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バビロン

あらすじ:1920年代ハリウッドは、コンプライアンスとは無縁の黄金期。サイレント映画の大スター、ジャックは毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティーの主役だ。会場では大スターを夢見る新人女優ネリーと、映画制作を夢見る青年マニーが運命的な出会いを果たし、心を通わせる。恐れ知らずで奔放なネリーは、特別な輝きで周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていく。マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。しかし、サイレントからトーキーへと移り変わる激動の時代、映画界の革命は大きな波となり、それぞれの運命をのみこんでいく。

サイレント時代のハリウッドの狂乱を回顧した本がケネス・アンガー著『ハリウッド・バビロン』がある。それはハリウッドを、道徳の乱れた罪深き都、と聖書に書かれた古代バビロンに例えた。今作品のタイトルはそれに由来している。オープニングのパーティで繰り広げられる酒池肉林は、まるでギリシャ神話の神々の祭典のよう。このド派手なパーティーシーンが30分、その時代の人々の熱き息吹が伝わる素晴らしいシーンである。特にマーゴット・ロビーのほとばしる魅力に圧倒させられる。

サイレント映画はヘイズ・コードがないのでセックスや暴力描写が野放しだったが、トーキー映画になるとヘイズ・コードという倫理規制で映画における性的な表現を自主的に取り締まる。そして、トーキー映画によって無声から発声映画へ商業化され、時代の流れにのれない役者はハリウッドを去ってゆく。ディミアン・チャゼル監督は当時のハリウッドを時代考証し、丁寧に描いているので映画の歴史を知ることができる。この激動の時代を生きた、ジャック、ネリー、マニー、それぞれの行き着く結末をみとどけてほしい。

又、ラストシーンは「映画」への監督のラブレターである。今作品は映画の歴史を知ることができ、映画への尊敬と愛が溢れた傑作であった。


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