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父は、脳に散らばった腫瘍の影響により認知症のような症状が現れていました。


人の認識はできているようで、私が病院に行って挨拶するとちゃんと「おはよー」と言います。しかし、モードが変わってしまうと何を話しかけても無反応になります。そして、男性の言うことはきちんと聞きます。主治医、男性看護師が対応すると全然反応が違うのです。


不思議だなーと思いながら毎日父の様子を見ていました。10月位まではポツリと突拍子もないことを話すことが時折あったのですが、徐々に自発語がなくなっていきました。


なるべく声を出してほしくて、たくさん話しかけていました。しかし、あまりしつこくすると露骨に嫌な顔をします。それは元気な頃の父と一緒でした。


基本的にテレビを見ているときは、ニコニコしていて、とても楽しそうでしたがある時期から涙を流すようになりました。時間は大体夕方でした。


ある時期とは、私達家族が夜間の付き添いをやめた後です。その頃から涙を流していたのです。「もしかしたら寂しいのか?」「それとも正気に戻っていて、今の状況に涙しているのか?」「ただ単に目が乾いているのか?」看護師さんとも話しましたが、本当のところは分かりませんでした。


自分では涙を拭くことができないので、毎日母がハンカチで拭っていました。その光景は今もよく覚えています。ずっと泣いているわけではなく、突然脳のスイッチが切り替わったように、コロッと変わりまた元のようにニコニコとテレビを見る父。


半月程すると、涙することも全くなくなったので「あの涙はなんだったんだろうね?」と今でも家族で話をしています。

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