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ミッドサマー

あらすじ:妹の無理心中により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。

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今作品は、グリム童話の世界観だ。グリム童話とは、キリスト教が広まる以前の神話・伝承にまで遡り、民衆の習俗や信仰、夢や恐怖に迫る作品ばかり。

「ミッドサマー」はエデンの園のような美しい村で起こる阿鼻叫喚血みどろな世界である。崖から落ちて頭がビシャっと割れたり、顔の皮が剥がれたりと残酷な描写のオンパレードだったとしても全て美しく見えてしまう。

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そして、衣装や建物の内部に描かれている画など凝っていて大変美しいのでアートを観ているような不思議な感覚に陥る。

スウェーデンのプロデューサーから、夏至祭(ミッドサマー)で若い男女が殺されるホラー映画を作って欲しいと打診されたというアスター監督は「実は当初、あまり企画に乗り気ではありませんでした。テーマに既視感があり、魅力的ではなかったからです。しかし、同じタイミングで私が失恋をしていて、打診されたテーマに実体験を反映した、失恋物語が作れるのではないかと閃きました」と振り返っている。その為、今作品の村で起こる「性や人間の解放」のスケールが小さくなってしまっているのが残念であった。

アリ・アスター監督は、今村昌平監督の「神々の深き欲望」が参考になったと述べている。「神々の深き欲望」のテーマは「日本文化や風習」「性や人間の解放」なのだが「ミッドサマー」と違ってとことん追求しているので大変驚かされる名作だ。

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そして、「神々の深き欲望」出演している嵐寛寿郎がこの作品の撮影の過酷さを吐露している。今村監督が本作とは別に撮っていた映画『東シナ海』のロケで沖縄にいた嵐寛寿郎は「たったの1時間で石垣島までいける、もう1本撮りましょうや」と監督の今村に口説かれて首を縦に振ったところ、「1時間やったら、ギャラかせいでもええなあ。これが間ちがいのもとや、何が1時間ですか、南大東島まで持っていかれた。誘拐ですわゆうたら、1時間のはずが3カ月、半年、1年ちかく撮影かかりました。もうむちゃくちゃダ、暑いの何のムシ風呂でおます南大東島」と語り、撮影に入る経緯を語っている。また、「おまけに今村昌平、自分ばかり女抱いとる。あの沖山秀子。これが頭おかしゅうなった、ビルから跳びましたやろ。7階も上から。ほてから生命たすかった、バケモノや」「男優かて三國連太郎、破傷風にかかって、足1本なくすところでおましたんやで。それでも、まだこりずに、ゼニもらわんと、自費でやってきよりますのや。変なのばっかり。沖山秀子、監督と毎日オメコしとる、かくし立てしまへん」等といった告白している。そんな異常な空間で作られたからか「神々の深き欲望」のスケールはデカいのなんの。後世に残る作品となっている。

「ミッドサマー」は上映時間170分、未公開シーン追加+ぼかし無しのディレクターズ・カット版があるそうだ。

レイティングもR15からR18+へと引き上げられているディレクターズ・カット版はどんな仕上がりになっているか大変気になるが、2月28日時点でTOHOシネマズ六本木でのチケットは売り切れ💦残念無念である。


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