見出し画像

受胎のはなし

もしも子供を授かれたら、きっと嬉しくて嬉しくて仕方がなくなると思っていた。私の体が命を宿せるのか、ずっと不安だったから。喜びで満ち溢れるものだと思ってた。

結婚して、好きな人の子を授かった。間違いなく幸せに見えたと思う。実際、できてもいいと思っていた。

妊娠が判明した時、結婚式を2ヶ月後に控えていた。妊娠検査薬に入った縦線をみて、どうしよう、と思ってしまった。

結婚式は大丈夫か?まだ安定期ではない。きっと、責任感のない人間だと思われるだろう。新婚旅行には行けない。アメリカに行きたかった。できてもいいとは思っていたが、こんなに早く出来ると思わなかった。

ゾッとする事に、一瞬よぎってしまったのだ。

今回は残念だけど、なかったことにする?

少しでもそう考えた自分が許せなくて、悲しくて悲しくて泣いた。命より大切な結婚式も新婚旅行もないだろう。当たり前だ。望んでた命がきてくれたのに。本当に自分が信じられなかった。

大喜びするはずだったのに。何を悲しむことがあるのか。こんな事を考えるなんて、どうかしている。親になる資格などない。自分のことが一瞬で嫌いになった。

結局色々あったが結婚式も無事に終わり、子は元気だ。大切でかわいくて仕方がない。私の命より大切な唯一無二。

でもあの時の気持ちはずっとあるし、誰にも分かってもらえない。夫も母もきっと理解できないし、人でなしと思われたくなくて深くは言えない。私はずっと私を許せないままでいる。あの時あんな事を考えておいて、よくも母親面ができるなと思う瞬間がある。

それでも私を母親にしてくれた子の為に、一生をかけて贖罪をするのである。