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ちいさな独裁者

1945年にヴィリー・へロルトが引き起こした実際の事件を元にした作品。ヴィリー・へロルトは、当時19歳の青年であった。

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一兵卒でありながら将校の身分を詐称し、多数の敗残兵を指揮下に収め、彼らと共に収容所を不当に支配して囚人の大虐殺を行った。逮捕後のへロルトの証言のみの情報となるが、脱走兵として逃げている最中に側溝に落ちていた軍用車にあった大量の荷物の中の箱を一つ開けてみると、勲章の付いた真新しい空軍大尉の軍服が収められていたという。これを着用し、大尉に扮したへロルトは北へ歩いていると、若い敗残兵に「大尉殿!」と呼び止められる。その若い敗残兵に指示を請われたへロルトは、自分の指揮下に入るよう命じる。そして、さらに北へ歩いていると敗残兵がまた一人、また一人、合流してゆき30人の敗残兵が指揮下に入っていた。ブレーメンの音楽隊のように歩み続けるへロルトら一行はアシェンドル収容所に辿り着く。同収容所はドイツ国防軍の脱走兵や政治犯などが収容されていた。混乱の中で秩序が失われつつあり、へロルトらが到着する二日前は150人が脱走するという不祥事が起きていた。へロルトは収容所および党組織幹部らに「統帥は自分に全権を与えた」と語り、野戦裁判所を設置して秩序回復を図ると宣言する。既に事態を収拾することができなくなっていた収容所および党組織幹部は、へロルトの嘘を疑おうとしなかった。こうして、へロルトと敗残兵による収容所の支配が始まる。

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「ヒトラーだけが悪人か?ナチスの惨劇は、周りの大勢が同調・追随したからこそ起きた。第二次世界大戦末期の実話をもとに、独裁者がいかに作られてゆくかを問題提起した作品」

へロルトが起こした収容所での惨劇は一人で成しえたものではないことが恐ろしい。これは過去の出来事ではない。世界中で蔓延るポピュリズムの波は今も存在する。アメリカンファーストのトランプ政権が良い例だ。今作品を鑑賞し、日本も他人事ではないと背筋が凍る思いである。


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