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ミッドサマー ディレクターズカット版

あらすじ:妹の無理心中により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。

以前、『ミッドサマー』の映画レビューを更新したが、本日 U-NEXTにてディレクターズカット版を鑑賞しました。

ディレクターズ版と通常版の違いは登場人物の心情を丁寧に描かれている点である。特にダニーと彼氏であるクリスチャンの関係性がわかりやすく描かれている。ダニーの妹は双極性障害を患っていたが、似たような障害をダニーももっており、彼女の直情的な性格に振り回されているクリスチャンは辟易している。そして、クリスチャンの友人たちも同じ気持ちであり、早く別れた方が良いとアドバイスしている。そんな関係性を踏まえてこの映画を観ると、通常版では見えなかった視点が現れる。

又、アリ・アスター監督はインタビューで「究極的には、これらの映画を表現的な人物スタディと捉えています。例えば『ミッドサマー』は他の何よりも、恋人との別れを描いたブレイクアップムービーとして見ています。別れというものは、実際に経験している最中は、悲惨で壊滅的な気持ちになります。まさに”死”が起きているような。周りの知人から見れば大したことでもなく、気を取り直して次へ進めばいいだけのことなのでしょうが、私は、自分が感じた別れのインパクトに合ったスケールの映画を作りたく思いました。そのため本作は大惨事の失恋映画となりましたし、それは”中身”に合わせて”外身”が出来上がったから。ダニーというキャラクターが経験している激的な大変動に、映画の方が合わせたわけです。」と述べている。そのため、今作品は伝承や儀式、宗教といったものの演出が大変素晴らしいのだが、監督の失恋した想いがダニーに投影されているため、「性や人間の解放」のスケールが小さくなってしまっているのが残念である。ディレクターズカット版を観ても、通常版と同じやるせない気持ちは変わらずであった。


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