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沖縄の「安里珈琲農園」さんへ行ってきました。

昨年の「やんばるアートフェスティバル」で、彫刻家の永澤嘉務さんの作品とROKをさせて頂いた時に、安里さんと出会った事がきっかけとなり、農園にお邪魔させて頂きました。

※訪問したのは、1月25日です。

当日は、新しくできた道の駅
「やんばるの森 ビジターセンター」
で案内してくれる方と待ち合わせ。

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大宜味村の特産品である「苺」を使ったソーダドリンクはマストですね!

そして、農園へ。

パルパーのお話し

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上の写真に写っているのが、農園主の安里さんです。

農園に着いてからすぐ、生豆を見せて頂き、パルパーの使い方、独自開発したパルパーフィルターの話をお聞きしました。

こちらが現在、沖縄の生産者さんたちの多くが使用する中国製のパルパーです。

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回し方、フィルターの隙間の調整など、微調整が難しいと仰っていました。

その中の1つの問題に
「ピーベリーの皮が剥けない」
という事が出てきました。

「ピーベリー」は、一言でいうと
「丸い種子」
の事です。

こちらも参考に

このピーベリーが、ムンドノーボのアマレロ品種(黄色の実)に多く出てくるというのを、沖縄で栽培されている方からよくお聞きします。
安里さんも同じ事を仰っていました。

中国製のパルパーだけでは、ピーベリーが残ってしまうため
ピーベリーをきちんと剥くために使うのが下の写真にあるものです。

このパルパー、なんと戦前からあるものらしく、沖縄で作られたものだそうです。
沖縄の珈琲栽培の歴史が約100年になる事も安里さんからお聞きして驚きました。
生産者から代々受け継いできたものに、こうして今改良して使われている事に作り手の情熱を感じました。

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上から覗くとこんな感じです。
レバーを回しながら、チェリーを横に押し出すような仕組みになっています。
出口のフィルターは、安里さんが試行錯誤を繰り返して、ピーベリーがきちんと剥けるように改良したとの事で、企業秘密でした。

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そして、2つの機械を使用した珈琲を見せて頂きました。

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安里さんが冷蔵庫を開けて取り出した1袋

上が、沖縄製のパルパーを使用したもの
下が、中国製のパルパーを使用したもの

まとめると
中国製のものは、果肉除去がしっかりとできるが、ピーベリーの果肉除去ができない。
沖縄製のものは、果肉はしっかり除去できないが、ピーベリーを剥く事ができる。

どれも一長一短で使用しているとのことでした。
最初は中国製を使い、次に沖縄製を使い、精製を行っているそうです。

始まりから怒涛のトーク、まだ農園に足を運んでません。笑

ようやく農園へ

では、農園へお邪魔しましょう。

まずは、ムンドノーボ1号と2号が植えられている畑へ。

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ムンドノーボ1号は赤色の実

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ムンドノーボ2号は黄色の実

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糖度を計ってみました。

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こちらがチェリーの糖度です。

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両方の糖度を計ってみた結果

赤いチェリーの糖度は18度
黄色いチェリーの糖度は20度
ありました。

これがどのくらいの数値かというと
下のサイトの数値を参考にすると

赤いチェリーは、ぶどうより甘く
黄色いチェリーは、バナナに近い

そして、舐めた時の感想というと

赤いチェリーは、酸味を少し感じるような甘味
黄色いチェリーは、トロリとした質感を感じるような甘味

「甘さ」の質が違うような印象を持ちました。
実際に生のチェリーを味わうことで、焙煎や抽出の出来上がりのイメージが作りやすくなりました。
「どんな実なのか」、というのを頭の中で整理することで、表現したい方向を定めることができるようになりますね。

こちらが今回の目玉

「ロブスタ種」とよく言われる「カネフォーラ種」の成木です。

ここ2年ほど、僕が提供しているエスプレッソのほとんどがロブスタ種なのです。
実は、沖縄で栽培されている多くの品種、そして、普段飲む珈琲の品種の多くが「アラビカ種」なので、ずっと生で見ることを祈りつつ過ごしていました。
海外で見る事になるだろう、と思っていたのですが、地元の沖縄で出会える事になるとは、ただただ、感謝、感動です。

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安里さんに、ロブスタ種の成長の仕方などをお聞きしました。

生育旺盛のようで、アラビカ種よりも大きくなるのが早いそうです。

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葉は、アラビカ種の1.5倍はあるのでは、と思うほど大きく強い葉でした。

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もう花が咲きそうでした。

そこで気になったのが、「受粉」です。

アラビカ種は、自家受粉なので、自ずと交配して実を付けます。
しかし、ロブスタ種は、他家受粉なので、どうやって花粉を交配させるのかが気になりました。
安里さんに聞くと、「花は咲くけど、実が付くかはわからない」と仰っていて、心配です。

どうなっているのか、またお話を聞きに行きたいと思います。

もっとロブスタ種を知りたくてたまりません。笑

しみじみ感動していました。

安里さんの珈琲を焙煎、抽出

一通り農園を案内して頂き、向かった先は、秘密基地のような場所でした。
安里さんは、農園の中に、宿泊もできるような場所を作り、人と自然の交流の場も提供していきたいとのことで、1人で建築をしていました。

今回そこで、安里さんの珈琲豆を焙煎し、抽出までさせていただける事になりました。

脱穀

なんと「脱穀」からの作業でした。
パーチメントをつけた状態での保存が良いとのことでした。

チェリーの皮を取ると、もう1枚薄い皮が付いています。
これを「パーチメント」呼び、脱穀ではこれを剥いでいきます。
そして、「珈琲豆」が出てきます。

なんでも新鮮に近い方がいいので、「剥きたて」、が良いに間違いありません。

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お米の精米機で脱穀していきます。

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脱穀し終わると、写真のような感じで仕上がります。
薄く黄色いものがパーチメントで、濃ゆいグレー色したものが珈琲豆になります。
パーチメントを風で飛ばして珈琲豆だけを残していきます。

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すると、こんな感じです。
これが焙煎する前の珈琲の状態です。

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焙煎

焙煎機は小型のもので、ガスコンロを火元にし、風除けの中でグルグル回して焙煎していくものでした。

先ほど、脱穀した豆を入れて、焙煎していきます。

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初めは、安里さんのチェックが入ります。

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その後、彫刻家 永澤嘉務さんへ。

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1ハゼの音が鳴り始め、色がだんだんと着いていきます。

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今回、2ハゼの音がしてすぐに煎り上げました。

焙煎する前に、安里さんが「どうしても深煎りにしてしまうから中煎りで止めたい」、と仰っていたので、「甘さ、コク」を意識しました。

豆の中心まで熱を通し、外側をカリッとしたイメージです。

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まずは、ハンドドリップで抽出し、量や挽き目を説明させて頂きました。

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抽出したものを安里さんに飲んでもらうと、すごく喜んでくれました。
「この味が欲しかった!」「ぜひ参考資料にさせてほしい。」
と仰って頂けて、感謝です。

みんなで LET'S ROK!

そして、豆が尽きるまで、みんなでROKしました!

ハンドドリップとはまた違う表情をする安里さんの豆たち。
みんなでその感触を味わいました。

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そして、最後はミルクスチーマーを使ってカフェラテに。

安里さんの、カフェラテを飲んだ時の閃いたような表情は忘れられません。
「これだったらコーヒーが苦手な人でも一緒に楽しめるね」
と、農園ツアーがいろんな方に楽しんでもらえるようにと、常に考えていて、素晴らしい人でした。

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農園訪問を終えて

安里さんの情熱を初めて感じたのは、やんばるアートフェスティバルでの嘉務さんが作った琉球石灰岩の彫刻を見る目でした。
その情熱は農園に足を踏み入れると、溢れるほどに感じ、栽培への姿勢や考えが言葉からも力強く出ていました。
しきりに口にしていた言葉が

「もっと考えなきゃいけないんだ」

自分たちがどういう風に、栽培し、精製し、珈琲を作っていくか、農園を作っていくか、

僕たちに説明しながらも、安里さんご自身を励ますように口にしているのが印象的でした。

「生産者が求めている味作り」
それを理解することも大事であることを、改めて感じました。
普段は、農業をしている僕も、安里さんが話している事に納得する部分も多かったです。

「収量の多い品種を増やしたい」

この言葉は、多くの生産者が口にします。
しかし、珈琲好きな人が美味しいという豆は

「収量が少ない品種」

だったりするので、ここの価値を生産者に理解してもらう事がなかなか難しいのではないかと感じます。

今回、改めて、「珈琲の繋げ方」について考えさせられました。

感謝。

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