東京がアジアの金融ハブとして頭一つ抜けるためには、LGBTQの在留資格整備が急務かもしれないこと

先月、日米同性婚カップルの在留資格について、以下のようなニュースがメディアでとりあげられていました。

https://sp.m.jiji.com/article/show/3089085

この記事は、海外で日本人と同性婚をした米国人男性が、日本に居住するにあたって「定住者」の在留資格を求めて提起した訴訟に関するものです。
現在日本政府は外国で有効に成立した同性婚のカップルに対して特定活動の在留資格を付与する扱いを行っています。

(注1)2022年9月の地裁判決で、日本人と同性婚した外国人に特定活動の資格を認めない法務省の運用が憲法の趣旨に反すると指摘された。

前述の記事では、「日本人と外国人の間の結婚」に関する問題が取り上げられていました。具体的には、異性間の結婚と同性間の結婚を比較した際、その扱いに不公平が存在するのではないかという点です。

異性間の結婚では、日本人の配偶者と結婚した外国人には、就労に関する制限がなく、また永住申請の要件も緩和されるなど、より有利な在留資格が付与されます(在留資格「日本人の配偶者等」)。これに対し、現時点では同性間の結婚の場合、「特定活動」という限定された在留資格しか認められません。

このような扱いの差は、憲法に定められた法の下の平等の原則に反するとして、アメリカ人男性が日本政府に対し、この不公平な処分の取り消しと損害賠償を求める訴訟を起こしました。しかし、この訴えは二審においても認められず、最終的に棄却されました。

グローバル人材と同性婚のための在留資格整備の関係

筆者も、グローバル企業の人事担当者から同性婚のパートナーに関するビザについて相談を受けることがありますが、日本に赴任を考えている従業員の中には、同性のパートナーが同伴できない場合、赴任を断る人もいます。このため、同性パートナーのビザ取得はグローバル企業にとっても大きな人事的課題となっています。

日本では、一方の国で結婚が認められていない場合、同性婚のパートナーや被扶養者としてのビザ取得を行うことはできません。そのため、代わりに留学ビザや起業のためのビザをとって来日する方が多い状況です。
しかしながら、仮にこのような代替的な手段をとって来日できたとしても、当事者はビザ手続きを通じて、日本政府が自分たちの関係を正式に認めないという否定的な印象を持つことになります。

この問題の根本は、単にビザ手続きの問題ではなく、入管制度を通じて「日本は同性カップルを歓迎しない」=「多様性を受け入れない社会」というメッセージを無意識に世界に発信していることにあります。特に、対象者が企業の幹部であれば、海外企業の日本に対するビジネス方針に影響を及ぼす可能性もあります。

アジア各国の動きと日本

そんな中、先日Japan Times では「More LGBTQ rights could help Asian financial hubs draw global talent」(アジアの金融ハブがグローバルな才能を引き寄せるためには、LGBTQの権利をさらに強化する必要)と題する以下の記事があがっていました。

現在、アジアで同性婚を認めているのは台湾とネパールだけです。しかし、この状況は徐々に変化しています。例えば、インドでは最高裁判所が同性婚を認めるかどうかを議論しており、韓国では5月に同性婚法案が提案されました。また、シンガポールでは昨年、男性同士の性行為を犯罪とするイギリス植民地時代の法律が廃止され、政府は経済的な観点からも、LGBTQコミュニティの消費力、いわゆる「ピンクドル」に注目していると報じられています。日本でも、今年の6月に「LGBT理解増進法」が国会で成立しました。

これらの動きは、単に権利を認めるか否かの議論ではなく、多様性、革新性が栄える場所に魅力ある人材が集まってくるということに、各国の政府が気が付き初めていることの現れであると考えます。アジアの金融ハブとして優秀な人材を引き付けるためには、まず、多様な才能ある人材を受け入れる準備ができていることをメッセ―ジとして示す必要があります。

最後に、このような内閣府の資料が2019年に内閣府から出されていました。
chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc_wg/h31_r1/shouchou/20190426_shiryou_s_3_2.pdf

ここには、2017年の外資系金融機関CEOの発言として「多様な外国人材を活用するためには、同性パートナーも異性パートナーと同様に在留資格を取り扱うことにより、アジアの他の金融都市にない強みとして、東京へ高度金融人材の流入を促す」と記載されています。

この資料が作成されてから6年が経過し、アジアの他の都市では同性カップルの権利に関して着実に進歩が見られる中、日本はどこまでこの問題に真剣に取り組んできたのか・・国際的な金融市場で競争力を保つための方策の一つして是非、同性パートナーの在留権の取り扱いについて真剣に取り組んでほしいところです。




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