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ヘドロの創作

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フィクションの創作です。
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2024年4月の記事一覧

ヘドロの創作 2024/4/28

ヘドロの創作 2024/4/28

 キジ太郎とクロ美は、洞窟を出て山の中を進み始めた。この近くに戦士が住んでいるという。なんでこんな山のなかに? とキジ太郎がクロ美に尋ねる。

「世の猫を避けてひっそり暮らしたい猫って、意外といるのよ。世の中にうまく適応できないというか。わたしは単純に魔術使い狩りから逃げたかっただけ。でも戦士はもっと深い理由があるそうよ」

 そうなのか。山の中のやぶを漕いで進む。体に草の種がくっついてくる。
 

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ヘドロの創作 2024/4/21

ヘドロの創作 2024/4/21

 勇者キジ太郎はキジシロの猫であった。きんっきんに尖った爪と、美しく並んだ鋭い歯、精悍な尖ったマズルを持った、男前の猫であった。
 キジ太郎は貧しいマタタビ農家の息子であったが、マタタビ畑を襲う魔族とステゴロで戦ううちに、どんな魔族とも対等に渡り合える強いものとなった。

 ある日キジ太郎は商人にマタタビを売るべく荷車を引いて王都に向かった。マタタビを売ったあと、なにやら城の前が盛り上がっているこ

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ヘドロの創作 2024/4/14

ヘドロの創作 2024/4/14

 大魔王を倒して王都に戻ってきた猫の英雄に、猫の王は言った。

「きみの手柄を我が息子に譲る気はないか」

「……え?」

 猫の王はでっぷりしたマズルをフクフクと揺らして、猫の英雄に金色の瞳を向けた。

「きみはいま英雄だが、実家は貧しいマタタビ農家だと聞いた。両親やきょうだいと、裕福に暮らせることを保証する。だから、きみの手柄を我が息子に譲ってほしい」

 猫の英雄の緑の目が、ぱちぱちと瞬きさ

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ヘドロの創作 2024/4/7

ヘドロの創作 2024/4/7

 猫は「ねこねこネットワーク」により、人間のもとに派遣される。人間を調査し、「ねこねこネットワーク」に報告する。そして猫たちは、人間という生き物を知っていく。
 猫の記憶はみなすべて繋がっている。「ねこねこネットワーク」に共有された知識は、すべての猫に還元され、猫は人間より一枚上手の生き物になっていくのである。
 猫は外宇宙からの来訪者であることは以前述べた通りである。外宇宙は、発展しすぎた猫文明

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