超優秀な「外国人タクシー運転手」がタクシー業界の革新者となる可能性

日本のタクシー業界は、現在深刻な人手不足に見舞われています。
業界団体である全国ハイヤー・タクシー連合会によると、新型コロナや高齢化の影響により、全国のタクシー会社で働く運転手の数はコロナ禍前の4年前からおよそ20%減少したとのこと。

この状況の中、外国人タクシー運転手の確保に向けた国家レベルの取り組みが進行中であることをご存じでしょうか。

昨年9月、国土交通省はトラックやタクシー、バスの運転手不足解消のため「自動車運送業」に特定技能外国人の導入を検討することを発表しました。
現時点では 外国人がタクシー運転手として勤務するための個別の在留資格が存在しません。そのため永住 や日本人の配偶者などの就労に制限のない在留資格を持っている人限られていました。
今後は在留資格「特定技能」の対象職種に自動車運送業が追加されることによって、外国人への門戸が大きく開かれることになります。
さらに、12月には警察庁が今年度中に、タクシーやバスの運転に必要な「二種免許」の試験を20言語で受験可能にすることを決定しました。これにより外国人運転手の参入障壁が低減されることが期待されます。

「外国人タクシー運転手」=超優秀人材 のワケ
しかし、参入障壁が緩和されるとはいえ、外国籍者が今後、タクシー運転手となるために乗り越えるために依然として多くの試練を乗り越える必要があります。

まず、ビザの取得です。特定技能の在留資格を取得するためには、各分野ごとに管轄省庁が設定した試験に合格をする必要があります。これは、外国人労働者が日本の労働市場で必要とされるスキルを持っていることを確認することを目的としたもので、タクシー運転手の場合、国交省が作成した「自動車運送業」に関する、試験に合格をする必要があります。
さらに、基礎的な日本語能力があることを証明するため、日本語能力試験(JLPT)のN4レベルを取得する必要があります。
つまり、自動車運送業業界に関する専門的な知識と日本語能力の双方が担保されている必要があるということです。

ビザ取得後は、第二種免許の学科・実技試験に合格する必要があります。合格率は約40%であり、日本の慣習や法令になじみのない外国籍受験者にとっての難易度はより高いものになると予想されます。さらに、合格率が10%から20%の難関実技試験もクリアする必要があります。

晴れて免許を取得した後は、プロとしてお客様を乗せるための接客技術、会話力、地理的知識の獲得が求められます。

つまり、外国人がタクシー運転手としてデビューするためには、言語能力、業界知識、運転技術、接客能力、地理的理解等といった非常に幅広い能力を生まれ育った国とは異なる環境で駆使する能力を持ち合わせていなければならないのです。

巷では、外国人タクシー運転手の誕生について、安全性や言語の面で懸念する声が多くあるようですが、これほどの難関を努力で乗り越えることのできる人材にそのような心配は杞憂かもしれません。

「外国人タクシー運転手」はゲームチェンジャーになるか?
外国人運転手の第一の導入メリットは目下の人手不足解消ですが、同時にタクシー業界に新しい市場をもたらす可能性も秘めています。上述の様々なハードルを乗り越えた、超優秀な多言語を話す運転手は、外国人観光客にとって魅力的であり、タクシー業界に新しい市場をもたらす可能性があります。
例えば外国人観光客が、自国の言語で目的地への案内や日本の文化についての情報を提供するドライバーに出会えば、その体験は格別なものになるでしょう。また、日本に新しく移住した外国人にとっても、母国語を話すドライバーを選ぶことは、大きな安心感をもたらします。

間もなく行われる外国人タクシー運転手確保に向けた緩和は、業界にとって新たな成長の機会を意味し、今後10年間でのタクシー業界の変革が期待されます。単なる労働力の補充を超え、文化的多様性と国際的な視点が業界にもたらされることを期待したいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?