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温泉旅館にソムリエは必要なの?

私は島根県出雲市の湯の川温泉にある旅館【湯宿 草菴】でソムリエとして働いています。
えっ?旅館でソムリエ??と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実際お客様と接していても、私の胸元に付けている葡萄のバッジ(ソムリエのトレードマークですね!)をご覧になって『ソムリエさんなんですね~』と驚かれるケースが少なくありません。
驚かれるということは裏を返せば温泉旅館にソムリエって必要なの?ということではないでしょうか。私は【温泉旅館にこそソムリエが必要だ!】と考えています。その思いを綴ってみたいと思います。

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現在は様々な形態の旅館がありますが、基本的に旅館というものは和のおもてなしを中心に宿泊、飲食などのサービスを提供しているものだと思います。
イメージとしては畳のある和室から庭が見えて、案内してくれた仲居さんがお茶を淹れたりしてくれて…
大きな大きな大浴場や露天風呂に浸かったあとは浴衣に着替えて、普段なかなか食べられないその地域の食材をふんだんに使った和食を食べながら地酒やビール、焼酎なども愉しむ…

といったところでしょうか。

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しかしながら今旅館というものは、ベッドもあるし畳やフローリングが混在している客室もあります。お食事についても、純粋な和食だけではなく洋のテイストを盛り込んだ和食会席や、高級なフレンチを提供しているところもある、というようにとても多様化しています。
お食事がそのように多様化していくということは、従来お食事と共に愉しむ飲み物の中心であった日本酒(地酒)の他にも、多様化したお食事に合わせた食中酒であるワインも用意している旅館があります。実際今はかなりの割合で旅館でもワインを愉しむことができるようになっていると思います。

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そこで私が思うことはこれです。

【ワインを扱っている旅館で、そのワインの本質をしっかりと理解した上で正しくワインを扱い、正しい保存方法と提供方法でお客様に提供できているところはどれだけあるの?】

ということです。
※これはワインに限らず全ての飲料について言えることなのですが、今回はワインにフォーカスしてお話します※

こんな経験はありませんか?
・泊まった旅館で試してみた知らない銘柄のワインがあまり料理と合わないと思った。
・地元のワインを飲んでみたけど、イマイチ美味しさが分からなかった。
・メニューに載ってるいくつかのワインについてお店の人に聞いてみたけど、思ったような説明が聞けなかった。

このようなケースはソムリエからすると、しっかりと準備をしていれば逆にお喜び頂けるはずだったというとっても残念なケースなんです。

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昨今は日本ワインの法改正や世界的な評価もあって、日本のワインの位置付けや重要度も日に日に高まり続けています。旅館を利用する愉しみのひとつとしてその土地ならではのものを試してみる、という点があると思います。その中には当然地元のワイナリーが造っているワイン、というのも選択肢に入ってきますよね。となると、ある意味旅館はその地域の、ひいては日本ワインの地位向上を担っていると言えると思うんです。

現在日本には250を軽く超える数のワイナリーが存在しています。ワイナリーが1箇所もないという都道府県は数えるほどしかありません。そうなると、地元のワイナリーの銘柄がその旅館に置いてある可能性も高いですよね?ただ、日本のワイナリーのワインの品質は近年とても向上していますが、中にはある一定の水準に達していない、もしくはお食事と共に愉しめるものではない、といった銘柄も事実として存在しています。

その1本がどのような方にどのようなシーンでお召し上がり頂けるか、ワインの本質をしっかり理解していれば、お客様が想像する味わいとのミスマッチを防ぎやすくなりますよね。例えば焼き魚に、甘~いジュースのようなワインをお出しする必要は無いのです。

同じくして仕入れたワインを正しい状態で保存、提供できなければ、意図せざるとも本来のポテンシャルを失ってしまったワインをお出ししてしまうかもしれません。例えば開けてから随分時間の経過したワインをグラスで提供してしまえば、とても本来の味わいを愉しむことはできません。

こういった知識や情報は、知っていく上で然るべき手順を踏みながら体系付けて学び、お客様に伝えていくという形で実行しなければならないと思います。

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それができるのがソムリエなのではないか、と私は考えています。
温泉旅館にいるソムリエを見て驚かれる方がいらっしゃるように、イメージとしてまだソムリエという仕事はホテルや街の高級レストランにいる場合が多いです。そういったお店の場合ワインを扱うシーンが多いため、ワインについてある一定の知識を自主的に取得したり、教育をすることがあると思いますが、温泉旅館ではまだまだそこまで踏み込んでワインを提供しているところはそれほど多くはないのではないでしょうか。

だから私は、温泉旅館にこそソムリエが必要だと考えているんです。
せっかく温泉旅館にきてワインを飲んでみたいと思って下さったお客様に最大限ワインとお食事を、そしてその時間そのものを愉しんで頂きたい!その為に私達のようなソムリエという専門家が必要なのではないでしょうか。

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というわけで、温泉旅館にソムリエが必要なの?というテーマでお話させて頂きました。旅館では日本酒やビールももちろん美味しいですが、皆さんも是非その土地のワインも愉しんでみてはいかがでしょうか?
私たち湯宿草菴でもお食事に合わせたたくさんのお飲み物をご用意しております。いつでもご案内申し上げますのでどうぞ気軽にお声がけ下さいね。


そもそもソムリエとはどういう職業なのか気になる方は、私たち湯宿草菴(草庵)の公式ブログのこちらの記事を御覧下さいませ!
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そもそもソムリエってどんな職業?

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