見出し画像

「食の風景・牡蠣のみぞれ汁」

 冬の風物詩、海のもたらす美味しい食材、牡蠣です。牡蠣フライ、牡蠣御飯、酢牡蠣。献立全部が牡蠣でも良い位、冬にはどうしても食べたい食材です。何年か前に、殻付きの牡蠣を頂いた事がありました。テレビでそれは見事な手捌きで牡蠣の身を次々外していくのを見た事が在りますが、自分でやるのはその時が初めてです。全部で二十個以上あったと思いますが、初めの内は全く歯が立ちませんでした。そもそも家にあのいかつい殻をさくっと開ける道具がありません。何を使ってどう開けようか、テレビの記憶を思い起こしてここを割ってこの辺りをえいとやって殻から身をすいと放すイメージで・・・と台所の流しで格闘していると、経験者の父がやって来ました。

 ペンチでここを割って、この辺りに貝柱があるから、そこをこいつで(これが台所の道具だったかマイナスドライバーだったか忘れてしまいました。何か先の平たい牡蠣の身を傷付けない道具です)切り放すと、と云いながら一つやって見せますと、あんなにきつく口閉じていた牡蠣の殻が観念したと言わんばかり大人しくぱかーんと口を開けたのです。貝柱の外れた牡蠣はするりと手元へ。後は自分が。私は身を駄目にしないよう気を付けながら、黙々と牡蠣と向き合いました。大変な作業でしたが、終盤は工場で働けそうな腕前になっていました。あの日の牡蠣は大粒で、とても美味しかったです。因みにあれ以来牡蠣の殻剥きはやっていないので、工場勤務は出来ないと思います。そして今日のはスーパーでパックに詰められたものを買い求めました。

 今晩は葱と白菜、大根、椎茸に、サラダ用に茹でたブロッコリーの芯の方を輪切りにしてお汁へ。其処に牡蠣と大根おろし、仕上げに千切り柚子を乗せて頂きました。ぽん酢と七味も相性抜群です。

 向かいで家族が同じように写真を撮っていました。そちらの器は牡丹でした。私の方は紅葉。やらかしました。折角冬の食卓なのに、秋がちらり。けれどもみぞれ汁のお味は至福でした。汁物は何を入れても良いですし、食欲の無い時でも、消化も良く、栄養満点で私たちを助けてくれます。寒い時期には体も温まって重宝します。旬の味覚、食卓には外せないですね。

お読み頂きありがとうございます。「あなたに届け物語」お楽しみ頂けたなら幸いにございます。