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強いカラダの作り方

息子のソーマは、今年で4歳になります。大きな病気もケガもなく元気に育っています。でも実は、親としてひそかに心配していることがあります。アトピーです。

僕はアトピー(だった)

僕は小さいときからアトピーがあって、ずっとコンプレックスを持っていました。アトピーって経験したことのない人には伝わりにくいんだけど、あれは本当に辛い。痒くて痛くて何も集中できない。汗が沁みるからスポーツをやる気にもならない。

アトピーは見た目に影響する病気だから、実は精神的なダメージが大きい。他の子のきれいな肌を見て、自分は何で同じじゃないんだろうと思う。僕は、アトピーのせいで彼女できないかもしれない、一生童貞かもしれない、とずっと思っていました。

アトピーは治療法が確立している病気ですが、実は薬を使っても完治しないんです。アトピーが出て皮膚科に行くと、軟膏を処方してくれます。これを使うと確かに若干良くなるんですが、しばらくするとさらに悪化します。皮膚科に行くと、前回より少し強い軟膏を処方してくれます。そして若干良くなり、さらに悪化して、より強い軟膏を処方されるという負のスパイラルに入ります。

アトピーの人に処方される軟膏は、ステロイド軟膏です。アトピーの治療は、病気の原因を取り除くのではなく、症状をステロイド剤で抑え込みます。体はステロイド剤にたいして耐性を持ってしまうので、ステロイド剤はどんどん強力になっていき体に負担を与え続けます。まるで薬物依存のような状態です。

中学校を卒業して高校が始まるまでの春休みに、僕はステロイド軟膏を全部捨てて、薬物治療を突然止めました。何でもそうだけど、依存しているものを突然止めると体が拒否反応を起こす。リバウンド反応です。僕は春休みの2週間、ずっと寝込みました。体を動かす気力もないくらいぐったりして、2週間ベッドの中で過ごしました。

僕のアトピーは、その後徐々に良くなり今はほとんど症状が出ないところまで治りました。でも体が疲れたり精神的なストレスを感じると、今でも小指にちょっとだけ出ます。

アトピーって何だったんだろう

僕はアトピーの症状が出なくなってから、自分がアトピーだったことをすっかり忘れてしまいました。アトピーのないきれいな肌になると、それが当たり前になります。たまに久しぶりに会った親とか親戚に、肌きれいになったね、と言われて「あぁ、そういえばそうかも」と思い出します。

「アトピーって何だったんだろう」

今でも考えます。アトピーになるメカニズムは、解明されていません。ホコリ、ダニ、空気、水、精神的ストレス、食べ物。原因とされているものをあげればきりがありません。アトピーの原因を無くすために、たくさんお金と労力を使いましたが、結局何もうまくいきませんでした。

一般にアトピーの原因とされているものは、大きく環境と言うことができるかもしれません。アトピーの原因は、環境でしょうか? でも僕の育った仙台には、アトピーを持っていない人の方が多い。 だとすると、原因は僕のカラダの方にありそうです。遺伝でしょうか? だとすると、他の家族や親せきにアトピーを持った人がいないことが説明できません。

僕は今まで、ああでもないこうでもないと、素人なりにアトピーについて考えてきました。アトピーの原因は、環境からの刺激にカラダが正しく反応できていないこと。これが僕の、現時点での仮説です。

カラダには免疫力があって、病原菌と戦ってくれます。免疫機能は誰のカラダにも備わっていますが、たまに弱っちい奴がいたり、頭の悪い奴がいたりします。カラダの免疫機能が、大したことない病原菌にボコられたり、勘違いしてブチギレて友達に喧嘩をふっかけたりすることがある。カラダの免疫機能がのび太君のような虚弱体質か、もしくはジャイアンのような頭の悪い乱暴者になっていると、環境からの刺激に正しい対応ができない。僕はアトピーの原因はこの辺にあるような気がしています。

免疫機能を再教育する

免疫機能がのび太君のような虚弱体質だとしたら、改善する方法は一つしかありません。鍛えることです。免疫機能がジャイアンのような頭の悪い乱暴者だとしたら、改善する方法はやっぱり一つしかありません。勉強することです。ここでドラえもんの道具を与えて甘やかしてはいけません。本人に頑張ってもらわなければ、問題の解決にはなりません。免疫機能に鍛えてもらったり勉強してもらうには、死なない程度に戦って経験値をあげてもらうしかありません。

ちょっとたとえ話が飛躍しすぎました。要は免疫機能にある程度負荷をかけてあげるということです。日本人は、衛生意識が高くてキレイ好きの人が多いですよね。これって病原菌は減るんで悪いことではないんだけど、同時にカラダの免疫機能を甘やかしていると思うんです。病原菌に触れる機会が極端に減ったから、免疫機能は怠けて虚弱になるし、無知になる。

免疫機能を鍛えるには、実際に病原菌と戦ってもらう必要があります。具体的には、自然の中で過ごす時間を増やしたり、必要以上に殺菌しないといったことを日頃から心がけることが重要だと思います。

衛生意識の高さが、逆に環境への耐性を弱めていることがわかるデータはいっぱいあります。アメリカにはアーミッシュという現代的なテクノロジーを使わずに、農業や牧畜をして生きている人たちがいます。アーミッシュの子供たちは小さい時から自然の中で動物と一緒に育つので、都会の子供に比べて花粉症やアレルギーになる割合が極端に低いそうです。 

1996年に大阪でO-157の集団感染が起きましたが、その後の調べで重篤な症状の子供に超清潔志向の家庭で育った子供たちが多かったということがわかっています。

1995年にインドネシアのバリ島で日本人200人がコレラに感染する事件がありましたが、感染したのは日本人だけだったそうです。

嫁は超潔癖症

さて、ソーマの話に戻ります。僕と嫁にとって、ソーマは初めての子供です。一緒に住んでいた義理の両親にとっては、初孫です。大事に大事に育てられました。でも時にちょっと行きすぎなんじゃないかな、と思うこともあります。嫁は超潔癖症なんです。

ソーマが生後一ヶ月くらいの時、義理のお母さんと嫁が犬と猫を処分しようと言い出しました。その時僕の家では、猫3匹と犬1匹を飼っていました。ペットの毛やホコリが赤ちゃんに良くないからという理由でした。ソーマの免疫機能を鍛えるために大喧嘩しました。相手は女性、しかも多勢に無勢です。本来なら勝ち目のない戦です。ペットを飼うことでアレルギーが減るという最新の医療記事を見せて、外で飼うということで何とか納得してもらいました。

ソーマが生後3ヶ月くらいの時、軽い発疹が出ました。僕は大したこと無いと思いましたが、嫁が心配して小児科へ連れていって軟膏をもらってきました。もしかしてと調べてみると、軟膏がステロイド剤であることがわかりました。緊急家族会議を開いて、ステロイド軟膏の危険性と僕の経験談を話して納得してもらいました。

嫁は今でも手洗いを徹底させていますし、わが家では除菌濡れティッシュがいたるところに常備されています。僕はソーマの免疫機能を鍛えるため、犬にベロベロ顔をなめさせたり、猫と添い寝させたり、砂場で遊ばせたりと、涙ぐましい努力を今日も続けています。


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