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検討重ねた、というより実情は十勝の言い分に従って、理事会はいちごうの新弟子検査受験を特…
「兄さんは強いです。場所中も毎朝必ずしっかり汗をかいてから国技館に入るじゃないですか。自…
この名古屋場所で一つ上へ上がる事だけを考え、強い決意で一日一番に臨んでいった。場所が始…
基源は負けを引き摺らなかった。昨日の黒星を感じさせない程元気の良い相撲を取って十勝目を…
翌九月場所を前に、七月場所での活躍と成績が認められて、基源は遂に新入幕が決まった。基源…
「おいおい無視かよ」 「ははっ、お前にビビったんじゃね?怖がらしちゃ駄目じゃん」 「ばっか…
九章 「再生」 基源に暴行疑惑ありとして相撲協会へ匿名でタレコミがあったのは翌日のことで、情報化社会の凄まじさが端的に表れた形だ。垣内部屋で親方に事情を聞かれて、基源はありのままを落ち着いて答えた。親方の後ろにはおかみさんも控えていた。いつも明るく気丈なおかみさんの顔が、事態の行く末を案じるように心細げに曇っているのが、基源の目に痛く刺さった。 街中で見知らぬ男たちに言いがかりをつけられたこと。言葉で説明しようとしたこと。それを奏に止められた事。それで奏
二人は相談の末、本来ならば部屋預かりで垣内部屋へ留まらせて自分たちの責任でもって基…
基源は傍らにあるスコップを手にすると、おじいの居る畝とは別の畝で収穫を始めた。腰を落と…
基源は是非とも何か言わなければならなかった。出来れば温かみのある、礼を尽くした言葉を披…
「今日は理事としてではなく、一個人のつもりで伺いました」 但し、後で問題などと叱責され…
基源はかつて抱いた事の無い感情に胸を埋め尽くされていた。声を掛けたいと思うのに、口を動…
十章 「揺れる国技館」 二十八年七月場所、基源が土俵へ帰って来た。幕下からの…
土俵上での凛々しい姿と、普段のにこやかな笑みを絶やさない優しい姿に、周囲の評価は段々と好意的なものが占めるようになっていった。 「同じなんじゃないか。人も彼も」 「寧ろ人間よりピュアだ」 「かわいい。応援したい」 「横綱になった姿見てみたい」 基源の活躍を期待する声は、ネット上でも広がっていた。 「革命が起きてる」 「俺たちはもしかして凄い時代に生きてるのでは」 「最近は大相撲中継で基源の活躍を見守るのが一番の生き甲斐になってる」 世間がどれだけ騒がしくな