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【エッセイ】「四国なめんなよ~!」って言われた(ような気がした)話


10年以上前、夫婦で小さな車に乗り、四国を一周しました。

目的はやっぱり、

「讃岐うどん、かつおのたたき、鍋焼きラーメンなどの美味しいものをたくさん食べたい!四万十川の清流を一度でいいから見てみたい!自然の中で癒されたい!」


……。

すみません。ちょっと浮かれてましたね。

…だからだったのかも。

そのとき、ちょっとだけ不思議な体験をしたんです。

今回はその話を書こうと思って、古い記録と写真をひっぱり出してきました。


四万十川にかかる沈下橋

四国の印象はとにかく、
「何を食べても美味しい!」
「自然が多くて気持ちがいい!」
と、今でも「もう一度行きたい土地ランキング(自分調べ)」の中で上位なのですが…


山越やまごえ」の讃岐うどん
「橋本食堂」の鍋焼きラーメン
カツオのたたき
祖谷いやそば
ぼうしパン、つばの部分が美味しい!

ああ、今でも食べたくてたまらないものばかり…。
いくらでも旅の話ができそうですが、今回は旅行記ではないので、先を急ぎます。



そんなパーフェクトな四国ですが、ちょっとやっぱり、…なところもあります。
言いにくいのですが…なにかというと…

「山道がこわい。」


四国に行ったことがある他県の方は、ブンブンと首がもげるほどうなずいていると思います。
夫婦で大好きな「水曜どうでしょう」(大泉洋さんの北海道のバラエティ番組)の影響で知ってはいたのだけど…

とにかく細い!そして急!

当然一方通行ではないので、時々来る対向車とすれ違うのですが、この時、どちらかが退避スペースがあるところまでバックしなければならないのです。
これがまたスリル満点!…というより、もはやかなりの恐怖なのです。

何でかというと…

すぐ横が、断崖絶壁だから。


綺麗なんだけど…

しかも
「え?ガードレール…??なんすか、それ?」

っていう感じで、もうそのまま、断崖絶壁です。
右手はそびえたつ崖。左手は転げ落ちそうな斜面…。
走っていると、とにかくそんな道が多いのです。

「やっと二車線の道に出たね~」
とホッとし、食べかけのポテチの袋に手を突っ込むと、それを口に入れるころにはまた一本道に戻ってる…そんな感じです。


そして旅の三日目。
私達は高知県と愛媛県の間にまたがる「四国カルスト」へ行きました。
標高1000~1500メートルで、「天空の道」と呼ばれるくらい美しい、ドライブルートがあります。

四国カルスト

牛が放牧されていて、白い石灰岩がぼこぼこ。普段なかなか目にできない、牧歌的な風景に癒されます。


私たちは、ガイドブックで見た「ペンションもみの木」に行きました。

自家製アイスクリームとチーズケーキ!
びっくりするくらい美味しかった記憶があります。

手作りのチーズケーキは、早くに売り切れてしまうそう。


四国カルストを満喫した私たちは、お店の方に「愛媛の方に下りたいんですけど…」と道を聞きました。
高知県側から登って来たので、その日の宿泊先がある道後温泉まで、山道を下りていく予定でした。
ナビもあったけど、念のため。慎重な性格なので…。
「絶対に暗くなる前には着きたいね」と、早めに出発。

細い細い山道を、下ったり、時には少し登ったり…

「うわ!対向車だ!!」

自分たちが下がるときは、私が窓から顔を出して、崖との距離をダンナに伝えて誘導。

「あと端まで20センチくらいだよ…あ!もっとゆっくり行って…!!」

「え?!10センチ?!」

「違う!20センチ!!」

そんな緊迫したドライブの合間には、もちろん景色を楽しむ瞬間もありました。
「日本昔ばなしみたいだね~」
少しひらけたな、と思ったら現れた、古い集落。
普段身近にないような景色も、旅の醍醐味の一つですよね。


「だいぶ降りてきたね」

そろそろ町が見えてくるかな?

山道を下り…

時には登り…

山道を登り…

………あれ?

「なんかさ、ここ、さっき通った気が…」

「日本昔ばなし」みたいな、集落。
気のせいだよね?似たような集落だよね??

山道を登って…

登って…

……

………!


四国カルスト!!!


この時は、もっと薄暗くなっていた…


私たちは一時間位かけて、また元の場所に戻ってきてしまったのです。

「ペンションもみの木」も、もう閉まってる。

もっと薄暗かった…


辺りは薄暗くなってきていました。

道もちゃんと聞いて、そんなに難しい道でもなく、ナビもしっかり見ながら走ってたのに…間違えたポイントはどうしてもわからず…。

ナビの設定で、私たちの車が動くと、画面上には黄色いTシャツを着た小さなゴリラが、道をトコトコ歩きます。

「ちょっと、どこ歩いてんのよ?!」

って怒っても、のんきにトコトコ、歩きます。時々ナビが現在地を見失うと、ゴリラが空中を飛んでたりしてて、かわいい。

…とか言ってる場合ではありません。暗くなる前に、細い山道は下りたかったのに…。
「リアル日本昔ばなし」みたいに、何かに化かされているような気がして、私たちはちょっと、怖くなってきました。


また一時間走って、もう一度もどってきちゃったらどうしよう…。


でもそれを口にしてしまうと、もっと怖くなるような気がして、私たちはナビのせいにして、もう一度、道をよく確認してから出発しました。

車内では元気よくお喋りしながら、カーステレオに入れてあったマッキーの曲を少し大きめに流して、一緒に歌ったりして、会話の合間を無理やり埋め、暗くなった四国の山道を下りていきました。

「あ…またあの集落…」

本当に合ってるの?この道でいいの??

だいぶ走って、だいぶ不安になってきたころ…


「あっ!!光が見えるよ!」


暗闇の先に、街の明かりが…!!


ようやく愛媛へ!

もうもう、ほんとーーーっに、ホッとしました!

このあと、道後温泉本館に入浴しました

このときほど、街の明かりの有り難みを感じたことはありません!

まだ少しドキドキしながらも、日が暮れた街を散策。

道後温泉駅
足湯
道後温泉「漱石の間」


結局、どこでどう間違えたのかは今でも不明ですが、とにかく無事に到着。

やっぱり、何かに化かされたのでしょうか…。

でも私たちは、遠回りさせられたことで、きっと何かに助けられたのかも…と勝手に思っています。

それとも、

「四国、なめんなよ~」


と、クスクス笑いながら、ちょっといたずらされたのかな…?

高知の「御免ごめん町」行き路面電車


もしかして、謝ってもらえた…?!




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