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『マイティ・ソー バトルロイヤル』インフィニティ・ウォーに向けてMCUの偉業を讃えよう

北欧の雷神ソーの単独タイトルの3作目にして、娯楽に徹した愉快なスーパーヒーロー映画。それにしても、MCUの安定感と『徐々に観客を馴らしていく』巧妙さには舌を巻くばかり。



『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』
が(色々な意味で)旋風を巻き起こし、『スタートレック ディスカバリー』の配信再開を間近に控えた昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。

※2018/1/2公開記事の再掲です。


さて今回はそれらの話題に一切ふれず、当ブログでは初めてMCU作品をとりあげます。

私の関心のままに更新しますので、こんなこともあります。





『マイティ・ソー バトルロイヤル』


本作はソー単体の映画としては3作目、MCU全体としては、なんと17作目にもなります。

公開前には邦題が変更され、サブタイトルが『ラグナロク』から頭の悪そうな『バトルロイヤル』になったことで一部で話題を呼んだものです。


その是非はさておき、興行成績はマイティ・ソーシリーズとしてはかなり良好だったようで、深く考えずに楽しめるコメディタッチの冒険劇であり、キャラクターもの映画として十分に面白い娯楽作と言えましょう。



コメディ、グラディエーターもの、革命もの、バディ・ムービー、身内の愛憎劇などなど要素てんこもりで、しかも明るいギャグタッチの作風を貫き通していました。


実際、劇中で起こっている出来事だけを見ればかなり深刻・残酷なことが起こっていたりもしているのですが、そんなことを全く感じさせない勢いで最後まで駆け抜けたという印象です。





ソーの物語の総括がされ、いよいよインフィニティー・ウォーへ

トニー・スタークにとって『アイアンマン3』が彼の物語の完結編であったように、本作でソーの物語は完結したと言っていいでしょう。


本作では、ソーをとりまく様々な事象が収束しています。

たとえば、オーディンとの父子関係、ロキとの兄弟関係、王座継承問題、ヒロインであったジェーンとの関係、インフィニティ・ウォーにあたってのアスガルド神族のポジション問題など、ソーにまつわる様々なドラマがほぼ清算されたのです。

(残っているのはコズミックキューブの件だけか?)


ラグナロクというスケールの大きなドタバタの中でこれらをまとめあげ、ワクワク感を高めたまま次へと繋ぐ役割も果たすという、安心感のある映画になっており、シリーズが好きな方は観て間違いなし。

なんとなく楽しみたい方、シリーズをつまみ食い的に観ている方にもお勧めです。





『MCUは本当にスゴい!』という話


今回あらためて思ったのは、『MCUは本当にスゴい!』ということです。

むしろ、それこそがこの記事の本題なのですが、私はMCUのことを『現時点でも映画史を通じて最も偉大なシリーズ』だと思っています。


この『偉大』というのは、もちろん「高尚な映画」だとか、「後世に多大な影響を及ぼす映像革命」だとかそういう意味ではありません。


私の言っているのは、『荒唐無稽なコミックキャラクターを何十人も登場させる無謀な企画を、映画何十本にもおよぶ一大プロジェクトとして商業的にも成功、しかも全体において破綻させることなく統括され、異常なまでの安定したクオリティをもって世に送り出され続けている』という意味の偉大さです。


こんなシリーズ、今までにあったでしょうか?

私の知る限り、無いはずです。


『安定したクオリティ』という1点だけを見てもですよ。 

ぜひ皆さん思い出してください。今まで我々が味わってきた苦難を!


大ヒットした『スーパーマン(1978)』が、3作目、4作目になっていくに従いどんどん低予算・陳腐化したことを。

新たな地平を開いた『バットマン(1989)』が、結局『バットマン&ロビン』に帰結してしまったことを。

そして、シンガー版『X-MEN』シリーズがファイナル・ディシジョンしてしまったことを。

安心して次回作を待てた試しなど、今までにあったでしょうか?


MCUは長らく繰り返されてきた、これら先達シリーズの轍を踏んでいません。


そもそもMCUがそれまでの単発的な映画と最も異なる点は、アメコミの漫画の世界では当たり前に行われてきた『複数シリーズ同時展開&クロスオーバーイベント』という手法を、継続的シリーズとして実現することを最初から至上命題としていた点であるように思います。


『アイアンマン』のラストでニック・フューリーが出てきた時、ファンの期待と妄想は膨れ上がったものです。

アイアンマンが他のヒーローと絡むんじゃないかと。アイアンマンの次回作でアベンジャーズの誰かの共演があるのではないかと。


が、今見てご覧なさい。彼らはその時ファンが妄想した通りのものか、それ以上のことまで実現してくれています。




そもそも、元々MARVELはDCに比べて実写作品の成功に恵まれない時期が長かったのです。

2000年前後になってからようやく、シンガー版『X-MEN』ライミ版『スパイダーマン』、それに『ブレイド』が成功を納めましたが、レーベルも別々、作品世界もまるで別々でした。

(ブレイドがMARVELのヒーローだったと、どれだけの人が知っているでしょう?)

さらに、その後制作された『デアデビル』『パニッシャー』は不発になり、『ファンタスティック・フォー』『ゴーストライダー』は続編こそ制作されたもののさほど注目を集めずにフェードアウトしてしまいました。

これらは単発企画で、その時当たるか当たらないかということしか重視されていませんでした。MCUのように、俳優やライセンスの契約を向こう何作まで抑えるとか、そこまでの大志ある企画ではなかったのです。


ともかくそれらの映画を見て、我々は『スパイダーマンやウルヴァリンのようなダントツの人気者でない限り、もうスケールの大きな実写映画で満足のいく姿を見ることは出来ないのだな』と諦めていたのです。



で、MARVELの有名所の中でもひときわ"まともな実写化”の望みが薄いと思っていたのが他ならぬ『アベンジャーズ』でした。


彼らときたら、メインメンバーからして『第二次大戦の兵士』と『北欧神話の神』が同居するようなメチャクチャな世界観。

そんなものが実写になったら、安っぽく子供騙しの駄作になるに決まっています。


人気や世界的知名度の問題を除いたとしても、『実写映画でキャップとソーと社長が並び立つ姿など、一生見ることはできない』と考えてしまうのも仕方ありますまい。



それが今や、メインメンバーの単独映画にクロスオーバー作までが次々に公開され、さらにはこんな映画達も作られるという状況です。



  • 『アントマン』

  • 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』

  • 『ドクター・ストレンジ』

  • 『ブラックパンサー』

  • 『キャプテン・マーベル』



上記に挙げた面々は、MARVELの世界の中では決してマイナーなヒーローではなく単独主役のコミックも多く出ている存在ですが、スパイダーマンやアベンジャーズのビッグ3に比べれば元々の人気・知名度は落ちます。


この面々までもが単独映画を制作されるに至っている。

しかも、それぞれのキャラクターがきちんと魅力を発揮し、『ぽっと出』扱いでなくオリジンを丁寧に扱われた上で、です。

こんなことは10年前にはとても考えられませんでした。


そして、MCUにはシリーズを通じて『大きなハズレ作』がありません。

もちろん作品の出来・不出来はありますが、コミックファン目線でも映画ファン目線でも、少なくとも落胆させられる出来のものは一作も無かったと思います。


だからこそ、安心して『次』を待つことができる。

こんな恵まれすぎた状況が現実にありえるなんて、以前は想像すらもできなかったことです。




<閑話休題>




さて、『マイティ・ソー バトルロイヤル』に話を戻して、個別の感想を述べてまいりましょう。



80'sっぽい極彩色の宇宙は新たな地平

今作はビジュアル的に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(GOTG)』に近いテイストで作られており、アベンジャーズとGOTGが同じ世界であるということを観客に違和感なく浸透させることに成功しています。


今までにも両者の世界が同じであることは明示されていましたが、セリフや固有名詞レベルのことであって、やっぱり両者にはテイストの隔たりがありました。

アベンジャーズの舞台は我々の日常の延長に収まりますが、GOTGは完全に現実離れしていますからね。


またこの『MCUの宇宙』は、衣装もセットも80年代のポップミュージックのMVのようなカラフルでネオンきらめく世界です。

マイケル・ジャクソンの世界。『キャプテンEO』とか、そのへんの感じに近いと感じます。タイトルロゴもまるでG1トランフォーマーマスターズ・オブ・ザ・ユニバースを思い出す味わいのあるデザインでしたしね。


『2001 年宇宙の旅』『スター・ウォーズ』から定着した宇宙もののステレオタイプなビジュアルは、白黒モノトーン基調のデザインの宇宙船をハイコントラストに撮影したものが多かったですが、この極彩色の宇宙社会のデザインは、懐かしくもあり新しくもあり、素晴らしいと思います。

コミックらしい荒唐無稽な華やかさのあるデザインです。


GOTGでその方向性を示しておいて、本作で地球のヒーロー達と合流するという段階を踏んで時間をかけたからこそ、観客も馴れた上でインフィニティ・ウォーに臨めるという、よく考えられた作戦です。


MCUがこれほどの偉業を成し遂げているのはディズニーの力があってのことなのでしょうが、このプロジェクトを企画し実現させている人々には心より尊敬の念を感じます。




<以下、ネタバレしかありません>






このオーディンがヒドい!2017

しかしまあ、名優サー・アンソニー・ホプキンス演ずるオーディンの体たらくっぷりは、シリーズ通してヒドいものでしたね。(ギャグ的な意味で)

シンガー版X-MENのプロフェッサーXに通ずるものがあります。

3作通して、だいたいオーディンのせいで問題が起こってましたしね。

『重大な脅威に対して禍根を残したままにしておいて、そのことを息子達に伝えたり引き継ぐこともせず、問題が表面化してきたら息子に丸投げし、自分はさっさとドロップアウト』というのがもはやお家芸でした。偉大なる全父、神々の王とは何なのでしょうか。

(コミックのオーディンも肝心な時に役に立たないきらいはありますが…。)




・序盤のロキをたたえる芝居が超豪華の件

序盤、アスガルドでロキをたたえる御前芝居が上演されていましたが、この芝居のキャストがオーディン役サム・ニール、ロキ役マット・デイモン、あとソー役の兄ヘムズワースという豪華キャストだったようで、なんという贅沢な芝居。

しかしカメオとはいえ、サム・ニールとジェフ・ゴールドブラムが同じ映画に出ているというのも、ジュラシックパーク世代には堪りません。





ウォリアーズ・スリーとレディ・シフの待遇について

ウォリアーズ・スリーは最終作でも残念な扱いでしたね…。

ホーガンはまだ出番があって嬉しかったものの、ファンドラルとヴォルスタッグは出会い頭の不運で即退場とはね…。


シフは登場しませんでしたがAoSに出ていたようなので、地球にいて恐らく生存しているのでしょう。

自作以降でまた登場してくれるでしょうかね?




邪悪なガラドリエルの奥方

ケイト・ブランシェットがヘラ役にキャスティングされると聞いた時は、『ほぼガラ様そのままじゃないか、キャスティング最高だな』と思ったものです。

実はソーの姉だったというオリジナル設定こそあったものの、威厳もあり良かったのではないでしょうか。神話ではロキの娘ですが、フェンリルともどもMCUでは無理があり過ぎますしね。

そしてヘラは加害者ではなく、もはやダメ親父の教育ミスの被害者にしか思えません。




・スカージ/カール・アーバン

エオメルであり、マッコイであるカール・アーバンが人間味あふれるスカージ役を演じていました。

表情こそ、いつものしかめっ面(失礼)ですが、最期も含めていいキャラだったと思います。

ただ、アスガルドの人達なら普通に殴った方がM16の連射より強い気もする。



・サーター or スルト?

ラグナロクを題材にするなら必須と言える、ラグナロクの終焉・アスガルドを焼き尽くす者ことサーターですが、冒頭いきなり出てきて意表を突かれました。

鎖につるされたソーが回転するのを待ってあげるナイスガイ。


しかし、私は字幕で見たのですが名前が「スルト」という表記で激しく違和感。

そこは英語音声に合わせて、英語読みで統一したほうが判りやすいのではないでしょうか。『ムジョルニア』も『ミョルニル』になりますよ。



・惑星サカールの闘技場とグランドマスター

今回登場した惑星サカールはコミックの『プラネット・ハルク』で登場した星。

独裁者の主催で闘技が行われているのは今回も同じですが、プラネット・ハルクでは、挑戦者がハルク、チャンピオン役で出てきたのはシルバーサーファーでした。

(アニメ版ではチャンピオン役はベータ・レイ・ビルになっていたので、ソーと関係あると言えなくもない)

コーグやミークのような脇キャラもちゃんと出てきてナイス。

岩の体のクロナン人らしきキャラは前作でも出てきていましたが、コーグとは別人だったようですね。ソーを見た彼が恐慌を起こさず、友人になれて何よりです。


プラネット・ハルク自体、遠く離れた惑星が舞台で荒唐無稽度が高く、MCUではスルーされてもおかしくないモチーフでしたから、実写で似たイメージが見られるのは感慨ひとしおですね。これもGOTGの下地があってこそですね。

いよいよ、アベンジャーズのメンバーたちも宇宙レベルの舞台に躍り出て行っていると実感できます。




・移民の歌について

監督がインタビューで『このシリーズで未だにこの曲を使っていないのがむしろ不思議』と言っていましたが、確かにヴァイキングと彼らの守護神である『ハンマーを持つ雷神』を題材にしたこの曲は本作にうってつけでした。

しかもここぞというタイミングで流れるものですから、テンション上がるでしょう、それは。




そんなわけで、来年からの『インフィニティ・ウォー』が特大のお祭りになることを予感させる本作でありました。


この巨大なシリーズを楽しめることを感謝して、安心して『次』を待つとしましょう。


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