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掌編「おやすみ、世界」

 日が短くなって、僕の家にも灯りがついた。秋の空は清らかで、美しい。けれど瞬く間に落ちていく。僕は薄暮に包まれる。空に残るのは、明日へと続く雲の階だ。いずれ訪れる闇の中でも寄り添って、慎ましく、朝日を待っている。

 烏が一羽、飛び立った。僕を追い越して、先へ行く。おやすみ。紅がそろそろ山に隠れる。家へと続く石を飛んで、僕は背中に明日を乗せる。

 ただいま。

 そして、言う。おやすみ、世界。

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