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「暇だから人は悩む」「プライドへの固執は健康を害するだけ」70年の時を超えたお説教は”耳に効く”

あんまり、怒られなくなった。

いいことではない。由々しき事態だ。
年を重ねていくと、どうしたって「フィードバックをもらえる機会」が減っていく。自身の改善が本当に進んでいるのならいいけれど、何歳になっても新しいチャレンジは続くし、世の中だってどんどん変わる。
いまだって、新人の頃と変わらないくらい物申されていいはずなのだ。

     このように開き直るのはやっぱりまだよくないと思う

最近、会社でPeerReviewという制度が始まった。部署を超え一緒に働いている同僚同士でフィードバックをするというもの。
数ヶ月前私も仕事仲間にPeerReviewをお願いし、ありがたい言葉をたくさんいただいた。異なる目線から自分の仕事を見てもらえた評価は新鮮だし、省みる点が増えるのはすごくいい。
とはいえ、他人へのフィードバックにはたくさんの時間とエネルギーを要する。とってもとっても大変な仕事だ。忙しい合間を縫って対応してくださった同僚さんには深い感謝しかない。それくらい、易易と手に入れられるものじゃない。

30歳。社会人8年目。
「いずれ怒られなくなるから、その頃が最も正念場かもね」と、新人の頃にかけられた言葉がいよいよ現実味を帯びてきたな……と胸がざわざわしていた中、5月のセールで購入したこのオーディオブックが、とーーーっても耳に効いた。

自己啓発・成功哲学の父とも言われるデール・カーネギーの名著。カーネギーの周辺の人物や歴史上の偉人のエピソードを題材に「生きる上でぶち当たる悩み」について客観的に分析し、それらを乗り越える具体的な策の数々をまとめた本だ。「悩みとは何か、そしてどう立ち向かうべきか」ということに少しでも引っかかりを覚えた方にはぜひオススメしたい。

この本は第一章から痛快だ。不確実な未来のことで不安になる前に、目の前のタスクを処理しろ、今日という一日を生き抜くことだけに焦点を定めろ、などなど。「悩んでいるのは暇だから」という真理情報を、始まってすぐにビシッと突きつけてくる。

これを購入した5月の頭、わたしはまさに上の状態で、どうしようもないモヤモヤで頭をいっぱいにしていた。
がしかし結局の所、著者からみればぐるぐると考え込む振りをして、課題の整理も何もせず、ただただ暇を持て余していただけなのだ。

猛省しかない。

本の中には不安症で健康を害してしまった人のエピソードも複数出てくる。医療技術の進歩で、人類は数多の病気を乗り越えてきたが、人の心が関わる病については「治療」という意味では、まだまだ解明されていない点ばかりだ。だからこそ著者は、メンタルヘルスを崩す認知や思考パターンに対し、本全体で持って警鐘を鳴らしてくる。
思い悩み不安を募らせるという行為は、健康をおざなりにしているのと同義。たとえ他人から理不尽な目に遭い、怒りや復讐心がもくもくと立ち込めても、自分の健康を考えたら、さっさと手放す方が幸福だ。などなど。

正論すぎてぐうの音も出ない。

それから、特にわたしが好きなところは「祈り」の下りだ。不安なときには「祈る」行為が精神を安らかにしてくれる、という話なんだけど、面白いのは著者が「お前に信仰がなくてもとりあえず祈れ」と提案してくるところ。
これは非常に理にかなっていて、「神様に自分の願いを伝えるとき、まさか『とにかく助けてくれ』などふわっとしたまま祈らないだろう。真剣に祈れば祈るほど、願いは言語化され、自分の抱えている課題がクリアになる。だから祈れ」というもの。
信仰の有無に関わらず、祈りというプロセスは思考整理の役に立つ。
思わず膝を打った。

そんな感じでこのオーディオブックは、意味もなく負の感情に苛まれていた私に対し、ひたすら温かく優しく、そしてキレよくお説教をしてくれた。
まるで70年前からデール・カーネギーさんがタイムスリップしてきて、目の前で語ってくれているみたいに。


「歴史上の偉人から怒られる」という疑似体験ができる(かもしれない?)名著オーディオブック。結構耳に効きますよ。
ちなみに2倍速で聴くとお説教感が増すとか増さないとか。

ではまた◎

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