噂のブランコ

夕日で影が伸びる放課後に
学校の裏口からまっすぐ100歩 
突き当たった駄菓子屋の横のでこぼこ道を56歩
角曲がって手を叩き 右の神社の入り口から80歩 
スキップしながら斜めの下り坂を30歩 進んで曲がると
小道の真ん中に ブランコが『出現』するから
それに乗って精一杯こぐ
一回転できたら 不思議な世界にいける
一回転できたら ここじゃない世界にいける

そんな噂があった
親友と私は男子たちに紛れて 噂のブランコを探しに行ったけど
誰もブランコを『出現』させることはできなかった
だから代わりに 公園のブランコで一回転に挑戦してた
もちろん一回転なんて全然出来なくて
でも私は 親友と隣通しで乗るブランコが大好きだった
ここじゃない世界なんて望んでなかった


あっと言う間に時間は流れ 私は親友と疎遠になっていた
会社の同僚と飲んだ帰り、酔いを覚まそうと寄った公園で親友と再会した
スーツの彼女はブランコに揺られていた

かつてのように隣通し 二人でブランコをこいだ
色々な話をした
でもその全てがかつてと違っていた
彼女は「ここじゃない世界に行きたいんだよね」と言った
私は彼女の顔を見られなかった
ブランコは決して交わることなく 私達はそれぞれの前を見つめていた
その後 彼女と連絡が取れなくなった

夕日で影が伸びる放課後に
学校の裏口からまっすぐ100歩
まだ大人になりきれない私は 噂のブランコを探して旅に出た

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