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美を失うことで 我々は祭りを失う

季刊誌「そう」56号(2017年9月10日発行)
文: 味岡伸太郎

私は平成十二年に東栄町古戸の花祭りを取材し「神々の里の形」を上梓した。この本の主題は祭りを彩る様々な形の美しさだった。

「美」を求める人間の本能

花祭りの祭場は、「切り草」と呼ばれる色とりどりの和紙の切り紙で飾り立てられている。私の関心は、その「切り草」の美しさから始まったが、次第に、色や形という直接的なものだけでなく、祭りには総合的な「美」の存在が不可欠なのだと思うようになった。
つまり、祭りに「美」があったのではなく、「美」を求めるという、人間の本能のようなものが祭りを創りあげてきたのだ。

「美」とはなにか。

広辞苑によれば、美しいこと。美しさ。よいこと。りっぱなこと。
それらに次いで、哲学用語の「美」について、知覚・感覚・情感を刺激して内的快感を引き起こすもの。また、ブリタニカ百科事典では、感覚、特に視聴を媒介として得られる喜悦・快楽の根源的体験のひとつ、とある。

神々の里の形

何を美しいと感じるか

それでは、人は具体的には、祭りの何を美しいと感じるのか。

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