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垣内部屋には早朝から活気があった。一月場所を終え厳しい寒さの募る二月を迎えている。ウォ…
この名古屋場所で一つ上へ上がる事だけを考え、強い決意で一日一番に臨んでいった。場所が始…
基源は負けを引き摺らなかった。昨日の黒星を感じさせない程元気の良い相撲を取って十勝目を…
翌九月場所を前に、七月場所での活躍と成績が認められて、基源は遂に新入幕が決まった。基源…
「おいおい無視かよ」 「ははっ、お前にビビったんじゃね?怖がらしちゃ駄目じゃん」 「ばっか…
九章 「再生」 基源に暴行疑惑ありとして相撲協会へ匿名でタレコミがあったのは…
二人は相談の末、本来ならば部屋預かりで垣内部屋へ留まらせて自分たちの責任でもって基源の謹慎期間を支えるべきであると、重々承知の上で、人を頼る事に決めた。入門以来寝食を共にしながら暮らしているからこそ、平時は根本を忘れて同じ人間同士と思いがちだが、基源の中身には別の基盤があって、人と完全に一致する進化と成長を続けているわけではない。人工知能の管理にせよ、メンテナンスにせよ、凡そ自分たち素人に理解できない高度な技術と知識が必要なのだといよいよ思い知った。だから尚更基源に相
基源は傍らにあるスコップを手にすると、おじいの居る畝とは別の畝で収穫を始めた。腰を落と…
昼前になって二台の車が敷地内へ入って来る気配があった。基源が玄関を出ていくと、奏が丁度…
基源は是非とも何か言わなければならなかった。出来れば温かみのある、礼を尽くした言葉を披…
「今日は理事としてではなく、一個人のつもりで伺いました」 但し、後で問題などと叱責され…
基源はかつて抱いた事の無い感情に胸を埋め尽くされていた。声を掛けたいと思うのに、口を動…
十章 「揺れる国技館」 二十八年七月場所、基源が土俵へ帰って来た。幕下からの…
土俵上での凛々しい姿と、普段のにこやかな笑みを絶やさない優しい姿に、周囲の評価は段々と好意的なものが占めるようになっていった。 「同じなんじゃないか。人も彼も」 「寧ろ人間よりピュアだ」 「かわいい。応援したい」 「横綱になった姿見てみたい」 基源の活躍を期待する声は、ネット上でも広がっていた。 「革命が起きてる」 「俺たちはもしかして凄い時代に生きてるのでは」 「最近は大相撲中継で基源の活躍を見守るのが一番の生き甲斐になってる」 世間がどれだけ騒がしくな