取り立てて悪いところがない映画って刺さりもしないんだなと思ったけど結局これが人類に必要なエンタメど真ん中だった 映画カラー・パープル感想
評価:4.1
ネタバレあり
この映画を観て、批判してやろうという気分になる人ってそういないだろう。
差別って良くないよね
家父長制ってヤバイよね
黒人の背負ってきた歴史って大変なものだったよね
女は夫からの暴力に耐えるだけでなく、抵抗するべきだよね
NOと言うべきポイントが、特にない。
それゆえに今、それを表現するべき理由がわからないなと思った
当たり前すぎて。
でも、今年のアカデミー賞受賞式の映像を観て、
人類は未だ全然クソ、ということが明らかになった。
このカラー・パープルから「アカデミー賞狙ってる感」が漂っているように感じられてしまい、私は少々冷めた感じで観た。
いや、とはいってもめちゃくちゃ泣いたのだが……
たとえば去年の作品賞「エブリシングエブリウェアオールアットワンス」みたいなのと比べて、
革新的な感じ、複雑な要素、トガってる感が、このカラー・パープルには一切なく、
全体的に大味な作品だと思う。
NHKの連続テレビ小説みたいというか。
けど、このカラー・パープルは狙ったのに、
アカデミー賞作品賞ノミネートもされなかったけど、
今年のアカデミー賞の受賞式を観る限り
人類の倫理観や差別意識はまだまだ
「みんなカラー・パープル、ちゃんと観た?😅」
みたいなレベルにとどまっている。
テーマが普遍的過ぎて退屈にも感じたけど、
結局これが今人類に必要なエンタメだったのだ。
シスターフッドのパワフルさ
恋愛経験のない私の人生において、
私のことをいつも助けてくれたのは同性の友人たちだった。
映画やドラマなどフィクションの世界では一般に「恋愛(異性愛)」がオーソドックスな解決策、ハッピーエンドとして採用される。
そうった作品をいつも「シンデレラ」を見るときのような、異世界モノに対峙した時のような「ファンタジー」として、他人事として眺めてきた。
でも、このカラー・パープルでは主人公のシャグの人生を一段上に押し上げるのは常に同性の友人だった。
それがかえって私にとってリアルだった。
もちろん、同性の友人たちと意地悪もしたりされたりもしたと思うが、
恋愛・異性愛が身近でない私のすぐそばまで来てくれ、並走してくれたのはいつも同性の友人たちだったことを、誰とはなしに懐かしく思い出した。
ブラックミュージックのパワフルさ
カッコいい音楽はいつも黒人文化から生まれている。
ルーツに「カッコいい音楽」が組み込まれている人種って心底うらやましいな、と思ったけど、
日本にだって美しい点はあるし、文化としてのユニークさは負けず劣らずだよなとか思った。
最近、「日本文化の独自性・ユニークさ」がバキバキに提示された映画を観たような気がする……と思って思い出してみたら北野武の「首」だった。
この黒人文化を礼賛するカラー・パープルに対抗できる映画があるとすればこれだと思う。
別に対抗する必要はないかもしれないけど
神は見ている、という倫理観
単純にいいなと思った。
神はすべてを見ているので、
悪いことをするべきではない(報いがあるので)。
神はすべてを見ているので、
あきらめず、腐らずに、良い行いをするべきだ。
誰が見ていなくても。必ず報いがあるので。
そして神はすべてを愛をもって見ているから、人は孤独ではないのだと。
今作は根底にそうした宗教観が流れていたと思う。
資本主義に熱中するあまり
気づくと雑になっている「精神的に安定できる考え方」についても思い出すことができて良かった。
まとめ
非の打ちどころのない映画だ。良くも悪くも。
でも、そうやって「芸術通」ぶるのもカッコ悪いよな、と感じさせるくらい、
爽快で元気づけられる作品だった。
長いし重いのでもう一回観たいとは思わないが(笑)
気になってる人には迷わずおすすめできる映画だ。
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