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2020/7/14「明日がちょっと怖くなった」

・アップグレードという映画が面白かったので感想でも書きます。
 ネタバレもあるので注意。





突然、謎の男達に襲われて妻を殺され自身も全身麻痺の重症を負った男が、高性能AIチップを体に埋め込むことで人間の限界を超えた動きが出来るようになり、AIに助けられながら自分達を襲った男達を追っていく。っていう話。

脳からの信号をこのチップが中継することで全身麻痺の人でもそれまで通り通りに体を動かせることが出来る。というのがこのチップの仕組みなんだけど実はこのチップに体の操作を預けることでチップ制御による人間離れした動きが可能になるというおまけ要素も付いている。これによって自分の意志とは反して体が勝手に動いたりするぞ。おまけにして少々重いな。

始めはチップに体を預ける事を嫌がっていた主人公だったのだけど、チップの助けによって事件の真相に近づく度に抵抗が失われていき、次第に特別なチップがさも当然のように存在しているかのように扱うようになっていく様は人間の欲あるあるだった。便利になれると元の不便がそれまで以上に感じるようになる奴。

そんなとんでもチップが存在するような近未来が舞台になっているんだけど、この近未来の表現がとても良かった。AI制御された自動運転車、監視用ドローン、VR世界から戻れなくなったVR中毒者、腕に銃を埋め込んでいる改造人間。出てくる「近未来」がどれもこれも現実的な運用をされていて、便利なように見えてしっかりと不便な部分も存在しているから、決して遠い未来の話では無くてあくまでも現実から地続きに存在している近未来が舞台なんだと感じれた。

劇中に監視用ドローンの映像が出てくるんだけどが映像を拡大表示しても解像度が低く過ぎて証拠として不十分だと判断されるシーンがある。こういうシーンってよくあるSF作品だと拡大すると解像度もそのままくっきりと表示されるってことが多いからますます近未来を感じられた。

さらに言うとチップのシステムを遠隔で終了させるときに「sudo shutdown -h now」コマンドを手打ちで入力していて一瞬、近未来どころか現実なのかと錯覚してしまった。未来でもコマンド手打ちなのは如何なものかと思います。バッチでも作りなさいよ。


・チップに体を操作されている時の体の動きが分かりやすく「操作されている感」に溢れているのもよかった。まるでPS1の3Dゲームの荒いポリゴンで作られたキャラクターの動きを見ているかのように不自然に体が動いていて相手を倒していくんだけど、頭部だけはチップに操作されていないのでグロテスクな場面を見ないように顔を歪ませているものの体はウキウキで敵を殴っていて最高に操作されている感に溢れているので、アクションシーンも新鮮だった。カメラもやたらと変に揺れるのでますますポリゴンチックに磨きがかかる。


・約90分の短い映画だけど話が分かりやすくて中だるみすることもなくラストに向かって徐々に盛り上がっていって伏線もきれいに回収してくれるので、見終わった後にあのシーンってどういう意味だったのかと調べる事も必要無いくらいに奇麗にまとまって終わった映画だった。最高。


この映画に問題が1つあるとすれば、
こんな風な未来が来ると思うと明日がちょっと怖くなったくらいだろうか。


お金を捨てるためのドブです。 ドブに捨てるよりも時間はかかりませんので是非。