スウェーデンでの生活#16 -5°Cの氷でつくられたバーで楽しむカクテル
つい一昨日、ボスが「仕事帰りに滑ろうかと思って」とスケート用の靴を履いてきていた。そういえば王立公園のスケートリンクも始まりましたね、と言ったら「あそこは氷のコンディションが最悪だからこっちにすべき」と近くのスポーツセンターをおすすめされた。なるほど…とはなったけれど、調べた限りではろくに普段運動をしない&スケートは初めての私のような人間にとって、だいぶ勇気がいる感じの本格的な施設でした。ボスは凍った湖を滑ったり、友人と長距離の段位的なものを競ったりもしているとのこと。世界が違う…。
さて、そんな氷に馴染みの深いストックホルムには、年間を通して営業している世界初のアイスバー "ICEBAR STOCKHOLM" がある。バー内部の壁やインテリアは北部のトルネ川から切り出し、運んできた40トンの天然氷でつくられているそうだ。バーの入っているホテルからほど近い交差点の一角で、彫刻をしている様子をちょうど見ることができた。
受付でまず手袋がつながれたケープをコートの上からぽすっ、とかぶせてもらい、冷気を逃がさないよう二重扉を抜けて中へ入る。ケープのフードにはふかふかのファーが付いていて、イヌイットか何かになった気分。中央にはバーカウンターがあり、氷がレンガのように積み上げられていた。華やかな彫刻の施された氷でできた空間はなんだかとても新鮮で、心が躍る。
使われている氷は裏から彫られていて、削った部分が霜のように白くなっている。繊細な線の彫刻はまさしく職人技といった印象で、移り変わるライトによく映える。デザインは1年ごとに違って、今年は "The Promised Land" 、19世紀にスウェーデンからアメリカへと移住した人々がモチーフだそう。
カウンターももちろん氷。グラスが氷なのでそのまま材料だけを注いで、軽くステアして渡される。細い注ぎ口のついた容器を使っていてジュースやリキュールもカラフルなので、スタバのトッピングみたい…と思った。
1杯目のカクテルはせっかくなので今回のテーマ "PROMISED LAND" にした。ベースは推しているだけあってアブソルートウォッカ。リンゴンベリー(コケモモ)のジュースがザクロのような甘酸っぱさ、ライムが爽やかな酸味で希望の旅立ちといったイメージになっている。氷が透き通ってきれい。そして手袋越しに氷の冷たさが伝わってくる…。
ところどころ亀裂の入った氷の壁は波のような不思議な柔らかさがあって素敵。3枚目に写っている船の舳先は、中に入れるようになっていておもしろかった。街灯の彫刻を中からライトで照らしたり、金脈に見立てて塗料を塗ったりしたものもあっていろいろと興味深い。
暖かそうな毛皮の敷かれた氷の椅子は、周りにアンティークのトランク(彫刻)が置かれていて積み荷の上に座っているような気分。
気付けばあっという間に終了10分前になっていたので、少し慌てて2杯目をオーダー。カクテル名は "ATLANTIC" で、海のきれいな青色。ラムの甘い風味とエルダーフラワージュースの少し癖のある甘さがぴったり寄り添って深い味になっている。ライムとブルーキュラソーによって甘すぎずまとまっていて、正統派の甘いカクテルという感じで好き…。あとお酒だからなのか、意外と氷が溶けるのが早い。
彫刻の裏側から。部屋は-5°Cで、それほど寒くは感じないもののフードを取ると空気がひんやりしていておお、となった。刺激的な体験を求めている方、ちょっと変わったカクテルを楽しみたい方、ストックホルムの氷でできたバーなどいかがでしょうか?
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