ソノノチ-sononochi-【旅するパフォーミング・アート グループ】

旅するパフォーミング・アート グループ。空間そのものを作品として捉えるインスタレーショ…

ソノノチ-sononochi-【旅するパフォーミング・アート グループ】

旅するパフォーミング・アート グループ。空間そのものを作品として捉えるインスタレーションの手法を用いて、屋内外を問わず作品を発表。近年は「ランドスケープ・シアター(風景演劇)」に取り組んでいます。創作プロセスのアーカイブと上演映像をご覧いただける「プロセス便」も制作しています。

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『あなたはきえる』原泉バージョン 上演について振り返る

はじめに ソノノチ×Robin Owings『あなたはきえる』原泉バージョン。 インスタレーション展示&パフォーマンス上演の企画が、3月23日(土)、24日(日)に無事終了しました。 当日はあいにくの雨でしたが、上演中から日差しが差し込むなど天候にも恵まれ、足元が悪い中にも関わらずたくさんの方にお越しいただくことができました。本番から少し時間が経った今、改めてクリエイションを終えてのレポートをまとめておきたいと思います。 2023年の初演から「運んできた」イメージ 20

    • パフォーマーは、なぜ同じタイミングで消えていけるか

      2022年のクリエイションを振り返って今年、原泉での4年目の滞在制作を終えこれを書いています。風景を舞台としたランドスケープ・シアター(風景演劇)をこの3年間、全国様々な場所で制作していますが、場所が変わるとひとつとして同じものはできません。 しかしその中にも、少しずつ共通点や創作期間に何度も何度も触れているキーワードが浮かび上がるにつれ、この作品の魅力のようなものを私達自身がつかめてきたように感じています。よりこの作品群を進化させていくためには、足跡をつけていくようにその都

      • 【寄稿⽂】『あなたはきえる』をみて/文:⾼内洋⼦さん

        2023年7月に初演をおこなった『あなたはきえる』の上演会場「アトリエみつしま Sawa-Tadori」の⾼内洋⼦さんに作品を鑑賞いただき、「上演を⾒たとき/⾒たあとに⾃分の中で起こったこと」を書いていただきました。 規則正しいセミの声が、この古びた場所へと私を引き戻した。私は少しほっとして、少しがっかりした。いま過ぎた時間がもう懐かしい。 その出来事は、まるでずっと前から続く営みの延長のようだったので、私は自分が「いまここにいる」ということを何度も思い出さなければならな

        • ソノノチ結成10周年イベント『100人のつながせのひび』レポート①

          はじめに(ごあいさつ)※展示会場の入り口に掲示したメンバーからの挨拶パネルより抜粋 中谷和代 藤原美保 渡邉裕史

        『あなたはきえる』原泉バージョン 上演について振り返る

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        • ソノノチ作品評
          5本
        • 『風景によせて』連載コラム
          5本

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          ソノノチ結成10周年イベント『100人のつながせのひび』に向けて

          ソノノチ結成10周年イベント『100人のつながせのひび』 これまでご縁のあった〈100人からの手紙で綴る〉ソノノチ結成10周年のイベント。10年の歩みを、展示・セレモニー・関連イベントでふり返ります。 この結成10周年イベントに向けて行っていたクラウドファンディング「100人の手紙で綴る、結成10周年イベントをつくりたい!」プロジェクトは、無事目標額も達成することができました! これもひとえに、ご支援・応援いただいた皆様のおかげです。応援コメントに励まされ、勇気をいただき

          ソノノチ結成10周年イベント『100人のつながせのひび』に向けて

          【寄稿】風景を眺めるために/文:福井裕孝さん

          演出家の福井裕孝さんに、ソノノチ×Robin Owings『あなたはきえる』のレビューを寄稿いただきました。 下記、寄稿文です。 風景を眺めるために連日の猛暑ですっかりくたびれそうになりながら、自転車で30分ほどかけてようやく会場のアトリエみつしまに着いた。入り口で迎えてくださった制作のべってぃー(渡邉裕史)さんと挨拶を交わした後、「開演までこちらでお待ちください」と、舞台とは別のこじんまりとした座敷へと案内された。 開演を待つ観客がパラパラと座っているなか演出の中谷さん

          【寄稿】風景を眺めるために/文:福井裕孝さん

          【『風景によせて2022』コラム第2回】「純粋持続」を捉えるために――〈LST〉と時間②《後編》

          この記事は、前編と後編に分かれています。 前編は記事の一番下のリンクからご覧ください。 ●「純粋持続」を捉えるための〈LST〉▷「ゆっくりさ」 続いて、「ゆっくりさ」について。上で確認したとおり、ゆっくりとしたペースで作品が展開することは、記号的表現からの脱却という一つの意味があります。そこで、ここではいかなる質の「ゆっくりさ」が目指されるのかについて考えてみます。 「たびするつゆのふね」のクリエイションの過程で、パフォーマーの歩く速度をBPMで指定してみてはどうか、と

          【『風景によせて2022』コラム第2回】「純粋持続」を捉えるために――〈LST〉と時間②《後編》

          【『風景によせて2022』コラム第2回】「純粋持続」を捉えるために――〈LST〉と時間② 《前編》

          ●はじめにこのコラムはタイトルの訂正が必要かもしれません。 というのも、前回からなにげなく使ってきた「時間」という概念は、今回論じるベルクソンの議論の中心にあり、しかもそこで乗り越えられんとする対象そのものだったのです……初手から気詰まりですが、多少高まった解像度を手に、今回も〈LST〉について考えてみたいと思います。 まず、前回のおさらいをします。ソノノチのクリエイションにおいて「時間」がどのような意味を持つのかを考えるため、「時間」が問題になる場面を3つ取り出しました

          【『風景によせて2022』コラム第2回】「純粋持続」を捉えるために――〈LST〉と時間② 《前編》

          展示を終えて/『風景によせて えんをめぐる』-2023-

          『風景によせて えんをめぐる』-2023-の全会期が終了しました。 この数年、グループで熱心に取り組んできたアーカイブという活動は元々、コロナ禍で上演が中止になるリスクにそなえて、作品制作と創作プロセスの記録を並行し始めたことがきっかけでした。 そこから時間が経ち、コロナをめぐる生活様式も変化する中、今回の展示は改めて場をひらくこと、そしてアーカイブのもつ言葉の広さに向き合った機会だったと振り返ります。 原泉アートプロジェクト代表の羽鳥さんをお招きしたトークイベントや、

          展示を終えて/『風景によせて えんをめぐる』-2023-

          新しいロゴにこめた想い

          今年、カンパニー立ち上げ10周年企画の一環として、カンパニーロゴをリニュアルしました。今の私たちを反映した、新しい皮膚をまとうような気持ちです。デザインは、長年ソノノチの宣伝美術を担当してくださっているデザイナーのほっかいさんにお願いしました。 私たちは2020年より制作をスタートした作品群「ランドスケープシアター」をはじめとする、上演をするフィールド(場所)に焦点を当てた作品制作を通じて、引き続き新たな地平にチャレンジしていきます。 ほかにも、変化の多い時代をゆっくりと歩

          【寄稿】時間をかけて風景と身体をなじませる/文:平野雅彦さん

          国立大学法人 静岡大学 人文社会科学部客員教授の平野雅彦さんに、『風景によせて2022 たびするつゆのふね』の評論を寄稿いただきました。 下記、寄稿文です。 時間をかけて風景と身体をなじませる「風景演劇(ランドスケープシアター)」、とは何か。2019年から原泉ではじまった「演劇のようなもの」を、ソノノチはそう呼ぶ。 演者は、果たして主体なのか客体なのか。前景なのか、それとも後景(背景)なのか。ソノノチのパフォーマンスを観ながら、毎回この問いが頭をかすめる。 「演技」が

          【寄稿】時間をかけて風景と身体をなじませる/文:平野雅彦さん

          ソノノチ展へ向けて 応援メッセージ(白石麻奈美さん)

          ソノノチさんが今見つめている、創作・表現の向こう側には、どんな風景が広がっているのだろう。 ソノノチさんが出会われた人・もの・こととの縁は、作品からは創作表現として心に響きわたっていく。 そして展覧会ではソノノチさんの創作過程を覗かせてくれる、惜しみのないドキドキな展示が素敵だ。 前回の展覧会では共催させて頂く機会に恵まれ、大阪・本庄西に新しくオープンした「本庄西施工地区」においては、建築と音楽との複合的な表現に共に挑みました。 未知で複雑になっていくコミュニケーション

          ソノノチ展へ向けて 応援メッセージ(白石麻奈美さん)

          【寄稿】「まれびと」としてのソノノチ/文:高畠麻子さん(『風景によせて2021 かわのうち あわい』評)

          高畠華宵大正ロマン館主任学芸員で、とうおんアート・ラボ副代表の高畠麻子さんに、『風景によせて2021 かわのうち あわい』の評論を寄稿いただきました。 下記、寄稿文です。 「まれびと」としてのソノノチ私は普段は東温市にある高畠華宵大正ロマン館という美術館で学芸員として働きながら、「とうおんアート・ラボ」(以下、アート・ラボ)という東温市の歴史・文化・アートに関わる活動をする市民グループに所属している。アート・ラボとソノノチが最初に出会ったのは、2021年6月21日(月)の

          【寄稿】「まれびと」としてのソノノチ/文:高畠麻子さん(『風景によせて2021 かわのうち あわい』評)

          〈ランドスケープシアター(風景演劇)〉とは

          ソノノチが近年つくりあげてきた独自の上演形態であり、「等速ではない時間」に着目している作品群。 この作品は、屋外の風景を舞台機構に見立て(パフォーマーは観客席から数十メートル〜数百メートル離れたところに現れる)、遠景を眺めるように鑑賞します。 言葉の定義として、「風景」は客観的に定義できず、主観的(私的)であることに加え、自然の中に街並みや人の営みが入ったものを指すとも言われています。 ソノノチは、この風景の主観性・唯一性に注目し、鑑賞者が人物(パフォーマー)だけでなく自

          〈ランドスケープシアター(風景演劇)〉とは

          5月2日が特別な日になった日のこと/合同会社nochi1周年

          京都を拠点に、パフォーミングアーツのカンパニーとして活動している「ソノノチ」のマネジメント会社として、そして今後より多彩なフィールドで活動を継続するために、2022年5月2日、合同会社nochiを立ち上げました。(そもそもあまり広く告知できていませんでした。すみません。) おかげさまをもちまして、合同会社nochiは今日、設立1周年を迎えました。まずは、これまで支えてくださった皆さまに心からお礼申し上げます。本当にありがとうございます。 5月2日が特別な日になった日のこと

          5月2日が特別な日になった日のこと/合同会社nochi1周年

          【『風景によせて2022』コラム第1回】時間が問題になるとき――〈LST〉と時間① 《後編》

          この記事は、前編と後編に分かれています。前編は以下のページからご覧ください。 ▷風景の中の時間の複層性 次に、〈LST〉における「複層性」について考えてみたいと思います。これは『風景によせて2021 はらいずみ もやい』を作っていた頃、よく取り沙汰されていたキーワードです。複層性とは読んで字のごとく、複数の層をなす性質のことです。メモを見返すと、ソノノチにおいて複層性という語はいくつかの意味で使われてきたことがわかります。 例えば、次のような場面。 ①上演が行われる「

          【『風景によせて2022』コラム第1回】時間が問題になるとき――〈LST〉と時間① 《後編》