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山本文緒「無人島のふたり」とjujuの「明日がくるなら」について

秋ですね。この季節らしいような悲しかったり切ない気持ちを

つらつら書いてみたいと思います。

さて闘病日記というのは読んでいてとても心が痛むものかもしれないです。

ただただ命を削って書いてある文章を読んでいるうち

日常の大切さというか普段なら気にもとめないささやかなことに対する

ありがたみのようなものを意識しなおす大事な作品のひとつかも

しれません。

今回の感想文では最後に「無人島のふたり」の最後の文章を引用します。

ネタバレと思って読んでしまうまえにがっかりされぬように

ここでお知らせしておきます。

作家の山本文緒先生の「自転しながら公転する」の感想文も

以前書いたことがありました。

そしてjujuの「明日がくるなら」という曲は、

余命1ヶ月の花嫁のテーマ曲だったと記憶しています。

冒頭の歌詞「さよならは 言わないでおくよ」という出だしから

もう曲を聞き始めるとうるっと涙が出そうになります。

私の学生時代に親しかった大切な友人をがんで失いました。

20代の若さで旅立たれてしまい、気がついたらその倍くらい

生きているようなことになってしまいます。

あっという間に時が流れていくのを感じました。


Amazonより新潮社による「無人島のふたり」の紹介文の引用画像

「無人島のふたり」の話に移ります。

余命を宣告された心境について、

まずは神様にボケ!とツッコミを入れている文が書けるのが

すごい。こういうのは本当に山本文緒節というか

とても先生らしいと思います。


先生の語り口の中で「うまく死ねますように」という

文があります。

自分がどのような最期を迎えるかはわからない中で

ただ謎ですということではなく自律的に能動的に「うまく死ぬ」

と書いてあるのに読んでいてクラっとしそうになります。


(私にとって)死は怖いものという前提で私は以下感想を述べていきます。

軽妙な語り口で時にはユーモアを交えつつも

旦那さんと一緒に泣いたり、お一人でも泣いたり

それでもネガティブになりきってしまわない

しなやかな暮らしぶりを垣間みることができます。

そして、旦那さんがとてもお優しい。

お二人の中がとても穏やかで打ち解けてる関係なのが

読んでいてとても優しい気持ちになります。

6月9日の日記の中「作家としてイマイチなのかもしれない」とか

「承認欲求を捨てきれない小物感がある」とか

「せめてこれを書くことをお別れの挨拶として許して下さい」

など読者に向かってメッセージを書いていらっしゃいます。

何もそこまで謙虚にならなくてもとか私は思います。

偉大な作家先生としてわざと少し卑下されてるのか

私には少しだけユーモラスに受け取りました。

先生には「いえいえ、先生の書きっぷりにはいたく好感をもっており

作家として大成され、承認欲求を潔くお認めになっていて

小物感などなくいつも素敵ですし、お別れの挨拶を聞くのは

本当に切ないです」と直接お伝えしたくなるほどです。

さて最後に10月4日で先生の日記が終わります。

読んでいない方は最後の引用までに空白を設けて

今の時点でページを離れることができるように

しておきます。その点ご了承のほどを。













日記の最期の最後が

「今日はここまでとさせてください。明日また書けましたら、明日。」

と書いてあり、ページをめくって先生が旅立たれた様子が

述べられていよいよ本当にお別れだと感じて

私は嗚咽しながら「山本文緒先生素晴らしい作品をありがとう

ございました。ちゃんと読み切りましたよ。闘病ほんとうに

お疲れ様でした」と

独り言を言いました。

明日という単語は英語でTomorrowでしょう。

これを日本語では漢字で明日と書いてあることに

私は今更ながら驚きと感心を感じます。

明るい日と書いて明日(あした)と読むのですから。

日が沈んで一日が終わりそうになり、

また明るい日がのぼってさらに新しい一日が始まる。

明日という言葉で先生の闘病日記は終わります。

つらつらと2つの作品を並べて

今を生きることの充実を考えた私の心境を

書いてみました。

もちろん、明日の天気が雨の場合はそこまで

明るい日の始まりとして明日という意味を

使うことも微妙になるのでしょうけれど。

それはそれとして…。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

皆様におかれましては明るい日が明日でありますように。

そして今日という日が前日から見た明るい日であったという

気持ちでありますように。

またの機会にもお会いできますように。


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