AI革命は大量失業に繋がるとは限らない
生成AIの登場によって広範囲の職業分野で雇用の喪失が予測されています。果たしてその予測は正しいのでしょうか。新しい技術の登場は、雇用にどのような影響を与えるのか。歴史の観点から考察したいと思います。
新しい技術は雇用を生む
歴史を見ると、新しい技術の登場は、雇用の喪失をもたらすというより、むしろ雇用を生む傾向にあります。1750年代にまで遡るドイツ銀行の調査によると、失業率は技術革新の導入ではなく、景気循環に連動することが分かっています。また、世界経済フォーラムの調査では、人工知能によって雇用が失われるよりも、自社部門の雇用が増加すると予想している企業の方が多いことが分かっています。特に、AIと機械学習、サイバーセキュリティは、明らかに雇用が拡大する分野と言われています。下記の図が示すとおり、過去3回の産業革命では、失業率は現状維持または低下しているという結果が出ています。
人類の能力を過小評価してはいけない
幸か不幸か、人類は新しい仕事を生み出し、自身を忙しくする能力に長けています。IT革命は既に30年を迎えていますが、失業率は依存として歴史的に低い水準にあります。
仕事の種類が変わる
技術の発展に伴い、今後は世の中にある仕事の種類が大きく変わることが予想されています。AIの登場は、その変化のスピードを加速させています。マッキンゼー社では、2030年までに1200万人の職種転換が発生すると予測しています。それでは、今後増加が期待される職業分野はどこなのでしょうか。
データに基づく未来予測
イングランドとウェールズのデータによると、2015年から2021年の6年間で最も雇用が創出された分野は、ヘルスケア業界であることが分かっています。人口の高齢化により、病院、介護施設、その他の医療関連職種の仕事が最も急速に成長したことが分かっています。この高齢化という人口動態の傾向は今後も続くことが予測されています。米国労働統計局は、2032年までに予測される雇用増加全体の約45%を医療と社会扶助が占めると予想しています。
雇用増加が期待されるその他の業界
エンターテインメント需要の増加により、飲食業界の雇用は今後も成長すると予想されています。また、購買方法の変化、つまり、オンラインショッピングの拡大は、小売店における雇用の縮小を招く一方、倉庫業や運輸業の雇用創出に繋がります。
次の10年に雇用創出を牽引する分野
次の10年に雇用創出を牽引する分野はAIだけではありません。ビッグデータ解析や環境テクノロジー、バイオテクノロジー分野における技術革新が雇用拡大をもたらすと、世界経済フォーラムは予測しています。
個人・労働者への示唆
これから仕事探しを始める人は、雇用の拡大が期待されるコンピューターやヘルスケア、クリーンエネルギーを選択肢の一つとして検討してみるのも良いかもしれません。
仕事はなくならない
記事を読んでいて思ったのですが、我々人類が仕事から解放されることはないのかもしれません。技術の発展により、物質的に豊かになったり、生活が楽になることは多分にあると思います。しかし、仕事から解放される日がやってくることはないのかもしれません。それは、我々人類が本質的に仕事を求めているからなのかもしれません。これまで話したとおり、仕事から解放される日は訪れないと思いますが、経済的な理由でやりたくない仕事をしなければならないということはなくなるかもしれません。
参考文献
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