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桜色の鯛

八方へ鱗散らして桜鯛       木内怜子(1935年~)
 季語【桜鯛】- 春
はっぽうへ うろこちらして さくらだい

この句が掲載されている句集「繭」には、作者本人のあとがきによれば、昭和37年から同45年までの作品370句が収められています。
当時、作者は千葉県の小さな港町である木更津に住んでおり、それもあってか海や魚を詠んだ句も比較的多くこの句集の中には出てきます。

この句の季語は「桜鯛」。
春に産卵のために内海に集まって来る真鯛のことです。腹が桜色の婚姻色に染まっており、集まるのがちょうど桜の咲く時期だということから桜鯛といいます。
作者はその桜鯛を祝いの卓の為に下ごしらえしていたのでしょうか。

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「八方」という縁起のよい言葉、その八方へ、桜鯛の鱗が包丁の動きに合わせてまるで花びらを撒いたように散るようす。
飛び散る鱗の勢い、薄紅色の鱗の華やかさ。春のめでたさと勢いを感じる明るい句です。

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