽しく働ける職場をつくる

  • ・助け合う

  • ・必達目標を達成する

  • ・自分の責務を全うする

  • ・合宿で決めた戦略は変えない

  • ・仕事は降るのではなく任せる*
    *任せるとは「管理していること」を指しています。相手の成長のために自分の責任内で見守りながら任せるという意識を持つこと、相手を思いやりお互い同意していることなど。

こうして羅列すると「そんなの当然でしょう」と思われるかもしれません。ですが、当時のグループ3社は、このようなことを決めないといけないくらい未熟な組織だったのです。

この合宿をきっかけに、3社の経営理念や戦略を統一しました。
意図は、3社が同じグループ会社であり、仲間であるという意識を持って
もらうためでもありました。

2日目のディナーは、神戸の夜景が見えるビルの屋上を貸切ってのBBQ。
目的は日常で味わえない体験により、各自の殻や固定観念を打ち破ること。そして、仲間のためにお肉や野菜を焼いたり、ドリンクを作ったりと協力し助け合う体験をしてもらいたかったのでこのスタイルを選びました。

2日に及ぶ半ば強制的な食事会により、当初ぎくしゃくしていた3社から寄せ集められた幹部たちの心の壁が崩れ落ち、和気あいあいと笑い声まで上がるようになっていました。
その光景に、私はなんだか心がぽかぽかと暖かくなり、気が付けばまた目から涙がこぼれていました。

3日目:各自の予算と行動指針の発表と共有

最終日には、幹部1人ずつが2020年度の各自の予算と行動指針を発表し、お互いに承認しあうことでそれぞれの指針を共有しました。
そして、グループ全体の必達売上を確認し、目標に向けて全員の方向を合わせました。

合宿はONE TEAMになるためにとても有効であると考えます。
遠くに行く必要はありません。通常業務をひととき手放し、いつもと違う環境に身を置くことで、戦略作りに集中できます。
また、寝食を共にすることで信頼とチームワークができるようになります。

合宿を終えて動き出したこと & 『串わらび』の開発

この日で合宿は終わり、2020年度の3社黒字に向けて出航しますが、百貨店や得意先の売場は時短営業が続き売上が戻らない状況が続いてます。

売り場の稼働時間が短いだけでなく、お客様も街に出ない状況ですから、製菓工場を動かし、いたずらに在庫を増やすこともできません。同業他社もほとんど店や工場を閉めている状況でした。

しかし私は常に「今止まってはいけない。他社が休んでいる時だからこそ動くと大きな差ができる。今できることをしっかりとやっていこう!」と檄を飛ばしていました。

初めてみんなでテレアポをし、新たな売場探しを行いました。パンデミック以前は商品自体が営業マンであり、自ら新規営業で売り込むことはありませんでしたから、自社や自社製品の長所や強みを冷静に考えるよい機会となりました。

また、商品開発も決して止めないと決意し、私は必死で商品の試作を続けました。そして、完成させたのが常温『串わらび』です。
この後、『串わらび』がV字回復の起爆剤となるのですが、この頃の私たちはその未来を知る由もありませんでした。

昨年、新たに制作した『串わらび』のWebサイトです。

次回は、『串わらび』の初期型完成から商品事故発生、幹部離脱といったトラブルについて記します。


本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。
ゆっくり更新にはなりますが、またお付き合いいただけますと幸いです。

ではまた。
山本宗禅

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