Southern cross

外資系コンサルティングファームでイミグレーション、グローバルモビリティ分野専門のコンサ…

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外資系コンサルティングファームでイミグレーション、グローバルモビリティ分野専門のコンサルタントとして勤務しています。記事は個人の見解であり、所属機関との関連は一切ありません。

最近の記事

マーケティングツールとしての大阪の「永住権付与」案

今年2月、大阪府と大阪市が提案した「金融・資産運用特区」に関する内容が公表され、大きな話題を呼びました。特に注目されたのは、投資家ビザの新設に関する提案です。これにより、成長産業への約1億2000万円の投資、または政府への一定期間の預託を3年以内に行った場合、永住権が付与されるという内容です。 大阪金融・資産運用特区の提案とその衝撃 この大阪の「永住権付与」案、「そこまで言ってしまうのか・・」という衝撃をもって受け入れ取られた方も多かったのではないでしょうか? というの

    • デジタルノマドビザ(続報)

      入管ホームページ上で、デジタルノマドビザ(特定活動)の詳細について発表がありました。https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities10_00001.html これまでに公表された情報とあわせ、概要は以下の通りです。 また、昨晩、主要な在外公館へ照会をかけたところ、日本の入管への申請(在留資格認定証明書交付申請)を経ずに直接、申請人の居住地を管轄する日本領事館への申請の可否について、ニューヨ

      • デジタルノマド いよいよ始動(速報)

        1か月間のパブリックコメント期間を経て、「デジタルノマド」ビザ制度の最終案が3月29日に官報に掲載されました。 公開された内容は、以前から案内されていた情報と大きく変わることはないという印象でした。 参考: 運用詳細や申請方法等は今後、出入国在留管理庁ホームページで公表されることが予想されます。 一方で、今回公表されたパブリックコメントの意見公募結果として、公表されていた内容に、若干の新情報が含まれていたため、以下にご紹介します。 ①在留資格認定証明書交付申請の代理人:

        • 2024年は外国人労働者新時代の元年となるか?今国会の注目点

          最近ニュースで頻繁に取り上げられている自動車運送業界の「2024年問題」。これは今年の4月から運転手の残業時間に年間960時間の制限が設けられることで、深刻な労働力不足が予測されているというものですが、この待ったなしの労働力不足が、外国人労働者の受け入れにも大きな変化をもたらすきっかけになっています。このほか、日本の外国人受け入れ政策は今大きく動こうとしており、様々なニュースが飛び交っています。 この記事では特に今国会の動きに注目し、全体の流れとつながりを整理してみたいと思い

        マーケティングツールとしての大阪の「永住権付与」案

          実用性やいかに?!「日本デジタルノマド」期待と現実のはざま

          先日、日本政府がデジタルノマドビザの発給を開始するとの報道がありました。 現在募集中のパブリックコメント(一般国民から施行予定の法令等に対する意見を募集するもの)を経て、3月末から公布・施行という流れになります。 日本のデジタルノマドビザについての主なポイントは以下のとおりです。 滞在期間は最大6ヶ月。 与えられるビザの種類は「特定活動」。 家族と一緒に滞在することが可能。 年収が1000万円以上であることが必要。 日本が租税条約を結んでいる国や地域の国籍を持つこ

          実用性やいかに?!「日本デジタルノマド」期待と現実のはざま

          超優秀な「外国人タクシー運転手」がタクシー業界の革新者となる可能性

          日本のタクシー業界は、現在深刻な人手不足に見舞われています。 業界団体である全国ハイヤー・タクシー連合会によると、新型コロナや高齢化の影響により、全国のタクシー会社で働く運転手の数はコロナ禍前の4年前からおよそ20%減少したとのこと。 この状況の中、外国人タクシー運転手の確保に向けた国家レベルの取り組みが進行中であることをご存じでしょうか。 昨年9月、国土交通省はトラックやタクシー、バスの運転手不足解消のため「自動車運送業」に特定技能外国人の導入を検討することを発表しまし

          超優秀な「外国人タクシー運転手」がタクシー業界の革新者となる可能性

          中国富裕層の流入加速。脅威論から一歩先へ。私たちが学ぶべき「したたかさ」

          東京江東区の豊洲地区にあるタワーマンションが、中国人富裕層にとって「お買い得」として注目されています。江東区は今や、東京23区の中で中国人の人口が最も多い地域となりました。1億円を超える物件が普通である豊洲のタワーマンションですが、北京や上海の同程度の物件と比較すると割安であり、彼らにとって非常に魅力的な投資先となっています。 移住先としての日本の魅力 彼らの関心は単なる投資を超えています。現在中国では、英語教育時間の削減などをはじめとする極端な教育制限が始まっており、多

          中国富裕層の流入加速。脅威論から一歩先へ。私たちが学ぶべき「したたかさ」

          原因は前例踏襲と他人事?Jクラブの申告漏れから私たちが学ぶべき教訓

          最近一部のJクラブで外国人選手の税金申告漏れが発覚していたという報道がされていました。この問題は決して、サッカークラブだけの特殊な問題ではなく、外国人雇用に関わるすべての人が注目し教訓とすべきことではないかと考えます。 上記報道では税務調査の結果、複数のJクラブで本来、税法上の「居住者」として所得税を申告するべきところ、税率の低い「非居住者」として申告をし続けていたことが発覚したというものです。その結果として例えば年俸1億円選手の場合、約3000万円の追徴課税の可能性が報じ

          原因は前例踏襲と他人事?Jクラブの申告漏れから私たちが学ぶべき教訓

          東京がアジアの金融ハブとして頭一つ抜けるためには、LGBTQの在留資格整備が急務かもしれないこと

          先月、日米同性婚カップルの在留資格について、以下のようなニュースがメディアでとりあげられていました。 https://sp.m.jiji.com/article/show/3089085 この記事は、海外で日本人と同性婚をした米国人男性が、日本に居住するにあたって「定住者」の在留資格を求めて提起した訴訟に関するものです。 現在日本政府は外国で有効に成立した同性婚のカップルに対して特定活動の在留資格を付与する扱いを行っています。 前述の記事では、「日本人と外国人の間の結婚

          東京がアジアの金融ハブとして頭一つ抜けるためには、LGBTQの在留資格整備が急務かもしれないこと

          実は既に始まっていた。「海外金融人材」への優遇措置まとめ

          今年の9月、ニューヨークにて岸田首相は、日本の資産運用を促進するための新しい取り組みとして、資産運用特区の設立を発表しました。この特区は、東京、福岡、大阪、札幌の4都市に設置される予定です。この計画の背景には、日本国内で個人や企業が持つ資産の効率的な管理と増加を図る意図があります。 では、具体的に一体何をどう変えるのか?という点において、岸田首相は前述のNYのスピーチで以下のように説明しています。 「日本独自のビジネス慣行や参入障壁を是正し、新規参入者への支援プログラムを整

          実は既に始まっていた。「海外金融人材」への優遇措置まとめ

          一般サラリーマンも無縁ではない!デジタルノマドビザの可能性

          COVID-19パンデミックがもたらしたリモートワークの普及により、働く場所に対する考え方が大きく変わったことを体感している方は多いのではないでしょうか。 このような変化の中で、インターネットを活用して、どこからでも仕事をすることを可能とするデジタルノマドビザが国際的に大きな注目を集めています。 本記事では日本政府も現在検討中のデジタルノマドビザに焦点をあて、我々一般庶民にどのような影響・利用の可能性があるのかについて掘り下げていきたいと思います。 「自由人枠」だけではない

          一般サラリーマンも無縁ではない!デジタルノマドビザの可能性

          日本で外国人起業ビザが定着しない本当の理由

          最近、日本経済新聞に掲載されたこちらの記事が注目を集めました。この記事では、外国人起業家に対するビザの条件緩和が画期的な取り組みとして紹介されています。 しかし、実際には既に外国人起業家を支援するための類似した制度が存在しており、最長1.5年間、学生であれば2年間の起業準備のためのビザが発行されていることをご存じでしょうか? 実は、この類の外国人起業促進、経営・管理ビザ取得緩和に関するニュースは、これまでも時折発表されては、定着することなく忘れられてきた経緯があります。

          日本で外国人起業ビザが定着しない本当の理由

          なぜ福岡?なぜITのみ?長引く入管在留審査への福岡市の先進的取組み

          現在、全国の出入国在留管理局(以下、入管)において、外国人の在留審査の手続き期間が遅延する状況が確認されています。特に品川の東京入管就労審査部門の窓口では、申請から数ヶ月が経過しても結果が未定であることに対する申請者たちの緊急性を帯びた問い合わせが日常的に行われています。 審査期間の遅延は、特に新しく設立された企業や規模の小さい企業にとってこの状況は深刻です。というのも、新規設立企業や規模の小さい企業の場合、受け入れ機関としての安定性、継続性の観点から慎重な審査行われること

          なぜ福岡?なぜITのみ?長引く入管在留審査への福岡市の先進的取組み

          グローバル人事の視点から見たパレスチナ問題

          連日の報道で取り上げられるパレスチナ問題。この問題は、イスラエル国外に住むイスラエル国籍者を雇用するグローバル企業にとって、多くの課題をもたらしています。特に、イスラエル国防軍(IDF)からの招集がかかる可能性(注)ビザステータスの変更、さらには世界各国とイスラム教国との対応の差など、多くの要因が絡み合っています。 筆者の勤務するコンサルティングファームでも、目下、世界中の拠点に対し、サービス提供を行うクライアント企業のイスラエル・パレスチナ出身の従業員を特定した上で、①現在

          グローバル人事の視点から見たパレスチナ問題

          技能実習制度は今回の見直しでホワイトな制度に生まれ変われるのか?

          30年の歴史をもつ日本の技能実習制度が大きな転換点を迎えようとしています。 劣悪な労働環境、低賃金、そして何よりも転職が許されないという制約により技能実習制度は長らく国内外から「ブラックな制度」として揶揄されてきました。これらの問題を踏まえ、政府の有識者会議が最終報告書で新制度についてのたたき台を公表しています。新制度では基本的に3年の育成期間を設け、特定技能1号の水準の人材に育成することが目標とされています。 技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第12

          技能実習制度は今回の見直しでホワイトな制度に生まれ変われるのか?

          準難民と難民は何が違うのか:紛争地からの難民受け入れについて日本はどこまで覚悟があるのか?

          日本社会が直面する新たな課題として、「準難民」の受け入れが注目されています。この用語は、出入国管理法の最近の改正によって具体的な法的枠組みが設けられ、一般の人々にも徐々に認知されつつあります。しかし、「準難民」と「難民」は何が違うのでしょうか?本記事では、出入国管理法改正案における「準難民」の定義と、国連難民条約に基づく「難民」の定義についてその違いを解説していきたいと思います。 1. 準難民と難民の違い 近年、国際社会は多くの紛争と人道的危機に直面しています。これに伴い、

          準難民と難民は何が違うのか:紛争地からの難民受け入れについて日本はどこまで覚悟があるのか?