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アフリカおじさん<夫婦世界一周紀75日目>

サハラ砂漠のキャンプまでの道のりは「ラクダに乗って」だった。

足がズボリと沈み込む砂漠では、徒歩は通常の何倍も負荷がかかるし、なにより砂漠の起伏は侮れない。常にもこもこと上がったり下がったりしていて、ラクダに乗っていても勾配が気になるほどだ。

先導のおじさんは陽気な男だった。マリオのような髭を蓄えて、5分おきに後ろを振り返り、

「ニホンジン、アフリカッ!」

と叫ぶ。そう言えば日本人が喜ぶと学んだのだろう。けれども、その場にいた日本人。僕とフウロ、そして女子大生の二人はどちらかというと観光観光している雰囲気よりも「ありのままの」が好きなタイプだった。最初こそそのテンションに合わせてアフリカ!と言ってみたものの、徐々に声は無くなっていき、いつのまにかアフリカおじさんのアフリカッ!は虚しく砂漠に響き渡るだけになった。

その後もアフリカおじさんは奔走した。サハラ砂漠のキャンプに着いたら、いつのまにかおじさんは消えていた。どうやらラクダを引き連れ、宿に帰るらしい。宿からキャンプ場までの道のりは約1時間。日はすっかり落ち、どちらに向かえばいいのか分からない砂漠を一人で歩く。そして朝起きると、ラクダはまたサハラのキャンプ場に着いていた。一度宿に戻り、またキャンプ場に連れてきたのだ。すごいぞ、アフリカおじさん。

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外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。 無料で公開したかったのですが有料マガジンを変更することが出来なかったので、最安値の100円に設定しています。

2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…

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