ちえの環 「目を閉じて見えた亀と六角形」 #01
2005年、7月。
その日はわたしはいつもと変わらずに、机に向かって仕事をしていた。
すると唐突にわたしの頭の中に電気が走った。
それは頭の頂点から入って後頭部の部分をトンと殴られたような、とても変な感じだった。
そしてその瞬間に察した。
あ、、時代が変わった。
何の根拠もなく、直感でそれを感じたのが全てのはじまりだった。
それからと言うもの、わたしは非現実的な現象に振り回される日々を送っていた。まるで、強制的に歯車が動き出したような感覚だった。
ある日の夜だ。
わたしはやっと家事が終わり寝室に入ると、子どもと夫はすでに寝入っていた。時計はもうすぐ日付が変わろうとしていた。仕事に家事に育児にとクタクタになっていたわたしは、やっと休息できることにホッとしながら布団に横になっていた。
そして眠気が来るまで、静かに待つことにして目を閉じた。
目を閉じると、何かが見えた。
……………?
それは何かの形だった。
五角形か…?
六角形か…?
八角形か…?
なんだこれ…
そう思った瞬間に、その形の上に亀が現れた。
亀?
なんで亀?
全く意味が分からなかった。
すると、次にその多角形の中に水晶玉のようなものがあらわれた。
その水晶を見てると水晶の中から光が出てきた。
その光は徐々に徐々に強くなり、眩しくて目が焼けそうになった。
我慢できずにわたしは目を開けた。
そこにはいつもと変わらない、豆電球に照らされた薄暗い部屋があった。布団に入ってわずか5分程の出来事だった。
今のはいったい何だったんだ?
眩しくて目をつぶることは聞いたことあるが、眩しくて目を開けるなんて奇妙な話だ。
翌日、昨夜の出来事が気になって仕方なく、早めに仕事に行きネットで調べた。
「多角形 亀…」
そこで分かった事があった。
亀の甲羅は亀甲紋といって、六角形を表しているということだ。
そっか、亀は六角形か。昨日、見えた図形は六角形だったんだ。
当時のわたしは亀は六角形など全く知らなかった。明らかに誰かが意図的にわたしにメッセージとして送ってきたとしか思えなかった。
それからわたしは暇さえ出来れば六角形について、たくさん考えるようになった。インターネットが繋がらない家では、わたしの脳味噌で単純に考えるという作業しかしかできなかった。直感と思考を結びつけながら考えていくのだ。
例えば、わたしはこのように考える。
まず、六角形は三角形と三角形が合わせて出来たものだと小学校でならったことを思い出す。三角形はピラミッドの三角形。その三角形が2つ重なるということは、六角形は何かのバランスやパワーにおいて意味のある形なのかも知れない。
そこまで自分の中で答えが出ると、次の日、仕事の昼休みにパソコンで答え合わせをする。
「六角形 バランス…」
すると次のヒントが現れる。
陰と陽…
調和…
何か答えが見つかると、「やっぱりそうか!!」と喜びが湧き上がり鳥肌が立つ。教科書もないのに課題が出されて、自分で答えを見つけるのは宝探しをしているようで面白かった。
ひとつ答えが見つかると、また次の課題が目の前に来るのだ。六角形は陰と陽のバランスから出来てる形…。陰と陽はどんな意味があるんだ?
こんな風に、暇さえあれば次々に推理や思考を巡らせていた。当時のわたしは、見えない何かに突き動かされているようだった。
時折、仕事や家事や育児がわたしを現実に引き戻してくれた。その時は脳を休ませることが出来て、ひとりの母親に戻ることが出来た。
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