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「やすらぎの里」体験記

伊豆高原にある断食道場「やすらぎの里」での1週間を終え、神戸に戻りました。
行くキッカケは、以前に行った経験があるYさんが、
「とにかく素晴らしかったから、もう一度行きたい」
と、瞳を輝かせながら言う姿とその熱量に感化されたこと。
「そんなに素晴らしいところなら、行ってみたい」
と直観で即決。
プログラムの内容や施設についての情報を何も持たないまま、Yさんに空き状況の確認や申込み、支払いを一任しての参加でした。

<どうやらとても有名らしい>
私の生業のひとつが登山ガイドで、伊豆へ向かう前日はツアーで神戸の六甲山を歩いていました。そこで、ツアー参加者に、
「明日から1週間、伊豆の断食道場でデトックスしてきます」と話すと、「えっ、ホントに!いいなぁ~。そこ、この前、NHKの72時間で見ましたよ」
と、これまた眼を輝かせて放送された内容、リピーターが大勢いることなどを教えてくれたり、他の山友からも「そこすごく有名なところでしょ。実は私もすごく気になってた」とメッセージが返って来るなど、「伊豆」で「断食」と言うだけで、施設名やプログラム内容、その良さを知っている人が複数いることに驚きました。
因みに、1週間の滞在を終えて伊豆から戻った翌日も、別の山友から、
「私の好きなエッセイストがそこに何度も通っていて、私も行きたいと思ってたんです」
と言われ、実際自分でプログラムを体験してみて、有名になる理由がよ~く分かりました。
「是非、行ってほしいです」
と、今は私も自信をもっておススメできますが、まだ何も知らない出発前は前評判の良さを聞いて、
「なんだか楽しみ!」
とただただ期待感で胸を躍らせているばかりの状態で新神戸から新幹線で熱海へ向かいました。

新幹線から見た富士山

<施設とコースの種類>
「やすらぎの里」は伊豆半島の東海岸、伊豆急行の伊豆高原駅にあります。いくつかある施設の中で、大きな施設は二つ。海側の緑豊かな別荘地に建つ養生館と、大室山への坂道が続く山手側に建つ本館。
私が今回お世話になったのは「やすらぎの里」代表の大沢先生がいらっしゃる本館。
主なコースは断食、デトックス、糖質制限食、養生食。
断食とデトックスの違いは、断食コースが前半3日間は固形物を一切取らないのに対して、デトックスコースは入所当日は具沢山味噌汁でその後の3日は朝夕二食、玄米と味噌汁、少量のおかずが食べられる点です。
養生食は健康的な料理を普段と同じ分量食べるコース。
これらの中から目的に合うものを選び、期間は短い体験コースの1泊2日や週末だけのコースもあるが、リピーターに最も人気なのが1週間コースとのこと。

実際1週間のデトックスコースを体験し、6泊7日という期間の必要性と、なぜ人気なのかの秘密と理由も納得できました(ので後述します)。

<道場というよりオーベルジュ>
断食道場、というと禅や武道の修行にも通じるイメージがあり、木造の古民家で部屋は畳敷、廊下を裸足で歩き、静寂な空間に無駄なものが一切ないお寺や座禅の間を想像するかもしれませんが、「やすらぎの里」本館の建物外観はおしゃれな洋風。
ロビー・ダイニングなどの共有スペースや廊下はカーペットが敷かれ、明るくて清潔感と温もりが感じられる空間でした。

相模灘が一望できる広々としたテラスで体操をしたり、毎朝出される日替わりドリンクを飲んだり、朝食をいただくこともできます。

海と山が一望できる本館のテラス

泊った部屋は畳敷の和室に低めのベッドが置かれており、窓側にテーブルとイス、更に部屋にはデスクがあり、読書、仕事、勉強などに集中し易い環境が整っており、1週間プランにワーケーションしながら参加されている方が何人もいらっしゃいました。

書籍が置かれたラウンジにはマッサージチェアやフットマッサージャーがあり、朝5時から夜10時まで何度でも入れる温泉(露天風呂付)もあり、兎に角ずっとのんびりしたい、という人だけでなく、料理や家事をせずに何かに集中(仕事、編み物、読書)しつつも体も労り、施術やトリートメントで癒されたいという方がONとOFFの切り替えがし易い環境、さらに何をやっても良い自由な雰囲気に満ちていました。

なので、断食や粗食で修行する道場、というよりも、自然豊かな環境で穏やかに流れる贅沢な時間と空間に浸りながら、丁寧に作られた少量の自然食をいただき、朝の散歩やストレッチやヨガ三昧の1週間を過ごし、いつの間にか(我慢や苦しみに耐えるという感覚がないまま)、日を追うごとに体も心も軽やかになっていることが実感できるオーベルジュに滞在しているような気分が味わえました。

<デトックスコースの食事>
私が選んだデトックスコースについて、滞在期間中に投稿した「調身・調息・調心、それから調食」で前半の料理写真やプログラムの概要を書いています。
「食」に対する意識・概念・今までの思い込み・勘違いを一変させた!と断言できるほど大きなインパクトがあった「食べる瞑想」についても綴っていますので、併せてご覧いただければ嬉しいです。

断食コースは前半3日間は固形物が出されることはなく、デトックスコースは3種の野菜が極少量、お味噌汁、玄米ご飯(お茶碗に約1/3杯程度)、4日目の夕食分までは野菜中心で肉、魚、卵も含めて動物性のたんぱく質は一切出ませんでした。

4日目の夕食

その為、5日目の朝食にホタテが1つ出された時は、久しぶりに食べた魚介類の味(野菜にはない旨味)に感動。涙が出るほど嬉しかったです。

5日目朝食 感動のホタテ

その日の夕食からご飯の量が少し増え、おかずはなんとブリの西京焼きに茶碗蒸も付き、一気に豪勢さがアップ。
「あ~、なんという幸せ!」
と、一品ずつ有り難く、じっくり味わっていただきました。

5日目夕食 ブリの西京漬け

料理はいずれも薄味ですが、物足りなさやもっと濃い味付けがいい、という感覚はなく、むしろ薄味の方が返って素材の味が生かされているから美味しい、と「食べる瞑想」後から感じられるようになっていました。

そして極め付きが最終日6日の夕食です。
地元野菜たっぷりのサラダと前菜で始まり、スープ、メインディッシュ、ご飯と香の物、さらにデザートまで。厳選された素材を心を込めて調理されたことが伝わってくる優しくて上品な味のコースディナーにお腹も心も大満足。幸せな気持ちで満たされました。

地元野菜のサラダと前菜
グリーンピースのスープ
メインディッシュ
金目鯛のソテーと新玉葱のオーブン焼き
グリーンピースご飯
豆乳ブラマンジェとたんぽぽ珈琲

7日目、帰宅日の朝食は養生食と同じメニューが出され、それまで少ない量の朝食に慣れていたので、なんとも豪華な朝食!と興奮しました。

最終日の朝食

<ホスピタリティ精神の高さ>
朝のドリンク、断食または少量の自然食で胃腸を休め、体に負担が少ない食事で体を内側から整える①食養(食餌療法)、カッピングやアロマも含む数種類の②施術、さらにヨガ・瞑想・氣功などで体をゆるめる③体操がプログラムの三本柱
更に、いつでも入れる温泉での④湯治を含めると4つ(四天王)になりますし、その他にもマイクロバスで空気が澄んでいる早朝に美しい湖の外周や海岸沿いのトレイルに連れて行ってもらえたり、河津桜が美しい観光名所やパワースポットの神社で深呼吸や瞑想をさせてもらえたり、ほぼ毎日なんらかの⑤アクティビティが用意されていることもプログラムを魅力的にしている大きな要因(五大要素)だと思います。
主催者側が省こうと思えば無くしてしまえるアクティビティですが、参加者(今回は約20名)を少しでも喜ばせよう、気持ちが良い場所でウォーキングをしてもらおう、折角来たのだから伊豆の名所を案内しよう、などのホスピタリティ精神の高さに感心させられ、参加者としては有り難いなぁ、嬉しいなぁ、を沢山感じ、心がどんどん満たされていくのを感じた1週間でもありました。

「伊豆の瞳」一碧湖で朝の散歩
八幡宮来宮神社の境内で深呼吸

<厳しい規則はないが、規則性がある生活>
朝の散歩、観光、ヨガ・体操などはいずれも自由参加。
強制されたり、縛られる規則はなく、参加したいものがあればどうぞ、というスタンス。
あくまで参加者の任意であり、自主性が尊重されていることも素晴らしいと感じました。
それでいて毎朝6時半に初めの活動があり、決まった時間に朝食と夕食、最後に安眠ヨガで1日の活動が終わる、というように規則性=リズムが決まっているので、体のONとOFFのメリハリがつけやすく、家に帰ってからもなるべくこのリズムを生活サイクルに根付かせられたら健康度がアップするなぁ、と体験を通して感じました。

<1週間必要>
コースの期間中、瞑想についての講義や姿勢に関するアドバイス、生活習慣改善講座などの座学もあり、その都度先生が話した内容のメモを見返すと、1週間でかなり濃密で膨大な量のことを教わったことに驚きます。
メモの中で頻繁に登場するのが「今ここ、に集中する」「五感に集中する」「意識を向ける」「観察する」などの言葉。
6泊7日の1週間コースは前半3日が断食(又は少量食)で胃腸、内臓を休める。そして後半3日で体に負荷や無理が無いよう、徐々に量と内容を増やす、という工夫がされています。
まずは胃腸を空っぽにして内臓を休め、飢餓状態にすることで機能が鈍っていたり働きが悪くなっていた器官にメッセージを送り、本来人体に備わっている自己治癒力を目覚めさせる(=スイッチを入れてあげる)。
これにより恒常性(元の状態、本来あるべき姿や働きに戻ろうとする習性)や免疫力が正しく機能しはじめるためのリセット期間が前半3日間。
そしてリセットされ、スイッチが入ったら、休んだ胃腸をゆっくり穏やかに働かせ、元気や活力が備わっていくように少しずつ栄養価と分量を増やしていき、元の生活にスムーズに繋げるための助走期間が後半3日間。

もし前半3泊4日の断食だけ経験して帰ってしまうと、絶妙に選択・調整・調理された非常に重要な助走期間の回復食が食べられず、かといって、家で3日間絶食するから、後半3泊4日の回復食だけ食べさせてください、というわけにもいかない。
というのも、断食=絶食ではなく、汁物を体内に入れ、少量の生姜湯や飴をひとつ食べるなどで断食反応(頭痛や倦怠感など)が出にくいように工夫と指導されていおり、それでいて断食中はエネルギーを摂り入れないからといってジッと動かず寝ているわけではなく、ヨガ、散歩、ウォーキング、体操、入浴など、なかなかの運動量・代謝量があるので、素人が勝手に見様見真似で断食するのは危険でおススメできないことが分かりました。
そういう点から、1週間というスパンが必要なだけでなく、1週間同じ環境下で良いリズムで生活していると自分の体の変化(お腹の張りが無くスッキリしていく、匂いに敏感になり薄味でもどんどん味が豊かになっていく、1日二食でも空腹感がなくむしろその方が体が楽チンだと感じ始めている、など)に気付き、体に意識を向け、よく観察でき、五感に集中する行為が習慣化されやすい(=身につく)という点からも1週間という期間は必要だと実感しました。

<自分が感じている以上に自分は疲れていたことに気付く>
毎週山に登り、普段から食事や睡眠などにも気を付けているので、自分は健康だと思っていたが、昨年夏にカメムシの毒が目に入ったことがキッカケで顔に凸凹の湿疹が広がったり、この冬は寒かったせいか、今まで感じたことがないほどやたらと手足の指先が冷えると感じていたが、これらは決してカメムシの毒だけが原因だったり、寒波が多い冬だったせいではなく、自律神経の乱れとホルモン分泌の不調が引き起こした症状の可能性が高い、と先生に指摘され、その他にも講義などで聴く内容から、自分が感じている以上に、実際は疲弊していたのかも、とお腹と脳を空っぽにして感覚が敏感になることで、ようやくそのことに気付きました。
その根源は脳の疲れ、ストレス、心配ごとなどであり、この約10年で父親の突然の死、離婚、カナダから日本へ移住、転職と独立、シングルファーザーとして子育て、長期化する母の介護など、自分の出来る範囲内で頑張ってるから大丈夫、と思っていたが、脳はゆったりできずに常に戦闘態勢(自律神経優位の状態が続き、分泌されるべきホルモンが足りていなかったり、過剰に分泌されたり)だったのかも、ということを認められるようになりました。

<「どっさぁ~」と肩の荷を下ろす>
プログラム期間中、ヨガや気功などのほかに「歩く」「姿勢改善」「呼吸」にフォーカスした体操があり、そのひとつに「ゆる体操」の時間が5日目にありました。
文字通り凝り固まった体を「ゆるめる体操」で体の節々や各部位を自分でさすったり運動をした後に、肩にずしーんと乗っかっているストレス、仕事の予定、不安心配、嫌いな人も含めて「どっさぁ~」と遠くへ飛ばすような動作をする体操です。
それまで既に色んな体操や少量食で体が軽くなっていることを実感していましたが、この「どっさぁ~」という掛け声とともに3回肩に乗っていた諸々の重荷を下ろすと、肩はこんなに軽いのか!と今まで感じたことのないほど軽くなった瞬間がありました。

私自身、スポーツを通して体のことを学び、いくつかの手技やリフレクソロジー、操体法、レイキを中心に施術の仕事を中心にしていた時期もあったので、それなりに体のケア方法を知っているつもりでしたが、この約10年で起きた様々なこと、特に父の死と母の介護がキッカケで、それまでのように施術ができなくなり、他の人の体のケアはもちろん、自分自身の体の声に耳を傾け、労わる、休めるということが知らず知らずのうちに疎かになっていったと思います。
今回、一度お腹を空っぽにして、肩の荷をどっさぁ~と下ろすことで、リボーンした(再生・生まれ変わった)ような新鮮(フレッシュ)な気持ちになれており、こういうことをリフレッシュというのかぁ、と遅ればせながら、初めて本当に実感できたような気持でいます。

<実体験して実感することが大切>
1週間のプログラムを通して、最初の面談で計測した時よりも体重と体脂肪が減り、体年齢が若返った以上に嬉しかったのは、一度食事を極限近くまで減らして胃腸を空っぽにしてから始まった体の変化を体験できたこと。
そして、どんどん変化していく自分の体(肩が軽くなり、首がよく回るようになったなど)と共に、気持ちや心境も自分が望んでいる状態により一層近づいたと実感できたことも嬉しいです。
雑誌や本を読みフムフム頷いたり、良い感じかもぉ、とその気になるだけでなく、実際に体験し、心と体が感じることで、その記憶が体内の細胞や脳にインプットされ、行動しようとする意欲と継続していく意思の強さにも影響を及ぼすので、体験して実感することが何より大切だと思いました。

<less is more>
今回学んだこと、体感したことを英語でシンプルに表現するならless is moreでしょうし、禅の言葉「本来無一物(ほんらいむいちもつ)」が近い境地かと思いました。
「本来=本質的に、無=『空』何もない、ではなく、既に満たされている状態であり、何もない状態からすべてが生まれ、始まる」と言った解釈。

大室山

今回、情報を持たない無=「空」の状態で参加し、一度おなかも空っぽの「空腹」状態にすることで、総てがリセットでき、リスタート(再出発)する気分になれ、
「とにかく素晴らしかったから、もう一度行きたい」
と言ったYさんの言葉も空っぽの五臓六腑にストンと落ちてきて、これぞ正に「腑に落ちる」の感覚なんでしょうね。

しばらく教わった体操や食事、生活のリズムなどを実践し、また伊豆高原の別荘に遊びにいくつもりで、次回は養生食コースで天城連山の幾つかに登る滞在をしたいと思っています。

大沢先生が長年の経験で得た叡智を分かりやすい言葉やヨガ・体操という形で教えてくださったことに心より感謝の気持ちでいっぱいですし、心地よい環境と美味しい料理を作ってくださったスタッフの皆さんにも感謝とお礼を申し上げます。

南伊豆の河津桜

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

<Note後記>
伊東高原に滞在中、自由時間に「やすらぎの里」周辺を散策していると、民家の軒先に夏みかんが置かれていました。
よく見かける「一袋100円」のように販売しているのかなぁ、とのぞくと、
なんと「ご自由におもちください」と。
理由は昨日の強風で落ちたためですが、どれも痛んでいない物ばかり。
食養中だったのでその日は持って帰りませんでしたが、最終日前日に散策し、その家の裏に広がる農園脇に置かれたスタンドで紅甘夏を買ってビニールをぶら下げながら歩いていると、軽トラックが停まり「それうちのミカンです、ありがとうございます」と農家さんらしい男性が爽やかな笑顔でお礼を言ってくれました。
自由にお持ちくださいの精神といい、傷んでいない物を選んで提供する心遣いといい、そして、気が付いてもスルーできるところをわざわざ車を停めて気持ちよく挨拶してくださるお人柄といい、伊豆高原はそんな穏やかで心地良い印象が多い場所でした。

どうぞの夏みかん
少しだけ「違いが分かる男」になれたかな?
伊豆のマイ別荘「やすらぎの里」テラスにて



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