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大人になって観たハリポタ。完璧なヒーローなどいない、人間の善悪の曖昧さ。

自然体な生き方を考えるメディア『ソラミド』の編集部がお送りするnote。編集部員が考えたこと、感じていることを自由に書き記します。今回は編集部の貝津が担当。肩の力を抜いて、ゆるりとお読みください。

(※ハリーポッターシリーズの物語について深く触れている内容なため、まだ作品の結末や背景について情報を得るのは控えたいという方はご注意ください。)

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最近Netflixでハリーポッターシリーズが全話公開されているのを知り、これは...っ!と、興奮気味に1作目から一気に見てしまった。小学生の頃から幾度となく見ている映画で、もちろんストーリーも結末も知っている。

けれど、ひとたびキングスクロス駅の9と4分の3番線をするりとくぐり抜け、ホグワーツ魔法魔術学校の大広間でダンブルドア校長の存在感に目を奪われながら、ハリーたちが規則を破るのをハラハラしながら、クディッチの勝負の行方を固唾を飲んで見守っているうち、自分もホグワーツの生徒になったかのようにすっかり魔法界に引き込まれてしまう(本当に入学したい、と何度思ったことか...)。

とりわけハリーポッターシリーズを心底好きになったのは、高校生の頃。最終話のハリー・ポッターと死の秘宝 PART2を観終え、すべての伏線回収を目の当たりにしたことがきっかけだ。特に、スネイプ先生の正体には腰を抜かし、涙した。

ハリーに陰険な態度で接していたスネイプ先生は、実はハリーの母・幼馴染のリリーを生涯を通じて愛しており、同じ目を持つハリーを命がけで守っていたのだ。

それは決して簡単なことではなく、ダンブルドア率いる不死鳥の騎士団、ヴォルデモート卿ならびに死喰い人、この敵対する両陣営の二重スパイとして完璧に任務を遂行することが求められた。

スネイプは、ハリーの父・ジェームズ・ポッターとは犬猿の仲だったため、父に見た目がそっくりなハリーに嫌悪感を抱いていたのも事実。嫌がらせや嫌味ったらしい言動も、きっと本音なのだろう。

けれど、リリーへの愛は永遠に変わらない。だからハリーを命がけで守りたい。彼の抱える孤独と愛情深さに思いを馳せると、切なさと愛おしさに襲われ胸が締めつけられた。

すべての真実を知ったハリーは、シリーズ最後の場面で、スネイプ先生のことを、息子・アルバス・セブルス・ポッターにこう伝える。

「たぶんその人は、私が知る中で最も勇敢な人だ」

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そして大人になったいま、改めてハリーポッターシリーズを観ると「完璧な人間などいない」「善悪は簡単に区別できない」と強く感じる。決して、セブルスだけが例外ではなかったのだ。

例えば、アルバス・ダンブルドア。シリーズ1作目の賢者の石では、ホグワーツの校長を務める完璧で非の打ち所のない偉大なる魔法使いに見えた。幼いハリーの目にもそう映っただろう。

でも実際は長い人生のなかで暗く悲しい過去を持ち合わせており、多くの魔法使いから愛されているとはいえ、シリーズを重ねるにつれ、悩んだり苦しんだり判断を誤る場面を幾度となく目にしてきた。

そして無敵だと思っていたダンブルドアは、ハリーとヴォルデモート卿の決着を見届ける前に命を落としてしまう。(この死の選択にも、愛や思いやりが溢れていて最終話を見た後に振り返ると感慨深い...)

それからハリーの父・ジェームズ・ポッター。シリーズ前半では、ハリーが抱く理想の父親像そのままをイメージしていた。けれど実際は、ホグワーツ在学中に同じく学生だったスネイプをいじめていた過去があり、こちらも別の意味で驚いた。

完璧な父だと思っていたジェームズの意外な姿に、ハリーも言葉を失い唖然とする。不当に相手を攻撃するというハリーが幼い頃から他者にされて傷ついてきたことを、父自身が行っていたのだ。

とはいえ、もちろんジェームズにも心優しく勇敢な側面も持ち合わせている。親友・シリウス・ブラックが家出をして路頭に迷っているところを、快く自宅に招いたり。同じく親友のリーマス・ルーピンが狼男だと知ると、彼が満月の夜に狼になっても行動を共にできるよう動物に変身できる高度な能力「動物もどき」を3年かけて習得したというエピソードもある。そして何より、不死鳥の騎士団の一員としてリリーの夫・ハリーの父として勇敢にヴォルデモート卿と戦った。

ハリーを敵対視していたドラコ・マルフォイも、シリーズを通じて嫌味なやつだなと思っていたけれど、実は繊細で臆病な性格だった。両親の影響を受けヴォルデモート卿に従事する死喰い人としての立場を振る舞うも、これは本人の意志ではない。

実はことり1匹の死をも泣いて悲しみ、人を殺すことなど到底できない。死に対して誰よりも怯える弱さと繊細さも垣間見えた。

完璧だと思ったいたヒーローにも、間違いや過ちがあり、暗い過去がある。
悪者と決めつけていた人にも、他者を静かに見守る愛情深い一面がある。
本人の意志とは関係なく、悪に染まっていく悲劇がある。

人間味溢れる不完全なヒーローたちが紡ぐストーリーに心打たれる作品だ。

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ハリーの名付け親として実の子どものように可愛がってくれたシリウス・ブラックが、自分を見失いかけ焦るハリーに伝えた言葉がある。

シリーズを通してすべての真理を物語っているようで痺れたので最後に置いておきたい。

ハリー「僕とヴォルデモートにできた絆によって、僕はヴォルデモートみたいになってしまうんじゃないだろうか?いつも怒りを感じてる。いろいろあったことで、僕の中の何かが悪い方に向かってるんじゃないだろうか?悪人になってしまうんじゃないだろうか?」

シリウス「君は悪人なんかじゃない。いい人間だ。悪いことが起きているだけで。わかるね?世の中は、善人と死喰い人だけじゃない。誰しも心のなかに「光と影」の両方の面を持っている。大事なのはどちらの道を選ぶかだ。人間はそこで決まる」

(執筆:貝津美里)

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