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十一話 家族との最後の夕食?

夕食は、父がかなりご機嫌だった。
私が精神病院に入るのが、とても嬉しいらしい。
普段寡黙な父だが、酒を飲んで上気した頰をして満面な笑顔だった。
「いやぁ、これで出来の悪い次女が施設に入り、どうにかなるなら目出度いじゃないか」
父は酒をちびりちびりやりながら、精神病院のパンフを見ている。
母も機嫌よく父にお酌をしている。
どうにかなるって、私ってそんなにどうしようもない娘なのかな?
姉はまた無言で夕食を食べている。
私は、これが我が家での最後の晩餐だと思い、噛み締めて夕食を食べた。

夕食を食べ、お風呂に入り自分の部屋に入る。
家出しようと決心した私は、パジャマに着替えず、洋服に着替えた。
黒のゴシック風(飽くまで風)ワンピースに、ロングコートだ。
このまま寝て夜中か未明に、窓から外に出て家出する予定だ。
玄関から出たら、一階で寝てる親にバレるかもしれない。
問題は二階の窓から、どうやって地上に降りるかだ。
すでに暗くなったのを見計らって、カーテンを繋げて地上に降ろす。
これをロープ代わりにして、降りる寸法だ。
運動神経が悪い私なので、出来るかわからないがやるしかない。
失敗しても死にはしないだろう。幸い下は庭で地面は柔らかい。
今まで貯めたお年玉を財布に入れ、荷物は最低限にした。
荷物多いと、二階からの脱出が困難だからだ。
必要な物は、現地調達でもいいと思った。
さて、早朝に起きなければいけないので、すぐに寝よう。

だが、なかなか寝付けなかった。
まだ夜10時前だ。いつも早くて深夜過ぎ、遅い時は朝方寝る私には宵の口だ。
しかも、パジャマじゃないので寝づらい。
これは徹夜かな?
諦めて読書でもしようかなと思った…。

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