そせじ番長(中田淳一)

そせじ番長(中田淳一)

最近の記事

鵺 (第八稿)

 後白河天皇の御代、南禅寺に悟省という若い僧がいた。  この悟省、「省みる」という文字を戒名に戴いたのにはそれなりの訳がある。幼い頃から絵に興味を示し、筆を握っては周囲の人物や野山の風景などを好き勝手に描いていた。実力は確かで、筆一本の濃淡で様々なものを描き分けることができた。やがて自由闊達な絵が評判になり、寺を訪れた商人がいたずら描きのようなものを言い値で買っていった。  そのようなことが幾度か続き、僧は天狗になった。「なんだって描いてみせる」と豪語した。やがて、絵が高値

    • 鵺 (第五稿)

      鵺 (第五稿)  後白河天皇の御代、南禅寺に悟省という若い僧がいた。  元はといえば武士の子であったが、長い戦で幼くして天涯孤独の身となり、南禅寺の門の前で倒れていたところを禅師に助けられた。やがて勧められるままに仏門に入り、今では形ばかりの経を読むなどしている。  この悟省、「省みる」という文字を戒名に戴いたのにはそれなりの訳がある。幼い頃から絵に興味を示し、筆を握っては周囲の人物や野山の風景などを好き勝手に描いていた。実力は確かで、筆一本の濃淡で様々なものを描き分ける

      • ピープルウェアに思うこと

        自宅を会社として一ヶ月。机に差し込むひかりをレイトレーシングしても太陽にたどり着かない秋田のゴールデンウィークです。毒のなかでも桜は咲いております。 SE時代、上司から秋田の専門学校生になにか講義をしてくれと言われたので選んだのがこの本。ピープルウェア。転職回数の多さや客先常駐の経験も交え、良い仕事環境とはなにかというテーマで。 レドモンドのマイクロソフト本社はキャンパスと呼ばれていました。それぞれに個室が与えられていて、集中できる環境としては格別でした。二ヶ月ほど滞在し

        • 近況20200418 起業後の仕事と遊び

          毎日が土曜日という感覚であり、仕事と睡眠の化合物をつくりながらコロナの日々を送っている。しばらくは仕事でずっと起きていたので、今日はずっと「寝る権利」を行使していた。就寝雇用制と名付けようと思ったのだが、もう雇用する側である。 単価の設定、収支の試算、契約書関係の整備などに時間を費やす。いまはここ数年で達成すべき目標を考えたり、現在の先端に追いつくために技術の勉強をしたりしている。 やらないと前に進まないというのはタスクの消化という意味合いだけではなく、やらないと次になにを

          自分の性格について(拡大版自己紹介)

          自分自身について書いてほしいと言われたので、性格についてグダグダ書きたいと思います。 文章にするより箇条書きのほうがわかりやすいと思ったのでそうしてみました。 子供のころウソつきだったせいでいろいろ大変だったので、自分を矯正して生きてきた  →ウソの原因は孤独から逃れるための自己顕示  →いろいろあって孤独を恐れないようになった  →いまはできるだけウソをつかず一貫性のある生き方をしたい   →友達や恋人にもそうあってほしいし、そういうひとを選ぶ   →とはいえあんまり厳密

          自分の性格について(拡大版自己紹介)

          近況20200313 被災地旅行記その1

          里山と闇のはざまに朝の薄さがのぼってくるころ、久慈は月齢18.5の光に見おろされていました。思いつきがここまで来ました。 能代にラーメンを食べに行ってた頃までは普段の思考だったのです。中学生のころにはじめて食べた十八番。なんとなく鍋の締めを思わせるスープには極上のチャーシューとレモンの香りが載り、味噌だけのつもりが醤油まで平らげることになってしまいました。 その後、セキトで志んこもちを喰らったあたりから、このままなにかの手のなかにいるのはイヤだと思いはじめました。 「行こ

          近況20200313 被災地旅行記その1

          近況20200304 起業準備と地元スナック開拓

          さらりと近況。 市役所の駐車場。車の列にヘッドライトをあびせながら、税金についてネガティブな想いにとらわれているところです。星座の見えない秋田市の夜空です。 西尾強さんから事業計画を立てたらとアドバイスを受けたので、不慣れながらも手をつけているところです。ググってみると経営者のプロフィールを書けなどがでてきます。音楽やってました、文章書けますは載せていいものやら。読む人間が銀行員だとしたら、そんなものには一切興味はないかもしれません。職務経歴書から毛を抜いたような感じになる

          近況20200304 起業準備と地元スナック開拓

          初心者向け「タンパク質の立体構造予測について」

          昔はタンパク質の立体構造予測データベース作りをやっていた。 そもそもタンパク質とはなんなんだというと、DNAを設計図として作られるからだの構成要素や道具だと思えばよい。わたしたちはそれらの部品であるアミノ酸を別の動植物から食物として取り入れたり、体内で作ったりしている。タンパク質はアミノ酸からできている巨大分子である。 細胞内でDNAからmRNAというメモ書きのようなものが作られる。それがリボソームという小器官に連れていかれると、メモに書かれた遺伝暗号の通りにアミノ酸がゴ

          初心者向け「タンパク質の立体構造予測について」

          渋谷にて友人と再会 前川忠嘉、宍倉佑二両氏のこと

          おさかな料理で有名な渋谷のイタリア料理店にて再会。メニューに時価とあり、鼻血噴く寸前。一尾六千円。ザルに積まれた鮮魚は思いきりよくオーダーしないと食べられない気配がした。 仲間というと思いつく顔である。Red Hatでコンサルタントをされている前川忠嘉氏と、JR東日本から子会社に出向中の宍倉佑二氏である。大学院時代に労苦を分け合った間柄だ。聡明であり、撃てば響く。 ちょっとうるさい店内に最初に現れたのはフットサルで引き締まった前川氏。簡単な挨拶を交わすともう普段通り。寺町

          渋谷にて友人と再会 前川忠嘉、宍倉佑二両氏のこと

          東京墓参散歩

          昨日午前中はエネルギーがなく職場を休んでしまった。午後からなんとか力がわいたので、東京を散歩することとした。どうせ眠れない。 雑司ヶ谷へは副都心線で行く。都市は様々な表情を見せるが、高層ビルと古ぼけた家屋の対比が更け行くこころをかすかにゆらす。着いたのは墓地。念願だった作家の墓参に来たのである。さまざまな方が眠られているが、観光できたわけではないので、自分に縁があった方だけを拝むことにした。 最初は夏目漱石。墓所にある花屋に行くと白黒の老猫が迎えてくれた。あざといくらいに

          近況報告20200207 小林佳徳さんのこと

          変わらない男のすこしアップデートされたスタイル。 小林佳徳氏はわたしの大学院時代の後輩で、弟と同年代です。名前はよしのりと読みます。ベネッセやライブドアなどに所属し、現在は転職11回目の強者です。技術者から人事に転向し、様々な人間と向き合っている方です。ライブドア事件について本を書いたこともあります。 三軒茶屋で飲むことになりましたが、システムの手違いで予約が成立しておらず、やむを得ず飛び込みでお好み焼き屋に入りました。カウンターで気負うことなく話せたのでまぁ良かったかな

          近況報告20200207 小林佳徳さんのこと

          近況報告20200206 西尾強さんのこと

          大学、大学院時代の先輩である西尾さんにご挨拶にあがる。 何十年ぶりだろうか。自然体が大きなサイズの服を着ていた。いきなりヘッドロックされることを少し期待したのだけれど、円熟したラガーマンはそんなことはもうしなかった。少し寂しいが、それがXPでもVistaでもない最新の豪腕精密コンピュータであった。今も現役選手として野望を抱く姿に融合中の重水素を感じる。仕事では第一バイオリンであることをやめ、指揮者になった音楽家の、豪とした雰囲気が漂う。社長になられたのだ。 だらだら雑談を

          近況報告20200206 西尾強さんのこと

          ユーザビリティの戦場における雑草

          マイクロソフトではユーザビリティをかなり重要視していた。 ユーザビリティとはソフトウェアの使いやすさのことである。操作感だけでなくパフォーマンスなども含まれているかなり広範な概念だと言える。要はお客さんをイライラさせないこととも言い換えられる。 OfficeやIMEが戦争時代にあったマイクロソフトではユーザビリティに専門のチームを置いていた。デジタルな世の中にも関わらずかなりアナクロな方法、失礼、人間工学的な手法を用いてソフトウェアの品質向上を図ってきた。いや、測ってきた

          ユーザビリティの戦場における雑草

          近況報告20200129 または、雲と烈風

          ねむけが珈琲にとけていく冷たい雨の朝です。三軒茶屋は起きたばかり。 駅からの800メートルは、入居当初は気が遠くなるくらいのウンザリでしたが、慣れるとあっという間です。車の生活に萎えた足と精神が、生き方を東京にアジャストするのでしょう。歩きの生活になると酒量が増えます。それほど東京が魅力的な街であるということでもありますが、からだにはよくありません。昨日はタイ料理屋に引っかかって、グリーンカレーをアルコールで飲み込みました。自分のせいにする考え方は精神衛生に悪いので、せめて

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          近況報告20200122 (身内向け)

          【近況報告と方針】●ライティング ライティングの仕事を神戸の会社から請け負い外壁塗装関係のビジネスライティングを行いました。そちらの記事はまだ公開されていません。ほかに小さな記事を何件か請け負いました。 ●ITで起業 ご縁があり、東京の某IT会社の仕事を手伝うことになりそうです。仕事上の信用と今後の経済的な基盤を作るために起業することを求められています。今回の出張はそのための前準備です。自分にできることなのかはよくわかりませんが、今までも自信のない状態でなんとかこなしてきた

          近況報告20200122 (身内向け)

          手紙

          太宰治は「恥の多い人生を送ってきました」と書いたけれども、その何が卑怯かといったらわたしの人生をどこからか盗み視ていたようなところである。 昔の知り合いと遭うことは、過ぎ去った自分の恥ずかしい記憶と再会することでもある。 いまはFacebookという便利なナイフがあって、うまく使えばリンゴが剥けるのだが、どうにもわたしは自分の手首を切ることくらいしかできないようである。友達を集めるといっても、そこで出会うのは過去の死んでしまいたいむなしさばかり。 嘘にまみれて笑っていた