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パイロットが心理テストを受けてみた結果 その2. 情報の使い方 観察(ObServant) v.s. 観念(INtuitive)

個人の性格を5つに分けて示す心理テスト「NERIS Type Explorer®」を受けた結果について、連載しています。→最初から読む

このテストでは、人が世界をどう見ているのかを、5つの座標軸で測定します。

1. 興味の方向(Mind)
外向(Extraverted) - 内向(Introverted)
2. 情報の使い方(Energy)
観察(ObServant) - 観念(INtuitive)
3. 判断の根拠(Nature)
理性(Thinking) - 感性(Feeling)
4. 外界への接し方(Tactics)
決定(Judging) - 未定(Prospecting)
5. ストレスの御し方(Identity)
平静(Assertive) - 多感(Turbulent)

https://www.16personalities.com/articles/our-theory
(日本語は筆者による訳)

そして、私の性格は「INFP-A」でした。

INFP-Aですから、これは「内向・観念・感性・未定 – 平静」ということになります。もちろん、10分で終わるようなWebテストで、私の性格の全てがわかったなんてことにはなりませんが、まぁそれでも一つの指標にはなるでしょう。

前回の記事より

前回は、このうち1. 興味の方向(Mind):内向 (Introverted)について、パイロットへの適性と絡めて考えてみました。今回は、2. 情報の使い方(Energy):観念(INtuitive)についてみていきます。

2. 情報の使い方(Energy):観念(INtuitive)

まず、「仲介者型」なる性格の特徴について、テストをしたウェブにある評価を見てみましょう。

仲介者型気質の人は、真の理想主義者で、極悪人や最悪の出来事の中にさえも、常にわずかな善を見い出し、物事をより良くするための方法を模索しています。

https://www.16personalities.com/ja/

いいんだか悪いんだかよくわかりませんが、言われてみれば、私は失敗した人に同情的になることが多いと感じます。これは、上から目線というわけではなくて、ひとえに、私自身がよくしくじってきたので、失敗した人を見ると他人事に思えないだけです。

パフォーマンスが出ない人に対する態度

パイロットとしては、しくじらないに越したことはありません。しかし、人間ですからうまくいかないこともあります。そういう人を見て、「自分とは関係ないな」とか「こんなに簡単なことに苦労しているなんてかわいそうに」とか「あいつには飛ぶ資格はない」とか、そう簡単に割り切って考えるのは私のスタイルではありません。

教官として働いていたこともあり、苦労している学生を引き上げる必要があったことも大きいでしょう。ある人の結果が振るわないのは、もともとの「性質」としてダメなのではなく、今そういう「状態」にあるに過ぎないと考え、どうしたらそれが直るだろうかと、まずは解決を試みます。

こういうと、「飛ぶ資格がないような人を無理に飛ばせ続けて事故を起こしたらどうする」という意見が出てくることでしょう。確かに、そういう面もあるかもしれません。でも「飛ぶ資格がない」と断じるには、断じる側にもよほどの謙虚さが求められると思うのです。簡単に言っていいことではない。

実際、やってみると単なる「状態」であるに過ぎないことを、自分には素質がないんだと「性質」の問題として考えてしまう結果、実際にパフォーマンスが出ないという例はよくあります。「〜できない人には飛ぶ資格はない」と簡単に断じる人(自分が自分に言う場合も含む)たちが、人のパフォーマンスに与える影響は、無視できないのです。

演繹的かつ帰納的な思考パターン

では、「問題を解決する」ための私の思考パターンを考えてみましょう。

私の思考パターンは、ある理想的な状態が頭の中にあり、それに現実を近づけていくというものです。つまり、もともと思考が演繹的なのです。

何か問題があったら、「真の原因」を突き止めようとします。理想的な状態はどんな状態かと問いを立て、それをゴールとして常に意識して目の前の問題を見るため、しばしば目の前の問題そのものの解決に時間がかかったり、一旦悪化したりします。

例えば、着陸がうまくいかない時、どういう着陸がベストだろうと、まず理想的な状態を考えます。あるいは、理想とまでは言わずとも参考になる「お手本」を見つけてきます。そして、うまくいく状態とそうでない状態の「差異」を要素ごとに分解、言語化し、頭の中でスッキリさせてから練習に臨みます。下の記事を見てもらえれば、一目瞭然です。

一方で、状況をよく観察するので、 観念(INtuitive)とは反対の性質である 観察(ObServant) に見えるかもしれません。実際に、今回心理テストの結果も、観念が51%で、観察は49%とほぼ拮抗していました。

つまり、私の問題解決に対する思考パターンは、動機が観念的でありながら、問題解決の手段としては徹底的に分析的であると言えます。

しかし、あくまで動機が観念的であることに注目するならば、問題解決の目的は「目の前の状況をとりあえずよくする」ではなく、「理想的な状態に一歩でも近づける」であると言えるでしょう。

そして、これには弊害もあります。

失敗を引きずりやすい

常に理想の状態を見ているということは、言い方を変えれば現実を直視していないということでもあります。

上で「分析的」という言葉を使いましたが、分析的であることと、観察的であることは必ずしも一致するものではありません。分析するには観察が必要だと考えれば、矛盾しないというだけです。

分析とは、「これはどう言うことか」と観察したことに「意味」を与える作業です。これは、現実をあるがままに受け入れるのではなく、常に自分色に解釈するということですから、そこにはバイアスが入ります。

例えば、試験に落ちたり、訓練がうまくいかないといったときに、放っておくと、頭がその事実に意味をつけようとしてしまうのです。このとき、建設的な意味づけができれば問題はありませんが、間違った思考のクセを持っていると、非常に厄介なことになります。

例えば、過度な一般化(俺がテストの時は決まってしくじる)や、拡大解釈(俺はパイロットには向いていない)、べき思考(絶対にずらしちゃいけないのにずれた)、後悔(あそこであんなことをした俺はバカだ)、先読み(またしくじるに決まっている)など。

一言で言えば、失敗を引きずりやすいのです。

現実を直視する

当たり前ですが、そこにあるのはどこまでも「しくじった」という事実だけであり、それ以上でも以下でもありません。その証拠に、飛行機は常にパイロットの物理的な入力にのみ反応します。パイロットが自分自身のことをどう考えているかは、飛行機のパフォーマンスには関係ありません。

同じように「しくじった」人が2人いたとして、現実を直視して過度な意味づけをしない人(ま、次頑張ればいいか)と、起こったことに意味を与えずにはいられない人(これはどういうことだろう、パイロットに向いていないのだろうか)では、前者の方が次のパフォーマンスが良くなることは明らかです。

後者は、頭の中に「意味」が溢れてしまい、今、ここ、に集中することが難しくなります。ただでさえ容量の小さい意識に、このような妨害が入れば、次のパフォーマンスも知れたものです。結果的に、失敗に失敗を重ねて本当に「パイロットに向いていない」状況をつくってしまいます。

パイロットは安全に飛行機をおろすことが仕事です。そのためにできることはたくさんありますが、一旦上がってしまえば、コントロールできるのは「今、ここ」のコクピットだけであり、それがパイロットのパフォーマンスの全てです。過去や未来の自分のことは全く関係ありません。

自分は、どんなパイロットになりたいのか、その理想的な状態が頭にあることは、パイロットとしての成長や上達にとても役に立ちます。しかし一方で、過度な意味づけや間違った思考パターンにハマると、頭にある理想と、それについてこない現実の乖離に苦しむことになります。ここは、パイロットして気をつけなければいけないところです。

次回は、3. 判断の根拠(Nature)理性(Thinking) - 感性(Feeling)について見ていきましょう。

次回へつづく

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NZ在住のパイロットAshによる飛行士論です。パイロットの就職、海外への転職、訓練のこと、海外エアラインの運航の舞台裏などを、主に個人的な…

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