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サハラ砂漠の魅力は10%くらいしか伝えられない。 <夫婦世界一周紀74日目>

サハラ砂漠は別格だ。

世界を旅してきて思ったが、「なんだ、案外動画の方が素敵じゃないか」と思うような肩透かし観光地というのは結構あるものなのだ。だが、サハラ砂漠は違った。人が生きれるギリギリの環境には、日本に住んでいては絶対に感じることの出来ない感覚や、とうの昔に置いてきた原始的な気持ちがゴロゴロ転がっている。

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大きな砂山のようにこんもりとしたサハラ砂漠を背に、テントを立てて暮らす1組の家族。ベルベル人たちはトゥヴァの遊牧民のように場所を変えながら暮らしているという。

時には目を開けられないほどの砂嵐が襲うこの場所で、家と外を隔てる布は洋服を継ぎ足した簡素な布だ。屋根を支える骨組みは流木のよう。この荒野に木が生えている場所はほとんどない。木もとても貴重な素材なのだろう。

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昼食が始まる。半日寝かせた小麦粉を毛布の上で練り、分厚く広げて荒野に建てた竃で焼くのだ。このピザをベルベルピザと呼ぶ。

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鉄板の板にそこらに落ちている石を敷き詰め、その上で熾火焼きする。石のおかげで生地が張り付かず、パンパンに膨らむ。ベルベル人のお母さんのお腹もパンパンだ。今日の昼食はミントティーとベルベルピザ。スリランカ同様炭水化物がメインでは、栄養も少ないのだろう。でもこのピザは塩味もなにもないのに、最高に美味しかった。サハラを拝んで地べたに座り、常に経ている風に乾いた唇を舐めながら、熱々のピザを頬張る。ここでは複雑な味がなくとも、美味しさはずっと深く濃く感じられる。

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砂漠はまるでパントーンの色見本帳のようになめらかな中間色で、シャドウがほとんどなかった。絵の中に入り込んだようだ。近くで砂漠を見てみると、絶え間ない風によって模様は常に変化している。眺めていても飽きない。

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砂漠の砂は目に見えないほど細かいものもある。はしゃいで走り回ったあと、二人の集合写真を撮ろうとデジカメに電源をつけたら開かなくなっていた。開閉部分に砂が入り込んで動かなくなっている。デジカメが故障したことよりも、砂の細かさへの感動が先に襲ってきた。デジカメはまあいい。もう一台あるからいい。

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砂漠の真ん中では、昼が人間のもの。夜は宇宙のものへと変わる。暗闇ではたちまち闇に取り込まれてしまう。そうならないように火をくべて、大きな声で歌い、踊る。まるでそうインプットされているように、みんなが正直に素直に動き回る。

「歌え、日本人」と言われ、フウロが宇多田を歌う。砂漠に日本の歌が染みると一瞬しんと静まり返り、モロッコ人は大声で歓声をあげる。ここに酒はいらない。甘くて暖かいミントティーとダルボカがあればそれでいい。夜は続く。隣では虫が寝ている。

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外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。 無料で公開したかったのですが有料マガジンを変更することが出来なかったので、最安値の100円に設定しています。

2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…

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