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『連載 椅子のない部屋』vol.1 ワタナベくん

ひょんなことから彼氏でもなんでもない人と一緒に住むことになった。
1週間くらいの期間限定。今日決まったことなのに、何故こうなったかは思い出せない。

「ラグビーは一緒に見る?」
日中用事のあった彼と会ったのは18時。
試合が始まる1時間15分前だった。

お土産として金沢で買ったお漬物を持っていった。
多分こういうのは好きだろうと思ったから。
夜ご飯は、そのお漬物となめ茸のお味噌汁、黒豆、ししゃもになった。まるでサークルの合宿の朝ごはんみたい。

とりあえずご飯を作りながら、どこに何があるか把握した。
彼はミニマリストだから部屋や持ち物がシンプルだ。
私の母譲りの手際の良さと指示出しで、
案外夕ご飯作りは上手くいった。

一緒にラグビーを観戦。
私はトップリーグも1人で見に行くほど好きだから、少し説明しながら見た。
その後、日本シリーズ第2戦、巨人対ソフトバンクも私が説明しながら見た。

彼に対して気づいたことは、
・食べログ課金ユーザーであること
・歯は時間をかけて磨くこと
特段といえばそれくらい。

私はそんな彼を ワタナベくん と名付ける。
私の好きな小説・ノルウェイの森の主人公・ワタナベくんだ。
6歳上のワタナベくん。
私の思い描くワタナベくんみたいだからだ。

ワタナベくんと次のお休みに一緒に映画を見に行くことにした。
私が通い続けている午前10時の映画祭に一緒に行く。
上映作品が彼の好きな作品だったよう。

私の日常に少しずつ彼が入り始める。
紅茶にミルクを注ぎ込む時のようにゆっくり。
今のところ嫌な気はしない。
そんな初日。

かなも

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