植物肉は世界を変えるかもしれない 【植物肉クッキングイベントレポート】
最近話題の植物肉。食べたことがあるのは日清カップヌードルの「謎肉」くらいでした。
植物で作られたお肉はおいしいの?
接着に添加物を使っているの?
お肉があるのになぜ植物肉なの?
たくさんの疑問を抱え、日経新聞さんの植物肉講義・体験イベントに参加させていただきました。
植物肉の歴史
三井物産食料本部の赤尾さんが、植物肉について講義してくださいました。
2009年 ビヨンド・ミート(米)設立
2011年 インポッシブル・フーズ(米)設立
2017年 日清カップヌードル「謎肉」
原材料は大豆と豚肉、日清食品が
初公表
2018年 日本の市場に出回り始める
2020年 オリンピック開催による訪日客増加
を目前に各食品メーカーでの製品開発
が進んでいる(日本ハム等)
2023年 市場は約7,000憶円に達する見込み
2040年 市場は成長、50兆円規模が見込まれる
海外では早くから注目されており、オリンピックを控え日本でも広がりを見せているそうです。
本日の植物肉は、イスラエルの企業が開発した日本未発売の植物肉「RILBITE(リルバイト)」。原材料は、玉ねぎ・トマト・大豆・米・レンズ豆・天然スパイスのシンプルな6種類。添加物は使用しておらず、接着方法は企業秘密。独自の「混ぜる」技術が鍵のようです。
パティの形で冷凍された植物肉は、お肉にとてもよく似ています。
なぜ今植物肉なのか
植物肉が必要とされている背景には3つの理由があるそうです。
1.環境面
・食料資源枯渇への対応策
・環境負荷の小さな食品への関心
2050年に世界の人口は約2倍になり、たんぱく質の供給量が不足することが予想されているそうです。食肉は簡単に増やすことができません。土地や設備、飼料、人手、そして家畜が成長するためには時間が必要です。植物肉はお肉より短期間で作ることができます。
また、国連食糧農業機関(FAO)は、畜産は地球温暖化や大気・水質汚染など、世界的な環境問題の原因になっていると指摘しています。
・牧場を作るときに多くの森林を伐採
・牛1頭あたり1年に1万1000ガロン(約4万1700リットル)もの水を消費
・牛のげっぷや家畜の排せつ物から出るメタンガスは、同量の二酸化炭素(CO2)の25倍も地球の温暖化を進める
・人為的に排出される温暖化ガスの14.5%は畜産業に由来する
(参考:日経スタイルhttps://style.nikkei.com/article/DGXMZO51847790W9A101C1000000/他)
サスティナビリティの観点から、環境負荷の少ない植物肉への注目が高まっています。
2.健康面
・世界的な健康指向の高まり
・ベジタリアン・フレキシタリアンの増加
100gの牛肉、冷凍ハンバーグ、植物肉RILBITEの栄養素を比較した表です。(参考:講義より)
ピンクは多い、ブルーは少ないことを示しています。植物肉RILBITEは、低エネルギー・高たんぱく・低脂質・高食物繊維ということがわかります。炭水化物が高いのは、米や豆類が入っているためだと思われます。
下の表は、一日の推定平均必要量または食事摂取基準/日です。(参考:厚生労働省資料。脂質、炭水化物は%エネルギーから算出)
30歳の男性では、植物肉RILBITE100gで一日に必要なたんぱく質の約40%を摂取できることになります。脂質はほぼゼロですが、炭水化物(糖質)は17.1g含まれます。白米茶碗1杯(150g)の糖質は約55gなので、およそ1/3の量です。
ここでちょっとだけ真面目なお話を。
近年、糖質制限のためにお肉やプロテインをたくさん摂取することが流行っていますが、食肉の過剰摂取は大腸がんや糖尿病のリスクを上げることが研究から指摘されています。
大腸がんの発生は、生活習慣(運動不足、野菜果物の摂取不足、肥満)、赤肉や加工肉の摂取、飲酒、喫煙と関係があると言われています。
野菜・穀類・植物肉に含まれる食物繊維は、血液中の不要物を吸着して体外に排出するお仕事をしてくれます。食物繊維を摂取できる植物肉は、牛肉より大腸がんのリスクは低いと言えるかもしれません。
ですが、「お肉を全て植物肉に変えればよいか」と考えると疑問です。味や食感は異なりますし、アレルギーの心配もあります(知人のご家族がプロテインでアレルギーをおこしたという話を聞きました。)。
選択肢の一つ、としてバランスの良い食事をするのが安全だと思います。
3.倫理面
・動物愛護の観点
お肉を食べられるようにするためには「と殺」を行います。なるべく動物たちが苦しくないように考えられていますが、完璧ではありません。
それなら肉を食べなければいい?
では、今いる家畜たちや食肉産業に携わる人たちはどうなるのでしょうか?
倫理面はとても難しい問題だと感じています。
私たちはいろいろな生き物の命をいただいて生きています。感謝の気持ちは忘れないようにしたいです。
植物肉クッキング、その味
つづいてCOMEMOキーオピニオンリーダーの渥美まいこさんのレシピで、スパイシースープと春巻きを作りました。
植物肉と豚ひき肉を使い、同様の調理法で比較します。
植物肉を手で解しているところ。
ほろほろと簡単にくずれます。
スパイシースープ。
白い器が植物肉、黒い器が豚ひき肉です。豚ひき肉のスープは脂が浮いています。
春巻き。
左は植物肉、右は豚ひき肉。揚げ色以外はあまり違いを感じません。
植物肉RILBITEの素焼き。
できたてのお料理と初めての植物肉について、たくさんの感想をシェアしました。
みなさんからは「おいしい」「ミートソースなど味が濃い料理に向いているのではないか」「食感が独特」「おなかにたまる」という声があがっていました。
私の感想は、
・想像していたよりおいしい
・柔らかい
・塊で食べると大豆感がある
・ひき肉状にほぐすと、調理法によっては見分けがつかないかもしれない
・冷めると水分が少なく感じる
などなど…。
特徴を活用できそう、と考えたのは高齢者むけのお食事です。
・調理が難しくない、汚れものもあまり出ない
・お箸で簡単にほぐれる柔らかさ、咀嚼しづらい方でも食べやすそう
・脂質がほとんどないため、脂っぽいものが食べられない方のたんぱく質摂取に向いているかもしれない
独特なスパイスの香りや味付けを調整することができたら、さらに需要が拡大すると感じました。個人的に和食を作ってみたいです。
よろしければtwitterで参加者の皆さんが発信されていた「#植物肉クッキング」もご覧になってみてください。
日経スタッフ渡部さんの記事もぜひ。
デジタルネイティブと植物肉ネイティブ
幾度ものイノベーションを繰り返しながら人間の環境は進化してきました。現代に生まれ、デジタル環境を当たり前に受け入れている子供たちのように、植物肉もこれからの人たちには自然に溶け込んでゆくのでしょう。
今朝、スターバックスが朝食メニューに代替肉検討という記事が出ていました。
おいしい植物肉が当たり前になるのは、そう遠い未来のことではないのかもしれません。
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