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ことり

今回は久しぶりに最近読んだ小説を紹介したいと思う。

小川洋子さんの「ことり」。

あらすじは以下の通り。

人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりを理解する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。二人は支えあってひっそりと生きていく。やがて兄は亡くなり、弟は「小鳥の小父(おじ)さん」と人々に呼ばれて……。慎み深い兄弟の一生を描く、優しく切ない、著者の会心作。

「ことり」/小川洋子/2016年01月/朝日文庫

あらすじだけしか読んだことのなかった僕はどんな物語なのだろうと興味津々だった。小川洋子さんの作品も「人質の朗読会」しか読んだことがなかったので今回が2冊目。

人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりを理解する兄?

この文脈だけだと主人公は一体誰なのか。

それもよくわからない。

そして実際に手に取って読み進めてみることにした。

主人公は「小鳥の小父(おじ)さん」。

あらすじ部分で言うところの「兄の言葉を唯一わかる弟」である。彼は家の近所にある幼稚園の奉仕活動として小鳥の世話を行っていた。そこで小鳥の小父さんという呼び名が幼稚園の園児たちによって付けられた。また彼は、7歳上の兄が自分で編み出した言語を喋るために、両親や周りの人たち(=社会/外の世界)にとっての「通訳者」になっていた。

その兄が自分で編み出した言葉というのが「小鳥のさえずりを理解する」に繋がっている。そう、「ポーポー語」という名の鳥語。兄はこのポーポー語を話す。そして小父(おじ)さんは唯一その言葉を理解している。

両親が亡くなった後、20年以上彼ら兄弟は2人で暮らしていた。兄も主人公である弟も最後まで名前は語られていない。ポーポー語を話す兄とそれを理解して寄り添う弟。この2人の温かく、優しく、静かに、ゆっくりと生きていくその生涯が兄弟愛によって作り出された世界の中で描かれている。

解釈は読者によって様々あるのでは……と読み終えて感じた。

社会の片隅というか、閉鎖されているというか、ほとんど注目されない、そんな場所が、そんな空間が、そんな人たちがいる。ただし、そこにはまたその世界にとっての日常も、生き方も、言葉も、繋がりも、幸せの形も存在している。

作品の世界に引き込まれ、不思議な感覚を与えられながらも、心の奥深くを刺激してくれる、そして考えさせられる物語だった。

小川洋子さんの作品。3冊目も読んでみたい。

さて、今月から放送を開始した「最高の教師―1年後、私は生徒に■された」というドラマ。反響も大きいみたいだ。

1話では、芦田愛菜さん(僕的にはまだ幼い頃の愛菜ちゃん……?のイメージだけど)の演技力が高すぎて驚かされた。加藤清史郎くんも同様に。約6分間という時間、涙を流しながらの長ゼリフ。そもそもここまで長いセリフを覚えられる記憶力がとてつもない。

一昨日放送された2話をこの後、視聴予定……。楽しみだ。

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