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100. 尿酸が高い!薬は絶対必要?!

ミュージカル好き救急医の独白 vol.100
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

いよいよ100回目です. パチパチパチパチ👏.
みなさん, 痛風の経験はありますか?足の親指の辺りが痛くなるアレです. 私の周りにも何人も経験者がいますが, 私は幸い大丈夫です. 痛風や滑膜やその他の組織に尿酸結晶が沈着することで生じる関節炎ですが, 尿酸が高いからといって必ずしも痛風になるというわけではありません. 皆さんの中にも健康診断で尿酸が基準値を超えていてマズいと思っている方もいるかもしれませんが, 尿酸を下げる薬を飲む必要があるかというと…

今回のミュージカル

THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE(2020.8.14〜25)
本日もこちらから. 今回は100回目ということで, ”100”という数字から思いついたのが『マリー・アントワネット』の中の名曲”100万のキャンドル”です. 初日に新妻聖子さんが歌って下さいました. このナンバーは1幕の前半のマルグリット・アルノーのビックナンバーなのですが, もうぐっとくるわけです.
マリー・アントワネットは2021年の1月28日-2月21日に東急シアターオーブでの再演が決定しました. 新妻さんのマルグリットは観ることはできませんが, ソニンさん, 昆夏美さんのマルグリットも素晴らしいので楽しみです. 個人的にはルイ16世の原田優一さんが前回の様に役作りのために一回り大きくなるのかが興味ありますね.

救急外来あるある

60歳男性(BTさん)が, 転倒後の股関節の痛みを認め救急搬送となりました. 精査の結果, 大腿骨近位部骨折で, 手術が必要な状態であることが判明しました.

Dr.S:「BTさん, 薬の確認をさせてください. 痛風になったことはありますか?」
Pt.BT:「いえ一度も.」
Dr.S:「尿酸を下げる薬を飲んでいますが, なぜですか?」
Pt.BT:「あぁ2年前ぐらいだったか, 尿酸値が高いからってことでもらって.」
Dr.S:「そうですか. 心筋梗塞など他に病気はありますか?」
Pt.BT:「いや. 血圧ぐらいかな. あとは腰痛か.」
Dr.S:「ちなみに, 利尿剤も飲んでいますが, これは?」
Pt.BT:「それは足の浮腫みで.」
Dr.S:「なるほど…」

高尿酸血症と無症候性高尿酸血症

一般的に採血をして尿酸値が7.0mg/dLを超えていると高尿酸血症と定義されますが, 薬を飲む必要があるかというとそうではありません.
以前に無症候性細菌尿の話を取り上げましたが覚えているでしょうか. 尿に菌がいても症状がなければ原則として治療の適応にはならないのでした(例外はあります). それと同様に, 尿酸値が高くても痛風を患ったことがなく, 今現在症状がない場合には, 無症候性高尿酸血症といって薬を飲む必要は原則としてありません.
欧米では内服するデメリットから推奨はされていませんが, 日本のガイドラインでは合併症(腎障害, 尿路結石, 虚血性心疾患, 糖尿病, メタボリックシンドローム)がある場合には尿酸値が8mg/dLを超えたら, 合併症がない場合には9mg/dLを超えたら薬物治療を考慮することとしています.
尿酸値が高い → 尿酸を下げる薬が必要, ではないことは覚えておきましょう.

薬剤性高尿酸血症とは

飲んでいる薬によって尿酸値が上昇することもあります. 典型例が利尿剤です. なんらかの理由で利尿剤を飲んでいる人が尿酸値が上昇し困る場合には, 薬剤の調整で対応することをまずは考え, 数値あわせの高尿酸血症に対する追加の薬剤は不要です.
BTさんは, 痛み止めの影響で足が浮腫み, 浮腫に対して利尿剤が処方され, それによって尿酸が高くなるという状態でした. 救急外来でも時々であう処方カスケードですから, みなさんもこれを機会に, 本当に尿酸を下げる薬が必要なのかなど自身の薬剤を見直してみて下さい.


♪100万のキャンドル 眩しすぎるから あなたたち みんな 目が眩んだの
 どうか どうか 闇に目を向けて♬

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